【お酒】655.木戸泉 特別純米 山田錦 カップ【追記あり】 [12.千葉県の酒]
木戸泉酒造株式会社
千葉県いすみ市大原7635-1
アルコール分/14度以上15度未満
原材料名/米(国産)・米こうじ(国産米)
原料米/山田錦
精米歩合/60%
180ml詰
(以上、ラベルより転記)
今からおよそ二年前に、私はこのブログをはじめました。
その際、ブログ開設の辞に続けて最初に書いたお酒の記事で、木戸泉さんの特別純米酒“醍醐”を紹介させていただきました。
顧みるに、当時はただ、“仕事中に(サボりで)立ち寄ったスーパーなんかで偶然に出会ったお酒を紹介して、その感想を適当に書いておけばいい。”という、気軽な気もちで書き始めたのでした。
しかし、書いているうちにお酒について知らないことや不思議なことがいろいろと出てきて、それを調べてまとめることが楽しくなり、ついついt調子に乗ってしまいました。
それに、新たな酒を求めて地方へ出かけ、酒代やら旅費やら飲み食いやらで、さんざん身銭を切りましたよ。
(なくしたのは、金だけじゃないだろ。)
はたして、こんな不健全な趣味が、いつまで続くことやら。
でも、ほかに楽しみがないから、きっとこれからも書き続けるんだろうなぁ。
今日いただくこのお酒も特別純米酒ですが、こちらはアルコール度数14-15度と、やや低めです。
ということは、加水がやや多めということでしょうか。
上記初回記事でも紹介しましたが、木戸泉さんは、酒母(酛)の仕込みに“高温山廃仕込”なる手法を採用しているのだとか。
「生酛系酒母の仕込みは通常、六~八度Cという低温で行われ」るようです。
これは「有用乳酸菌は七度C前後の低温でも生えるのに対して、悪玉乳酸菌は一〇度C以上でないと生えない」からとのこと(※1)。
(なお、速醸酛の場合は「仕込み温度は一八~二〇度Cが一般的だが、徐々に温度を下げていき三日目に一〇度C程度にする。」のだとか。(※2))
しかし、高温山廃仕込の場合には「酒母を55度で仕込み糖化を促した後、乳酸菌、酵母菌を植えつける」のだそうです。
この手法によると「失敗すれば雑菌だらけか、酢になってしまうでしょうが、そこが杜氏の腕なのです。コクと米の香りの生きた日本酒が出来るのですぞ!」(中略)「これは、かなりの型破りの醸造法です。発酵途中の甘酸っぱい原酒を口に含むと、それはもう自ずと目が細まる絶佳の醍醐味。」なのだとか(※3)。
そういえば、生酛の原型と言われるものに、室町時代に奈良で生まれた“菩提酛”という手法があるのですが、それを現代に再現なさった方の話には「正暦寺菩提酛は夏場に造る夏酒であることと、第1段階で蒸し米ではなく生米を使うことがポイント。菩提酛造りそのものは冬に行いましたが、酒母づくりの第1段階の温度は夏場と同じ30度に設定したので、腐らせることのないよう、交替で徹夜しながら管理にあたりました」とあったのを思い出しました(※4)。
高温山廃仕込と菩提酛とは直接には関係がないかもしれませんし、あくまでもこれは私の予想ですが、酒母の低温での仕込が普及したのは寒造りが確立した江戸後期からであって、それ以前は比較的高温で仕込まれていたのかもしれませんね。
もしこれが正しければ、この高温山廃仕込で仕込んだお酒は、古式で仕込んだものに近い味になっているのかもしれません。
【2019年11月4日追記】
高温山廃酛については「五五度の高温で仕込み、培養した乳酸菌を添加する。速醸モトは直接乳酸を投与する。乳酸を使用しないので、高温山廃酛と呼んで現在に至るが、正確には高温乳酸菌利用酒母という名が正しいように思う。」(※5)という記述を見つけましたので、ここに追記しておきます。
大変申し訳ございません。
またしても、ついつい調子に乗ってしまいました。
そろそろいただいてみたいと思います。
純米酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。
お酒の色は、ややはっきりしているといった程度でしょうか。
うまみは濃いめで、しっかりしています。
醸し出された酒臭い(←ほめ言葉です)うまみが豊かです。
それに、香ばしさがわずかにあるようです。
でも、キレがよくて、スッと引いていきます。
飲み始めは苦味を感じませんでしたが、ちょっとではあるものの次第に苦みが出てきました。
酸味はけっこう豊かです。
これが高温山廃仕込の特徴でしょうか?
すっぱさが豊かですが、角がなくてまろやかなすっぱさです。
刺激やピリピリ感はないですね。
甘みはひかえめですが、それでも少し感じます。
べとついた感じはなく、さらっとしています。
しっかりしているがキレのよいうまみと、まろやかな酸味とが豊かな、濃醇旨口のおいしいお酒でした。
上で“加水多めか?”と書きましたが、味としてはちょうどよいと思います。
私としては、16.5度の醍醐よりも、こちらのほうがおいしいと思います。
(※1)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.130(2000.4 柴田書店)
(※2)(※1)p.134-135
(※3)安藤三佐夫編著『千葉の地酒とうまい肴』p.50(2013.4 彩流社)
(※4)『酒処の亭主は菩提もと開発者 奈良の酒を知り尽くした男 山中信介さん』p.26(月刊大和路ならら 2012年11月号 地域情報ネットワーク株式会社)
(※5)鈴木久仁直『ちばの酒 ものがたり』p.139(1997.6 青娥書房)
2018/10/17
また飲んでみました。
2015-08-31 22:51
あ~酒臭かった!(53)
酒くさコメント(6)
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木戸泉、いすみ鉄道を撮りにいくと
よく看板を見かけます(^^)
いすみ鉄道ののどかな車窓を眺めながら
木戸泉で飲み鉄するのも良さそうですね〜。
by あおたけ (2015-09-01 09:13)
写真のお酒先月飲見ました。木戸泉の蔵がすぐ近くにあるのでひいきにしたかったのですがどうも味が苦手です。
by こいこい (2015-09-01 17:07)
木戸泉はやはり燗向き何でしょうかね。
レギュラーの酒も呑みたいけど古酒も呑んでみたいなあ。
by エクスプロイダー (2015-09-01 22:44)
あおたけさん、いすみ鉄道の駅売店では、次に紹介するはだか祭りカップが売られていました。
私としては、はだか祭りカップのほうがやや飲みやすいと思います。
by skekhtehuacso (2015-09-01 23:01)
こいこいさん、このお酒って、たしかに酸味にちょっとクセがありますね。
それに、これは私の体質かもしれませんが、どうやら次の日に残りやすいみたいです。
by skekhtehuacso (2015-09-01 23:02)
エクスプロイダーさん、燗にしたほうが酸味が際立って飲み応えが出ると思います。
古酒はデパートで見ましたが、私にはせいぜい5年ものくらいしか手を出せないお値段でした。
by skekhtehuacso (2015-09-01 23:08)