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《焼酎》43.天孫降臨 20度 200ml [9945.宮崎県の焼酎]

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神楽酒造株式会社KK
宮崎県西臼杵郡高千穂町岩戸144-1

本格焼酎
原材料/さつまいも・米こうじ(国内産米)
アルコール分/20度
容量/200ml
(以上、ラベルより転記)




神楽酒造さんの焼酎は、かつて麦焼酎 ひむかのくろうま 25%をいただいております。
今日いただくこの焼酎は、アルコール度数20度の芋焼酎です。
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宮崎県の焼酎に20度のものが多い理由についてはかつてこちらで触れておりますので、ご参照ください。


またこの芋焼酎は、「低温蒸留を施すことによりフルーティな華やかさを持った芋焼酎に仕上げました。」んだってさ。
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低温で蒸留するということは、きっと減圧蒸留、すなわち低温でも沸騰可能なように蒸留器内を真空に近い状態にして沸点を下げて蒸留しているのでしょうね。
この減圧蒸留は、米焼酎や麦焼酎では、今日において広く用いられているようです。

でもね、 あたしゃかつて減圧蒸留について調べた際に、芋焼酎では減圧蒸留法はほとんど導入されていない。その理由として、酒質が常圧蒸留した焼酎と全く異なることと、もろみ粘度が麦焼酎と比べて30倍以上高いため熱伝導性が悪くもろみが焦げ付く可能性が高いためである。(中略)もろみのアルコール濃度が低下すると蒸留機の形状などにもよるが、一般的に蒸留歩合や原酒アルコール濃度は低下する。(中略)もろみに水を加えることで粘性は低下し減圧蒸留が可能となるが、上述の問題が生じることとなる。」(※1)という記述に出会いましたよ。

神楽酒造さんがいも焼酎に低温蒸留(=減圧蒸留か?)を導入した際にこれらの点をどう克服なさったのか、とても興味深いところです。
ですが、誠に申し訳ございません。
今日はこのことについてまったく調べておりませんでした。


それよりも、あたしゃこの芋焼酎の原料である“黄金千貫(コガネセンガン)”について、ぜひとも触れておきたかったのです。
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黄金千貫(コガネセンガン)というのは、芋の品種名です。
黄金1000貫ほどの価値があるさつまいもということで「コガネセンガン(黄金千貫)」と名づけられた品種。でんぷん含有量が高く、収穫量も多い品種で、皮色は黄褐色、肉色は淡黄色。アルコール歩留まり(アルコールが生成される割合)が高いため、芋焼酎の原料として使う蔵が多い。」(※2)や、「市場に出回る芋焼酎原料の実に95%を占める、焼酎用品種の代名詞。」(※3)という記述にあるとおり、今日においては芋焼酎の原料として広く普及している品種なのだとか。

そのコガネセンガンですが、もともとは昭和41年(1966)にでん粉原料用として育成された品種だったそうです。

その背景には、戦後になってからでん粉を用いた工業を推進する政策が施され、その需要量が増加したことから、それに対応できる品種を育成する必要があったとのこと。
このことについて、以下のような記述がありました。
昭和33年には食糧研究所にブドウ糖製造試験工場が建設され、ブドウ糖製造に関する研究が精力的に行われ、いも類のでん粉を原料とするブドウ糖やグルタミン酸などの工業化の発展と、でん粉工業の大きな伸展が期待されるようになった。
 このようなでん粉工業の発展は、カンショやバレイショの需要を拡大し、かつ安定させて畑作振興上大きな役割を果たすことになるのであるが、しかしこれらのでん粉工業の発展をさまたげている最大の原因のひとつは、原料でん粉の価格の高いことであるとされた。でん粉の価格を引下げるには、原料いもの栽培法の改善やでん粉工場の合理化、操業期間の延長など各方面の対策が必要であったが、最も効果的で可能性の大きいのは、でん粉含量が高く、かつ多収性の品種を作出することであるとされた。」(※4)

独立行政法人農畜産業振興機構のWebsiteでは詳しく紹介されておりますが(←同サイトへ飛びます。)、でん粉は食用や醸造用のみならず、医薬品や化学調味料の製造、それにダンボールや紙の製造にも用いられているのですね。

そしてこの要請に対応すべく、でん粉収量の高い品種として育成されたのがコガネセンガンだったのだとか。
これについては、以下の記述がありました。
ひるがえって「コガネセンガン」ではどうかというと、それは葉で光合成された炭水化物が転流し、塊根中にでん粉が蓄積されますが、その“でん粉貯蔵細胞が比較的に小さく揃っている”ことでした。これは細胞間隙への水分などの蓄積を最小限に止め、でん粉蓄積量を増やすのに好適な細胞形態であることが、後に理論として証明されました。この特性によって、高でん粉多収品種が完成したのです。」(※5)
昭和41年に育成されたあとは、その収量性、でん粉歩留、食卓の卓越性から「農林2号」に替わり、「コガネセンガン」が急速に普及しています。」(※5)

