SSブログ

【お酒】545.花の舞 純米吟醸 世界遺産 富士山と共に カップ [22.静岡県の酒]

1692.JPG1693.JPG
花の舞酒造株式会社
静岡県浜松市浜北区宮口632

原材料名/米(静岡県産誉富士100%)・米こうじ(静岡県産米誉富士100%)
精米歩合/60%
アルコール分/15度以上16度未満
180ml
(以上、ラベルより転記)



花の舞酒造さんのお酒は、かつて本醸造のカップ酒をいただいております。
今日いただくこのお酒は、富士山をラベルにいただく純米吟醸酒です。


このお酒ですが、“誉富士”なる酒米だけを使用して造られているようです。
1694.JPG

この誉富士は、静岡県の奨励品種となっている酒米とのこと。
手元にあった文献では「山田錦の耐倒伏性の改良を目標として、放射線処理とその後の系統選抜により育成。短稈で耐倒伏性が強く、収量が多い。」と紹介されておりました(※1)。

山田錦が“酒米の王様”と言われるくらい優れた品種であるることは、敢えて触れる必要も無いくらいよく知られていることでしょう。
しかし、その山田錦は長稈(根から穂までの“茎”の部分が長いこと)で倒れやすいのみならず、穂発芽を起こしたり病気にかかりやすく、“農家泣かせの栽培困難品種”と言われるほど栽培方法が難しい品種なのだとか。
このことは、、かつてこちらで紹介しておりますので、ご参照ください。


そして、静岡県の報告書では、「平成10年に「山田錦」の籾へ放射線を照射し、その後、農林技術研究所で突然変異体として選抜」をして“誉富士”を育成し、「平成22年度から本県奨励品種に採用」されたと紹介されていました(※2)。

この誉富士は、「稈長が「山田錦」より27cm程度短く、穂長もわずかに短く、穂数はほぼ同じ偏穂重型」で、「耐倒伏性は極めて優れ」ているとのこと(※3)。
しかもそれでいて、「低い方が上質の酒造が可能とされる玄米タンパク質含量は「山田錦」並からやや低い」とのことですから、酒米としての性質も優れているようです(※3)。


しかし上記の報告書では、誉富士は「「山田錦」の最大の欠点である倒伏を短稈により克服した」ものの、それでも「決して栽培適性の優れた品種ではありません」と紹介されています(※4)。

というのも、「「誉富士」は穂発芽し易く、刈り遅れが品質を低下させる要因となるため、適期刈り取りには細心の注意が必要」なのだとか(※5)。
また、「出穂・成熟期は「山田錦」と同等の晩生熟期です。平坦地では、5月30日前後の田植えで、8月24日頃に出穂期、10月4日頃成熟期に達します。」とあることから(※2)、台風被害も考慮しなければならないことでしょう。
それにやっぱり、「耐病性及び障害抵抗性」については、「「山田錦」と同様に葉いもち、穂いもちともに弱く、穂発芽しやすい」とのこと(※3)。


ということは、結局のところ、誉富士は、単に山田錦を短くしただけの品種ということでしょうか?
たしかに、山田錦の性質をできるだけ残すということは、山田錦の優れた品質をそのまま受け継ぐことにもなるわけですよね。
育成に関する難しさが残っても県の奨励品種としているわけですから、短稈にしたことはきっと画期的なことだったのでしょう。


では、誉富士で造ったお酒はおいしいのでしょうか?
これについて上記の文献では「県内酒造会社7社で精米歩合50~60%で醸造適性試験を行った結果、(中略)精製酒の官能評価は'味にふくらみがある''やわらかい''きれい'など、独自の特徴があり、概ね良好な結果が得られています」と紹介されていました(※6)。

はたして本当にそうでしょうか?
それを確かめるべく、このお酒をいただいてみたいと思います。
純米吟醸酒ですので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。

色は、少し着いているのがわかります。
1695.JPG


吟醸香はほとんど感じませんでした。

うまみはやや濃いめで、しっかりしています。
お米のうまみとともに、熟成感を少し感じました。
それでいて、キレがよくて後味がすっきりしています。
わずかに苦みがあるようですが、それ以外に雑味はないみたいです。

酸味はひかえめです。
すっぱさをわずかに感じる程度です。

甘みもひかえめです。
わずかに感じる程度です。


うまみだけを抽出したような、やや濃醇でやや辛口のおいしいお酒でした。
酸味や甘みを抑えてあるのが、吟味して造られた成果でしょう。
うまみがしっかりしているので、飲みごたえがあります。
それでいて、キレがよくてスッキリしていて、クドさを感じません。
上記の'味にふくらみがある''やわらかい''きれい'という評価は、頷けるものだと思います。


(※1)副島顕子『酒米ハンドブック』p.66(2011.7 文一総合出版)
(※2)静岡県経済産業部『水稲の新しい奨励品種「誉富士」の特性』p.1(静岡県/あたらしい農業技術 No.535 平成22年度)
(※3)(※2)p.2
(※4)(※2)p.8
(※5)(※2)p.4
(※6)(※2)p.3
あ~酒臭かった!(32)  酒くさコメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

あ~酒臭かった! 32

酒くさコメント 4

hanamura

帰静(静岡へ帰省)したら「富士山カップ」何種類か見ました。
富士山ボトルというのも、見かけました。
by hanamura (2015-05-06 06:40) 

skekhtehuacso

hanamuraさん、私のブログで紹介したものは、このお酒と富士錦とだけのようです。
次に静岡で酒集めをする際には、探してみようと思います。
by skekhtehuacso (2015-05-06 21:19) 

エクスプロイダー

1月に家族で某夢の国と東京見物へ旅行した際にスカイツリー下のソラマチの某酒屋で花の舞の誉富士の純米を留守番している父に買って来ましたが、純米吟醸も有るのかと知った次第。
by エクスプロイダー (2015-06-25 21:05) 

skekhtehuacso

エクスプロイダーさん、家族でねずみの国と東京見物なんて、まっとうな人のすることですね。
カップ酒を求めてあちらこちらを徘徊しているような私には、無縁ですわ。
by skekhtehuacso (2015-06-26 23:15) 

酒くさコメント、書いちゃう!

お名前:[必須]
URL:
酒くさコメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0