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《焼酎》28.いいちこ 日田全麹 225ml [9944.大分県の焼酎]

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三和酒類株式会社
大分県宇佐市山本2231-1

本格焼酎
原材料名 大麦麹
アルコール分 25度
225ml
(以上、ラベルより転記)




三和酒類さんのお酒や焼酎は、これまでに以下のものをいただいております。
本醸造 わかぼたん ぼたんカップ (2回目はこちら
いいちこ 25度 200ml
西の星 200ml
わかぼたん 福貴野 300ml

今日いただくこの大分麦焼酎は、原材料の全てが大麦麹という“全麹(ぜんぎく/ぜんきく)仕込”なのだとか。
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原材料名を見ても、表示されているのは“大麦麹”だけでした。
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全麹仕込について、いいちこを題材とした書籍では以下のように紹介されておりました。
一次仕込みはこの麹を使い、二次仕込みで麦を投入する。一次もろみでできている麹が麦を糖化しながら、発酵を強力に続ける。全麹づくりというのはこうして得られた麹だけを一次、二次と分けて使い、糖化の精度を上げることで発酵の効率をより上げる工夫である。」(※1)
全部麦麹にすることで糖化力が強くなり、麹由来のうま味も出てくる。」(※2)

ちょっとだけ補足させていただくと、通常は、焼酎のもろみは、
(1):水に麹と酵母とを合わせて、数日かけて糖化酵素と酵母とを増殖させて(一次仕込)、
(2):(1)に麦や米、芋などの主原料を添加して、1~2週間かけてアルコール発酵を促す(二次仕込
という手法で仕込まれるのだとか。
しかし、 今日いただくこの焼酎は、(1)にも(2)にも大麦に麹菌を植え付けた“大麦麹”だけを仕込む(大麦を主原料として使わない)のだそうです。
 
この全麹仕込は決して三和酒類さん独自の製法ではなく、沖縄の泡盛ではもろみの発酵力を高めるために古くから採用されていた手法なのだとか。
ただ泡盛の場合は「まずは、麹菌(黒麹菌)によって、タイ米から「一次醪」を造る。次いで、この一次醪をいきなり蒸留する。ほかの米焼酎や麦焼酎、芋焼酎、黒糖焼酎などとは異なって、「二次醪」を造らないのだ。これを「全麹(ぜんぎく)仕込み」という。」(※3)とあるとおり、二回に分けることなく一度で全量を仕込むとのこと。


そんな全麹仕込の焼酎ですが、三和酒類さんは、もともとはこの全麹仕込の焼酎を商品化するために開発したわけではなかったようです。
というのも、この全麹仕込の焼酎は、いいちこへの砂糖添加を中止して、砂糖の代わりに混ぜるために開発されたものであったのだとか。
このことについて、文献では以下のように紹介されておりました。

『いいちこ』の品質向上で語られるのが、いまは昔話になってしまった「砂糖事件」だ。ある時期までほとんどの麦焼酎には、原料の穀物以外に味を調整するために糖類(砂糖)を少し添加していた。飲みやすくするためにやっていたことだ。多くのメーカーはその事実を公表していなかったが、『いいちこ』はあえて品質保証のために、砂糖添加の事実を公開した。それは同時に砂糖添加に代わる技術を開発することを要請した。やはり自然の営みでできる本格焼酎にとって、糖類を使うことは邪道であったのだ。これを克服するために開発されたのが「全麹づくり」である。」(※4)

 多くの銘柄が失速する中、「いいちこ」の快進撃は止まりませんでした。八六年に乙類のトップに躍り出たことは既に触れましたね。乙類の主役が「芋」から「麦」に代わった象徴的な出来事として業界の話題をさらいました。同じ年の十月、消費者への説明責任を求める声を背景に、公正取引委員会が乙類について原材料の使用比率や添加物の表示を義務づけ、そのことが業界の様相を一転させました。砂糖添加問題です。
 このとき、大半の麦焼酎メーカーが隠し味に使っていた砂糖の添加を取りやめたのです。砂糖の添加はマイナスの印象ですから。しかし、わが社は糖添を続けることにしました。消費者が好む味を急には変えられません。このため「『いいちこ』を飲むと糖尿病になる」と、ずいぶん中傷されました。私がある酒販店に営業に赴くと、店主が「スプーン一杯の『いいちこ』をガスであぶると、黒く煤ける。これが砂糖」と買い物客に説明しているではありませんか。砂糖といっても、九百ミリリットル瓶に一・八グラム。微量にすぎません。「シングル90杯に、あえて1個の角砂糖」というポスターをつくり、健康には影響がないことを訴えました。
 幸い、味が変わって売れ行きの落ちた他銘柄を尻目に「いいちこ」はグッと伸びました。だが、砂糖添加はほっておけない課題。研究を重ね、大麦麹だけで仕込むことで、麦本来の甘みを引き出す「全麹造り」の開発に成功します。この原酒をブレンドし、砂糖添加と変わらぬ深い味わいを再現できたのでした。砂糖を外すときも社内で激論となりましたが、私も利き酒を繰り返し、味が変わらないことを確認してから、八九年六月に実行に移しました。
 全麹造りは他社の追随を恐れて数年間はトップシークレットでしたね。「いいちこ」は砂糖添加というアキレス腱を克服することで、さらに酒質に磨きをかけることができたのです。」(※5)