そのでん粉収量ですが、「当時の最も高でん粉多収品種は、関東地方では‘農林1号’の22.5%,(10a当り生藷収量は)2.2t,九州地方では‘農林2号’の24.5%,(同)2.2t」(※6)であったのに対して(()内はブログ筆者追記)、コガネセンガンは「でん粉歩留りが30%、10a当り生藷収量は700貫(2.6t)」(※6)を目標に育成され、実際に「工場歩留りで30%近くを出したといわれている」(※7)とのことでした。

しかしその後、「しかし近年では、でん粉原料用にはより高でん粉多収の「シロユタカ」「シロサツマ」が当てられ」(※5)たり、あるいはでん粉の輸入自由化によってより安価なコーンスターチが主として用いられるようになったことから、コガネセンガンはでん粉の原料から焼酎の原料へと変貌を遂げたのだそうです。


そのコガネセンガンで造られた焼酎ですが、肝腎の味わいについては「“甘く、コク”がある美味しい焼酎ができるといわれています。」(※5)とか、あるいは「クセがなく、上品な甘さ。」(※3)になるのだとか。

今日いただくこの芋焼酎からも、はたしてそういった味わいを感じ取ることはできるのでしょうか?
以上のことを念頭に置きつつ、いただいてみたいと思います。



まずは生(き)、すなわちストレートでちょっとだけ。
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一口含むと、華やかな香りがフワッと鼻へ抜けていきますよ。
それに、芋っぽいふっくらした風味がかなりはっきりしております。
その風味は、まるでふかし芋のようです。
甘みもしっかりしておりますね。
かなり軽めの苦みもほんのかすかに感じます。

一方、アルコールの香りはほとんど感じず、ピリピリ感もないですね。


次に、お湯割りで。
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これは芋の風味が広がりますね。
ふっくらとしていて、ふかし芋そのものですよ。
甘みは残りますが、華やかさは少し引きますね。
酸味は、温かいうちはほとんど感じませんでしたが、冷めるにつれて出てくるようでした。
苦みは完全に引いて、後味スッキリです。


最後は、残ったものをロックで。
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強くはないものの、苦みが少しはっきりしますね。
香りや風味、それに甘みは引くようです。
かなりキリッと引き締まってまいりました。


生(き)でふっくら、お湯割りで風味豊かでスッキリ、そしてロックでキリッと引き締まった、おいしい芋焼酎でした。
これまでにいただいた芋焼酎と比べて、ふかし芋のような風味が豊かでした。
それでいてけっして重くはなく、しかも臭みもありませんでした。

もしかしたら、これこそが低温蒸留(=減圧蒸留か?)の成果なのでしょうか?
そういえば、減圧蒸留の米焼酎は米の風味が、そして麦焼酎は穀物っぽいフワッとした香ばしさがそれぞれ豊かでしたが、芋焼酎を減圧蒸留で造るとふかし芋のような風味になるのかもしれませんね。
それともこの風味こそが、コガネセンガンの実力なのでしょうか?

これさ、かなりうまいんじゃないの!
私としては生(き)かロックが好みでしたが、アルコール香が少ないところから推察するに、割らずにそのまま燗にしてもいけるかもしれませんね。

次回いただく際には、神楽酒造さんが芋焼酎の低温蒸留(=減圧蒸留か?)での製造における問題点をどのように克服なさったのか、必ずや調べてみたいと思いましたとさ。


(※1)高峯和則『本格焼酎製造技術』p.10(Foods & food ingredients journal of Japan 214巻1号 p.4-13〔『特集:本格焼酎 その歴史、技術、文化』(p.1-27)内〕2009 FFIジャーナル編集委員会)
(※2)エイムック2089『焼酎の基本』p.036(2010.12 枻出版社)
(※3)鮫島吉廣監修 メディアファクトリー編集『ゼロから始める焼酎入門』p.36(2014.4 株式会社KADOKAWA)
(※4)坂井健吉『農業技術の源流を訪ねて(1)でん粉工場といも作農家に貢献したカンショ‘コガネセンガン’』p,47-48(農業水産技術研究ジャーナル 16巻5号 p.45-53 1993.5 農林水産技術情報協会)
(※5)樽本勲『でん粉のあれこれ さつまいもでん粉人列伝~3.坂井健吉とコガネセンガン~』p.23(でん粉情報 29号 p.20-24 2010.2 農畜産業振興機構調査情報部)
(※6)(※4)p.48
(※7)(※4)p.52
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