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【お酒】477.喜楽長 上撰 カップ [25.滋賀県の酒]

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喜多酒造株式会社
滋賀県東近江市池田町1129

アルコール度数15度以上16度未満
原材料名/米(国産)・米麹(国産米)・醸造アルコール
180ml
(以上、ラベルより転記)



喜多酒造さんでは、昭和45年からつい最近まで、天保正一さんという、能登杜氏に属した方が杜氏を勤めていたそうです。


杜氏(とうじ)とは、一つの蔵元さんで働くたくさんの酒造り職人たちを束ねる責任者のことを言います。
この杜氏には、南部杜氏、越後杜氏、丹波杜氏などのように、地域ごとに流派があって、それぞれが特徴的な技術を持っています。

そして、喜多酒造は滋賀県の蔵元さんですが、「滋賀県の多くの蔵では石川県珠洲市を本拠に夏は農業を営む「能登杜氏」が大多数を占め」ているとのこと(※1)。

また、能登杜氏と滋賀県の蔵元さんとのつながりについて、別の文献では以下のように紹介していました。
能登杜氏の起こりは、江戸後期。能登半島の海岸沿いの丘陵斜面地は、農業を営むにも耕地規模が小さく、ほかに特産品もないために、農閑期を利用した酒造出稼ぎが「能登衆」と呼ばれ、独自の酒造技術を創り上げていったという、明治年間には、滋賀・大津に「能登屋」と呼ばれる職業安定所のような組織もでき、能登からの杜氏・蔵人を近江、山城方面の酒蔵へと多数斡旋した。」(※2)

能登杜氏の中でもっとも有名な方は、菊姫や鹿野酒造(常きげん)で杜氏を任され、現代の名工にも選ばれた農口尚彦さんでしょう。
その農口尚彦さんはかつて能登杜氏組合の組合長を務めていましたが、その際に副組合長を務め、のちに組合長にもなったのが、喜多酒造の天保正一杜氏なのだそうです。


上記(※2)の文献では、喜多酒造さんの酒造りについて紹介しています。
その中でも、私が一通り読んでみて、そのことを端的に表現していると思った記述を抜粋して以下に紹介したいと思います。

(天保さんのことば)「「杜氏はね、眠れん夜があるものですよ、誰でも。一晩か、二晩か。眠ったとしても、ふっと目が覚めた時は、まず酒のことを思いますしね。普通に造っていても、米の溶け方がも違うし、酵母によっても違うし。ほんとに心配になってね。どうなのかなあと。これが、若い者には『機嫌がわるいなあ』とうつるのでしょうけど、酒造りの責任者には、孤独なところもあるのですよ。でも、その責任で苦労する部分と、自分の技術で対応していくおもしろみと、両方を味わうようにならないと、杜氏はだめですね。結局、酒造りというのは、何年やっても、これでいい、ということがない。去年どおりでもだめなんです。かといって、今年、一本だけいいのが出来たというのでも、だめなんです。少しでも、良いほうへ、良いほうへ、つねに進歩していかないと。だけど、自分の理想通りには、なかなか進まない。その面だけ孤独なんですよ。酒造りというのは、何十年たっても、そんなものですよ。」(※3)

「うす辛いだけの酒を造っても、なんの手柄にもならん」という天保さんの口ぐせは、この微妙なバランスを保ち、「喜楽長」としての特徴を備えた酒を造ることを前提としている。
「酒になってるだけ、という酒なら、いくらでも造れる。でも、喜楽長らしさ、喜楽長の酒を造る、ということが難しいんです。」
喜楽長らしい酒、というのは、上品で優雅な含み香、柔らかな口あたり、米の旨み、甘みを持ち、それでいて、ぱっと切れる後口(あとくち)を備えた酒であるということだ。」(※4)


私が今日選んだこのカップ酒は、普通酒です。
果たして、この普通酒のカップ酒をいただくことによって、上記のことを感じとることができるでしょうか。

普通酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。
その前に、このお酒ですが、色はそれほど濃くはないみたいです。
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うまみはやや濃いめです。
醸し出された酒臭さ(←ほめ言葉です)とともに、深みを感じるうまみです。
それに、苦みもけっこうはっきりしています。

酸味は強めです。
すっぱさはそれほどないものの、けっこうピリッと感じます。

甘みは強くはないものの、はっきりわかります。


うまみ、酸味、苦み、甘みのそれぞれがはっきりと利いている、やや濃醇で甘辛口のお酒でした。
かなり飲み応えのあるお酒だと思います。
それに、苦みとピリピリ感がはっきりしているので、好き嫌いの分かれる味でしょう。
でも、この深みのある味わいは、私としては好きです。
喜多酒造さんの造りを理解するためには、もっと上位の銘柄をいただいてみる必要があるのかもしれません。


(※1)滋賀の日本酒を愛する酔醸(よいかも)会編『近江の酒蔵-うまい地酒と小さな旅』p.108(2005.9 サンライズ出版)
(※2)藤田千恵子『杜氏という仕事』p.18(2004.1 新潮選書)
(※3)(※2)p.115
(※4)(※2)p.123
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