 全麹造りというのは、いわば必然でした。麦だけだと非常に軽くて、やわらかいタイプができるけど、深みがなかなか出ない。そこで、昭和六〇(一九八五)年くらいから、深みを出すために全麹造りを始めました。
 最初は、隠し味のような形で、レギュラーの「いいちこ」の中にブレンドしていたんです。六年ほど前(平成一〇年)に、はじめて全麹造り単独で商品化しました。「いいちこ フラスコボトル」です。」(※6)

麹の使用量が多ければ、その麹が出す多量の糖化酵素によってでんぷんの糖化が一気に進むものの、、酵母によるアルコール発酵が追いつかず、おそらく糖がもろみ中に残存するのでしょう。
それ故に、全麹仕込の“もろみ自体”は、きっと甘くなるのでしょうね。

しかし、焼酎の場合はもろみを蒸留することから、揮発性物質ではない糖はそのまま蒸留後のもろみ(かす)に残ってしまい、糖自体は焼酎の味わいに影響を及ぼすことはないと言えるのではないでしょうか?
ということは、砂糖添加に匹敵する全麹仕込のうまみは、麹が出す糖以外の揮発性・香気性の成分に起因するものなのでしょうか?

すみません。
この点について明確に記述していた文献には出会うことができませんでした。
そうと来たら、あとは実際に自分の舌で焼酎の味を確かめてみるしか、他に方策がないでしょう。


お待たせいたしました。
それではいただいてみたいと思います。

まずは生(き)、すなわちストレートで。
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いいちこらしい、きれいな口当たりです。
苦みや雑味はゼロですわ。
でも、ふわっとした香ばしさに深みがありますね。
甘みもしっかりしておりますよ。
強くはなくてべとつきませんが、けっこう深い甘みです。
一方、いいちこで感じたレモンを薄めたような酸味はありません。


次に、お湯割りで。
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お湯割りにすると、酸味が出てまいりましたよ。
かなり穏やかな酸味ですね。
それにじっくりと味わうと、さわやかさがあることもわかります。
ふわっとした香ばしさは若干薄まるようですが、むしろこっちのほうがふっくらとしてきましたよ。
甘みも少し薄まりますが、それでもしっかり残っております。
苦みや雑味はこれもゼロで、かなりきれいな味わいです。


最後は、残ったものをロックで。
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風味はこれは一番はっきりしています。
穏やかな香ばしい風味が鼻へ抜けていきます。
ふっくら感は引き締まりましたが、深みはしっかりと残っております。
酸味は引きましたが、深い甘みははっきりとわかりますよ。


きれいでスッキリしているものの、ふわっとした香ばしさに深みを感じるおいしい焼酎でした。
生(き)、お湯割り、それにロックと、それぞれに特長があって、どれもおいしくいただくことができましたよ。

これさ、かなりうまいんじゃないの!
繊細ではあるものの風味がしっかりしており、それに甘みがコクを添えていて、どっしりとした感じがありました。
このどっしりとした焼酎をいいちこに混ぜることで砂糖の添加を廃止したという話も、たしかに頷けるものでしたよ。
大手蔵ならではの精密な設計と技術とによって醸し出された、おいしい焼酎だと思いましたとさ。





今日は、この大分麦焼酎に合わせるために、大分の家庭料理を作ってみましたよ。

まずは、スーパーで安いお刺身を買ってまいりました。
本当は身がプリプリの白身がよかったのですが、鯛もブリもいささか高めでしたので、お手ごろだったびん長を選びましたよ。
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そして使うのは、大分の甘いしょうゆ。
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その甘いしょうゆにみりんと昆布だしを合わせて、漬けだれを作ります。
この漬けだれで、お刺身を和えるのです。
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和えたものを皿に盛り、ごまとネギをかければ、大分の家庭料理“りゅうきゅう”の完成です。
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全体を混ぜていただきますよ。
この甘めのりゅうきゅうがね、日田全麹のふわっとした香ばしさにとてもよくあいましたよ!
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(※1)平林千春『奇蹟のブランド「いいちこ」』p.147(2005.6 ダイヤモンド社)
(※2)(※1)p.140
(※3)白川湧『本格焼酎をまるごと楽しむ』p.50-51(2007.6 新風舎)
(※4)(※1)p.139
(※5)本山友彦『西太一郎聞書 グッド・スピリッツ 「いいちこ」と歩む』p.164-165(2006.10 西日本新聞社)
(※6)金羊社発行『焼酎楽園 Vol.15』p.40〔『三和酒類・熊埜御堂社長が語る「いいちこ」の味』( p.40-41)内〕(2004年11月 星雲社)




2021/09/11
また飲んでみました。
あ~酒臭かった!(24)  酒くさコメント(2) 
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あ~酒臭かった! 24

酒くさコメント 2

green_blue_sky

醤油との組み合わせは様々、大分のお醤油だ・・・
おいしそう。
by green_blue_sky (2017-11-25 21:46) 

skekhtehuacso

green_blue_skyさん、あたしゃ九州の甘いしょうゆにハマってしまいましたよ。
by skekhtehuacso (2017-11-26 19:57) 

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