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【お酒】99.100.まんさくの花&真人(まなびと) 飲み比べ [05.秋田県の酒]

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日の丸醸造株式会社J
秋田県横手市増田町増田字七日町114番地の2


今日は、同じ蔵元さんの、速醸酛造りのお酒と、生酛造りのお酒とを飲み比べてみたいと思います。
なお、速醸酛と生酛とのちがいに関する一般的なことについては、最後にまとめておきましたので、ご覧いただければと思います。


速醸酛の乳酸は添加した乳酸であるのに対して、生酛の乳酸は乳酸菌が作り出した天然の乳酸です。
そのためか、
「速醸酒母」の酒はすっきりした軽さがある。これに対して「生酛」「山廃酒母」で醸した酒はしっかりとした酸を含み、味全体に奥行きの深さが感じられる。」(※1)
と評する文献もあります。

また、生酛造りを売りにする大手酒造メーカーが出版した文献には、
「生酛で造る酵母は、速醸のひ弱な酵母と異なり、乳酸菌との生存競争の中で育つためはるかに強い。弱い酵母はアルコール度数が17~20%になると死に、雑味が多くなるが、強い酵母はアルコール度数が20%近くになっても死滅せず、発酵が進みキレのある喉越しの良い「辛口酒」ができる。」
「生酛仕込みの酒を分析すると、エキス中に占める等分の比率が低く、タンパク質がアミノ酸に分解する前のペプチド態成分の比率が高い。ペプチドは、香味に深い味わいを感じさせ、生酛造り特有の「押し味」を演出する。」(※2)
とあります。

一方で、速醸酛については、
速醸酛でもしっかりと造れば味のしっかりした、いい酒ができる(※3)
速醸酛のほうが「ヘタな生もとより味わいが濃い(※4)
と紹介する文献もあるようです。


しかし、いくら文献を読んでも、実際にお酒をいただいた上で比較してみなければ、味の違いを感じることはできません。
幸いにして、同じ蔵元さんの、速醸酛造りのお酒と、生酛造りのお酒とを入手することができました。
この両者を飲み比べることで、果たして上記の文献のような違いを見出すことができるでしょうか。


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特別純米 まんさくの花
アルコール分 15度以上16度未満
原材料名 米(国産)・米麹(国産米)
精米歩合 55%
180ml詰
(以上、ラベルより転記)

このお酒ですが、ラベルに速醸酛造りである旨の記載はありません。
ですので、本当に速醸酛造りであるのかどうかは、実はわかりません。
しかし、速醸酛は今日ではもっとも一般的な酛造り方法ですし、そのことを敢えてラベルに明記したお酒を見たことはありません。
むしろ、次にいただくお酒が生酛造りであることを明記していることから推察して、このお酒は「生酛造りではない=速醸酛造りである」と判断しました。

今日もぬる燗でいただきます。


一口で、うまみがシッカリしていることがわかります。
濃くはありませんが、醸し出されたうまみに、吟醸酒のようなうまみが少し混じっているような味わいです。
これが、お酒の味をまろやかにしています。

酸味はスッキリしていて弱めですが、これもしっかりしています。
少し苦味があるようですが、刺激やピリピリ感はありません。
薄いヨーグルトのような酸味だと思います。
甘みもほんの少しあって、酸味とともにうまみを支えている感じです。

まろやかなうまみと、スッキリした酸味の、やや濃醇でやや辛口のおいしいお酒でした。


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生酛純米 真人(まなびと)
アルコール分 16度以上17度未満
原材料名 米(国産)・米こうじ(国産米)
精米歩合 56%
180ml詰
(以上、ラベルより転記)

このお酒もぬる燗でいただきます。

まんさくの花と同じようなうまみです。
濃くは感じませんが、しっかりしているようです。

酸味は、こっちのほうがよりしっかりしていると思います。
刺激はありませんが、お酒の味を辛口に仕上げています。
ヨーグルトのような酸味はまんさくの花よりもはっきりしていて、これがうまみにも影響しているようです。

