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《焼酎》8.あなたにひとめぼれ こめ 180ml【追記あり】 [9945.宮崎県の焼酎]

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株式会社都城酒造
宮崎県都城市乙房町2887番地1

焼酎乙類
●原材料名:米(国産)米こうじ(タイ産・国産)
●アルコール分:25度
内容量 180ml
(以上、ラベルより転記)




この米焼酎ですが、一合でなんと138円と破格の安さでした。
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25度の焼酎で180~200ml詰のものであれば概ね200円前後のものが多いようですので、これはかなり安いのではないでしょうか。


そんなこの安価な米焼酎ですが、品質表示を確認してみたところ、麹米にタイ米を使用しているとのだとか。
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138円という値段は安いタイ米を使えばこその効果かとも思ったのですが、タイ米は麹米にしか使われておりませんでした。
麹米のみということは、タイ米の使用量は米全量の3分の1以下でしょうから、それだけでこの価格を維持できるわけではないでしょう。

この低価格を実現できた理由については興味深いところですが、それはまたの機会に調べてみたいと思います。
逃げたな。


価格の話はさておき、どうやらタイ米は、麹造りに向いているのだそうです。

これは芋焼酎の製麹に関する記述ですが、タイ米を麹に使用する利点について、文献では以下のように紹介されておりました。
 原料米は、ジャポニカ米とインディカ米の両方が用いられている。インディカ米は、主にタイ国産のタイ米が使われている。この米は吸水性が低く、粘りがほとんどないことが特徴である。そのため焼酎造りにおいて1)浸漬時間を制御する(限定吸水)必要がなく、2)米粒同士が付着しにくく塊ができにくいため麹菌を米表面に万遍なく破精込ませやすく酵素力価格が高くクエン酸生産量の多い麹を造れる、といった利点があり焼酎製造に適した原料として広く利用されている。」(※1)

焼酎の麹が出すクエン酸が焼酎の醸造に果たす役割については、かつてこちらで紹介しております。

そういえば、沖縄の泡盛はタイ米を用いており、かつ全麹仕込(掛米を入れずに、米をすべて麹にして仕込む)のようですが、これにはもしかしたらタイ米麹の持つ上記2)のクエン酸生産能力を最大限発揮させて腐造を防ぐことを狙っているのかもしれませんね。


その一方で、欠点もあるみたいです。
タイ米の場合は、“2度蒸し”をする必要があるのだとか。
このことについて、上記と同じ文献では以下のように紹介しておりました。
吸水率が小さいと生蒸しになり麹菌の繁殖が悪く、アルコール収得量や酒質が低下する。一方、過多になると蒸米がべたつき団子状になり麹が造りにくい。適度な吸水率は25~28%であり、図2の結果から国産米では浸漬は13~20分間に限定する短時間浸漬法(限定吸水法)で行う必要がある。(中略)一方、タイ米は長時間浸漬しても吸水率は23%程度であり、生蒸しになる。そのため、1度蒸した米を70℃程度まで放冷し、米重量の3~10%の水を撒水して再度蒸煮する“2度蒸し”を行うと良好な蒸米となる。」(※2)

2度蒸しの手間はあっても、タイ米を使えば良質な麹を造ることができるということでしょうか。
それ故に、クエン酸による防腐効果を期待する必要がある焼酎の麹には、タイ米が用いられるのでしょうね。


ところで、タイ米って、炊くと独特の香りが出ますよね。
あれって、焼酎の香りに影響を及ぼさないのでしょうか?

このことについて紹介している文献にであうことはかないませんでしたが、清酒については以下のような座談会記録が残っておりました。
東南アジアの細長い外米は
小武山 タイとかビルマ米とか普通外米というのがあるでしょう。あれの米の臭いや外米臭(外米で造った酒のにおいのこと:ブログ筆者注記)も加州米と同系統ですか。
村上 試験所報告の古い中にビルマ米とか蓬莱米(台湾産の米のこと:ブログ筆者注記)とか使った例はあるんですが、条件つきで使えるという結果だけですね。
外池 ビルマ米で27年だったかに私は試験をやらされましたよ。発表はふせてしまったんですが。
川崎 私共はタイ砕米でやってみましたが、外米臭が強く出るようです(資料10(8))。」(※1)

