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《焼酎》38.蔵八 200ml【追記あり】 [9943.熊本県の焼酎]

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房の露株式会社
熊本県球磨郡多良木町多良木568番地

本格焼酎
アルコール分:25度
容量:200ml
原材料:米(国産)、麦、米麹(国産米)
(以上、ラベルより転記)




今日は、球磨の地に蔵を置く蔵元さんが造った焼酎をいただきます。
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球磨の地で造られる焼酎と言えば、そりゃ“球磨焼酎”でしょう。
ですが、この焼酎のラベルには、表にも裏にも、“球磨焼酎”の表示がどこにもありませんでした。
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なぜ、この焼酎には球磨焼酎の表示がないのでしょうか?
それはきっと、この焼酎の原材料には、米と共に麦が使われているからでしょう。
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酒類の地理的表示を保護する制度によれば、球磨焼酎については「米こうじ及び球磨川の伏流水である熊本県球磨郡又は同県人吉市の地下水(以下この欄において「球磨の地下水」という。)を原料として発酵させた一次もろみに及び球磨の地下水を加えて、更に発酵させた二次もろみを熊本県球磨郡又は同県人吉市において単式蒸留機をもって蒸留し、かつ、容器詰めしたものでなければ「球磨」の産地を表示する地理的表示を使用してはならない。 」(※1)と定められております。
これはWTOの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)に基づく制度で、「ある酒類において、確立した製法や品質、社会的評価を勘案し、その原産地を特定して、世界的に保護しようとする制度(例:シャンパン=フランス シャンパーニュ地域)」(※2)なのだとか。

すなわち、球磨の土地で藩政期より「余剰米の処理方法のひとつ」(※3)であり、「相良藩の隠匿財産」(※3)として今日まで米だけで造り続けられてきたという球磨焼酎のブランドを保護するために、米だけで造ることこそが球磨焼酎の確立した製法であると定めて、球磨焼酎の品質を法的に保証しているわけですよ。
このことについては、かつてこちらで紹介しております。

それ故に、米とともに麦をも使用しているこの焼酎は、球磨焼酎を名乗ることができないのしょう。


ではなぜ、この蔵元さんは、米と共に麦を使用した焼酎を造ったのでしょうか?
米だけで造れば球磨焼酎を名乗ることができて、それが商品の価値を高めることになるはずですよね。
それとも、球磨焼酎の名を捨ててまでも得られるものが、麦を使用したこの焼酎には存在するのでしょうか?

蔵元さんのWebsiteでは、この焼酎のことを「500年の伝統をもつ本格米焼酎と本格麦焼酎とをマリッジさせ造り上げました。切れ味の良さから、食中酒として本場球磨地方では本格焼酎の中で最も愛飲されています」と紹介されておりました。
最も愛飲されているかどうかはともかく、本格米焼酎と本格麦焼酎とのマリッジってのは、果たしてどんな味わいなのでしょうね。
そのマリッジこそが、球磨焼酎を名乗れずとも得られるものなのでしょうか?


それを確かめるべく、そろそろいただいてみたいと思います。

25度の焼酎ですので、今日は半分だけいただきます。
残りは明日、別の飲み方で試すことにいたします。
(その感想は、明日この記事に追記します。)


まずは、生(き)、すなわちストレートでちょっとだけ。
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ほー、なるほど。
25度ですからね、アルコール香はやや強めです。
苦みや雑味がないことから推察するに、おそらく減圧蒸留で造られているのでしょう。
香りはほとんど感じません。

ですがこの焼酎、米の風味と共に、これまでいただいた麦焼酎で感じたような穀物っぽいふわっとした香ばしさも弱めではあるものの感じますよ。


次に、お湯割りで。
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お湯割りにすると、華やかな香りがちょっとだけ出ますね。
米の風味と共に、穀物っぽいふわっとした香ばしさも穏やかながら立ってきましたよ。
酸味はあまり出ないようです。
苦みや雑味はありません。


減圧蒸留らしいきれいな味わいではあるものの、米の風味と共にふわっとした香ばしさを感じることができるおいしい焼酎でしたよ。
これこそが、蔵元さんがいうところの、本格米焼酎と本格麦焼酎とのマリッジってやつなのでしょうか?
これは米だけでは出ない風味でしょう。
米と共に麦を併用する焼酎、なかなかおもしろいじゃあ~りませんか!



翌日。
残ったものを、ロックでいただきます。
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苦みが少し出ますね。
強くはないものの、鋭さを感じます。
風味は米が前に出てくるようです。
キリッとしていますが、甘みは感じますよ。

私としては、香りと風味とがはっきりしていたお湯割りが好みでした。
麦由来と思われるふわっとした香ばしさは、お湯割りと生とで感じましたが、ロックだと米の風味に隠れるみたいでした。
飲み方によって味わいのちがいを楽しむことができる、面白い焼酎ではないでしょうか。

(※1)酒類の地理的表示に関する表示基準(国税庁告示第19号)1(3)イ、同附則2、一覧および別紙
(※2)原田知征『トップに聞く!麦焼酎発祥の地 壱岐の島で、世界品質の焼酎づくり。』p.25-26(FFG調査月報 92号 p.24-29/35 2016.6/7 FFGビジネスコンサルティング)
(※3)加藤秀俊『にっぽん遊覧記11 焼酎バレーをゆく 熊本県球磨郡多良木町 世界に誇る「国酒」焼酎の名産地・球磨川流域の風土と人々』p.389(文藝春秋 59巻12号 p.384-393中 1981.11)

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タンタン

おはようございます。
長崎の壱岐地方には、麦焼酎をベースに米をブレンドしたのがありますよ。
by タンタン (2017-12-29 08:32) 

skekhtehuacso

タンタンさん、壱岐焼酎についてはこのブログでも紹介しております。
あれは麦に米をブレンドしているのではなくて、米麹を使用しているのでした。
すなわち、一次仕込みでは米麹だけを用い、二次で麦を掛けるという製法を藩政期から今日まで継承しているようです。
なぜ麦麹を使わずに米麹を使うのかということについては確定的な解説に出会うことはできませんでしたが、私なりに推測させていただきました。

一方でこの焼酎は、二次仕込みで米と共に麦を掛けているようで、なぜ球磨焼酎の本場でこんなことをするのか不思議でした。
by skekhtehuacso (2017-12-29 20:54) 

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