甘みはやはり控えめです。

まんさくの花よりは、若干酸味が強いと思いました。
濃醇辛口のおいしいお酒でした。



両方のお酒をいただいてみて、そのちがいは酸味にあると思いました。
真人(生酛)のほうが、酸味がやや強めでした。
両者ともおいしいお酒でしたが、、うまみ自体にはちがいを感じることができませんでした。

かつていただいたお酒で、速醸酛のお酒であっても酸味が強いお酒はありました。
その一方で、生酛造りであってもうまみがいまいちのものもありました。

やはり、お酒の味は「生酛だから…」とか「速醸酛だから…」と概念的に決めるのではなくて、実際にそのお酒を味わってみて、その味がどういう技術でかもし出されているかということを個別に確認すべきだということを痛感しました。



★☆【生酛と速醸酛とのちがい】★☆

日本のお酒は、お米のでんぷんに変えるという化学変化と、アルコールに変えるという化学変化とを経て出来上がります。
このうち、でんぷんを糖に変える変化を担うのがが出す糖化酵素で、糖をアルコールに変える変化を担うのが酵母という微生物です。

このうち、酵母については、もろみが入ったタンクの中で酵母の作用を一気に進めさせるために、活きのよい酵母をあらかじめ大量かつ純粋に培養して準備しておきます。
この酵母を大量に培養した液体のことを“(もと)”、もしくは“酒母”といいます。

ところで、空気中にはさまざまな菌が存在しています。
そのため、普通の環境で酵母を培養すると、酒造りにとって邪魔な雑菌が入って、いっしょに増殖してしまいます。
そこで、酛の中で酵母以外の雑菌の増殖を抑えて、酵母だけを純粋培養するためには、乳酸の力を借りる必要があるのです。
なぜならば、乳酸によって酸性となった環境では、酵母以外の雑菌は増殖できないのですが、「酸性に強い清酒酵母」(※5)だけは増殖できるからです。

では、乳酸によって酸性となった環境を、酛の中でどうやって作り出すのでしょうか。
その方法として、主として以下の二つのやり方があるのです。

一つは、酛を仕込み始めるときに、あらかじめ乳酸を添加しておく方法です。
この方法によった酛造りを“速醸系酒母”、もしくは広義の“速醸酛”と言います。

もう一つは、酛の中で乳酸菌を自然に増殖させて、その乳酸菌が作り出す乳酸によって酸性の環境を作り出す方法です。
この方法によった酛造りを生酛系酒母、もしくは広義の“生酛”といいます。


(※1)松崎晴雄『日本酒をまるごと楽しむ!』p.40(2007.1 新風舎)
(※2)キクマサ読本製作委員会『キクマサ読本』p.36(2009.9 丸善プラネット)
(※3)古川修『世界一旨い日本酒 熟成と燗で飲る本物の酒』p.143(2005.6 光文社新書)
(※4)友田晶子『全量純米蔵の神亀酒造を訪ねる』2/2(AllAbout記事 2011.1)
(※5)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.131(2000.4 柴田書店)

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あ~酒臭かった! 22

酒くさコメント 4

hanamura

伝統の蔵、時代物の麹室(見学では入れませんがぁ・・・)も素晴らしいですがぁ・・・。蔵全体が温度管理(冷蔵庫状態)される、超近代的な蔵も、素晴らしい酒造りだと・・・、どちらも良いと思っています。
by hanamura (2013-12-21 01:05) 

ちゅんちゅんちゅん

おはようございます!
日本酒風呂が美肌にいいとされるワケが
分かった気がしました☆
乳酸がポイントだったんだ・・・と
見当違いのコメントですみません・・・
by ちゅんちゅんちゅん (2013-12-21 07:25) 

skekhtehuacso

hanamuraさん、コメントありがとうございます。
どちらもよいと思いますが、やはり酒は味ですね。
by skekhtehuacso (2013-12-21 22:20) 

skekhtehuacso

ちゅんちゅんちゅんさん、コメントありがとうございます。
乳酸のお肌への影響については私はわからないので、今後研究を要します。
by skekhtehuacso (2013-12-21 22:22) 

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