これは私の予想ですが、清酒の場合は搾ったものを(ろ過・加水して)そのまま飲むことからタイ米の香りも残るのかもしれませんが、焼酎には蒸留の工程があることから、タイ米の香りが焼酎の香りに影響することは少ないのでしょうか?
この点については今回は文献の調査が不十分であったことをお詫びしつつ、今後の調査課題とさせていただきます。
また逃げたな。

【2017/10/21追記】その後、焼酎にも外米臭の影響があることを述べていると思われる文献の記述を見つけました。
 山元(㈱河内源一郎商店代表取締役 山元正明氏:ブログ筆者注記)は、第4期を米の品質による転換期と言う。
 昭和46年までは、原料の米は、すべて配給されたタイ、台湾、ビルマの外米を使っていた。しかし、国内の古々米が余っているというので、沖縄を除き、外米輸入が一切禁止となった。内地米を使うようになって、くさみがなくなり、スマートな焼酎に変化した。
 「というのは、タイ砕米は唐米袋に入って、暑い船底をゆられてくるわけです。そもそもが精白した屑米でしょ。蒸れる、袋の臭いがつく、船底の独特の臭いがつく。内地米を使うようになって外米臭がなくなり、香りがよくなったんです。スマートないも焼酎になった。このとき、県外の人に焼酎のうまさを認められるきっかけとなりました」
 鹿児島のいも焼酎が県外デビューするきっかけとなった転換期である。
 しかし、現在は内地米ばかりでなく外国の米を使う醸造場も多くある。それこそが個性なので、それこそが醸造場の杜氏の頭の使いどころだろう。個性なくして、なんの銘柄であろう。」(※4)


お待たせいたしました。
ウンチクをたれ切って気が済んだところで、そろそろいただいてみたいと思います。



まずは、生(き)、すなわちストレートで。
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25度ですからね、やはりアルコールの香りがはっきりしています。
でも、米の香りも弱めながらにふわっと感じます。
甘味もかすかにあるみたいです。
それに、喉を通ったあとで、ごくかすかではあるものの、香ばしさを穏やかに感じます。
苦味や雑味はまったくありません。



次に、お湯割り(焼酎:お湯=6:4)で。
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アルコールの香りは弱まりました。
米の香りも弱まるものの、穏やかになりました。
香ばしさは消えましたが、その一方で芋焼酎みたいな華やかな香りがちょっとだけ出てきたみたいです。
また甘みはそのままですが、しかし酸味が少し出てきましたよ。
苦味や雑味はまったくありません。



最後は、残りをロックで。
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アルコール香は生(き)と同じくらいはっきりしています。
一方で、軽い苦味がちょっと出てきました。
それに香りと甘味とが引っ込んで、キリッと引き締まったようでした。



私としては、淡めながらも香りが豊かで甘味や酸味を感じることができたお湯割りが好みでした。
たしかに淡めの風味でしたが、それでも飲み方を変えることで味わいのちがいを感じ取ることができて、とても楽しませていただきましたよ。
安くても、面白い焼酎でした。


(※1)髙峯和則『本格焼酎製造技術』p.5(Foods & food ingredients journal of Japan 214巻1号 p.4-13〔『特集:本格焼酎 その歴史、技術、文化』(p.1-27)内〕2009 FFIジャーナル編集委員会)
(※2)(※1)p.6
(※3)『座談会 外米の問題点をさぐる』p.26(日本醸造協会雑誌 62巻1号 p.21-31 1967.1)
(※4)大本幸子『いも焼酎の人びと』p.72-73(2001.10 世界文化社)



2021/01/24
また飲んでみました。
あ~酒臭かった!(38)  酒くさコメント(2) 

あ~酒臭かった! 38

酒くさコメント 2

川鮎くん

タイ米ではなく、ひとめぼれ(国産米)を使っているのかと思いましたよ。かつて米不足の時、主食にタイ米を食べましたよね~!!
by 川鮎くん (2017-10-02 22:07) 

skekhtehuacso

川鮎くん様、あったあった、たしかにあった!
細川内閣のときで、あたしゃ大学生でしたよ。
米全体が品薄で、タイ米やらオーストラリア米やらをスーパーをはしごして探し回って食べましたよ。
by skekhtehuacso (2017-10-02 22:28) 

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