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【お酒】2306.萌稲(MONE) 自社田栽培「百田」 純米酒 アルミ缶 [05.秋田県の酒]

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製造者 秋田銘醸株式会社
秋田県湯沢市大工町4番23号

品目 日本酒
内容量 180ml
原材料名 米(秋田県産)、米麹(秋田県産米)
原料米 自社田栽培米 百田100%
精米歩合 70%
アルコール分 14度以上15度未満
(以上、ラベルより転記)





今でこそ、銘醸地として名高い秋田県。

しかし、江戸時代は、域内各所に存在した鉱山で働く坑夫のためにお酒を製造していた程度でした。
杜氏は、東北で最も酒造りが盛んであった大山(今の山形県鶴岡市)から派遣を受けるなど、技術的に見ても酒造先進地域とは言い難い場所でした。

それが明治末期から昭和初期にかけて、伊藤忠吉【両関】・花岡正庸・佐藤卯兵衛【新政】の3氏によってそれぞれ独自に酒造技術の向上と確立とがもたらされ、今日における銘醸地秋田県の基礎が築かれたのでした。

その中の一人、
大蔵省の技師であった花岡正庸氏。
氏を中心として、大正時代中期に、秋田県の酒造家各家の出資の下に会社として設立され、秋田の酒を東京へ進出させるためのタスクフォースとしての役割を担ったのが、秋田銘醸さんだったのでした。

手印は、“おしゃ、まんべ!”(由利徹より)。
じゃなくて“美酒爛漫”(びしゅ・らんまん)
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その秋田銘醸さんのお酒は、これまでに以下のものをいただいております。
【お酒】298.純米原酒ふなおろし 200ml缶
【お酒】348.らんまんカップ(糖類・酸味料添加)
【お酒】355.生貯カップ(糖類添加・酸味料添加なし)
【お酒】408.本醸造 飛切カップ
【お酒】416.美酒爛漫 本醸造原酒 熟成酒 200ml缶2回目はこちら
【お酒】1393.美酒爛漫 普通酒 お燗瓶 180ml
【お酒】1425.美酒爛漫 本醸造 美酒探求七〇一 180ml
【お酒】1426.美酒爛漫 まるごと秋田 純米酒 まなぐ凧 180ml
むかしながらのにごり酒 カップ [変わった酒]


今日いただくこのお酒は、“萌稲”(MONE)なる純米酒。
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品質表示はこちら。
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自社田で栽培した「百田」ひゃくでん)なるお米を100%使用しているんだってさ。
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勘の良い御仁であれば、もうおわかりでしょう。
ここからしばらくの間、自己満足的ウンチク披露が続くのでした。


百田(ひゃくでん)は、「「秋系酒718」を母に、「美郷錦」を父に、2010年に人工交配され、2018年に品種登録出願となった。両親とも山田錦を母とする秋田県育成系統という特徴がある。」(※1)という、かなり新しい酒米の品種なのだとか。

おいおい!
たしか秋田県には、“秋田酒こまち”なる酒造好適米があったじゃないか!

でもどうやらその秋田酒こまちには限界があったみたいで、「「山田錦」、「五百万石」で仕込んだ清酒のような味わいの表現が難しい。」(※2)んだってさ。

それ故、「最高級酒の原料米として使われる「山田錦」は秋田県内における栽培では登熟が遅く、収穫には至らない。そのため、県内の蔵元で使用される「山田錦」はすべて県外産を購入している。そこで秋田県では、「山田錦」に替わる最高級酒の原料米として使用するため、「百田」を育成した。」(※3)とのこと。

おいおい!
もううんざりだぜ!

あたしゃねぇ、今までに、各県における酒造好適米新品種の育成に関する記事を少なからず読んでこのブログで紹介してきたつもりですよ。
そしてそれらのどの記事を読んでも、「山田錦の酒造特性に匹敵する」とか、「山田錦と比較しても遜色ない」とか結論づけて、とにかく山田錦に追いつきつつあることをアピールしたくてしかたがないものばっかりでしたよ!

それなのに、秋田県のように、どこの県でも県外産の山田錦を購入している蔵元さんがけっして少なくはなく、かつ、いつまで経っても状況は一向に変わらないのが実情じゃないですか!
ということは、どの県も、未だ山田錦を超える酒造好適米を育成できてはいないということでしょうよ!

もちろん、育成に携わる人が手を抜いているだとかどいつもこいつもマヌケでトンマで頼りないだとか税金のムダ使いだとかよくそんな体たらくで高い給料やら年金やらをもらえるなだとか民間だったら成果を出さないとクビになるんだぞだとかもういっそのこと育成なんかキッパリと諦めて兵庫県から山田錦を買い続ければええやんかだとかなんて、あたしゃけっしてそうは思いませんよ!
よくもまあ・・・。

この点については、「複雑な工程を経る日本酒造りには、使い慣れたということもあるでしょうが、やはり「山田錦」がよいとの評価を頂いて、まだまだ後輩に道を譲らない品種なのです。」(※4)とあるとおり、
山田錦が本当にずば抜けて優秀な酒米であるが故に、山田錦を超える酒造特性を持った酒米を育成することがものすごく難しいということでしょうね。
それにもかかわらず新たな酒造好適米が各県で次々と育成されているということは、やはり育成に携わる人の情熱も、これまたものすごいということでしょう。

そんな経緯で育成された百田ですが、秋田県の報告では、
玄米タンパク質含有率が低く、製成酒は軽快で味わいにふくらみのあるタイプとなり、山田錦」に匹敵する酒造特性を持つ。」(※5)
と結論づけられておりましたよ。

あーあ、またかよ!
もうええわ。


まあでも、どのくらい山田錦に近づいたのか、確かめてみようではあーりませんか!
“華やかな香り。”がある旨書かれておりましたので、まずは冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。
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お酒の色は、ほぼ無色透明でした。
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あれ、香りないじゃん!
上立ち香はありませんが、含むとフレッシュな風味をはっきりと感じます。

うまみはやや濃いめ。
米のうまみに厚みを少し感じます。
苦みがあって、少し強めで鋭いね。
酒臭さはなく、熟成感もゼロ。
キレはまあまあ。

酸味はややひかえめ。
すっぱさは弱いというか、軽い感じ。
スーはなく、ピリもなし。

甘みははっきり。
うまみと共に初めから甘みがやってきて、幅をしっかりと感じます。


爽快やや濃醇で苦旨甘口のおいしいお酒でした。

米のうまみに厚みを感じましたが、山田錦のような透明感は伴ってはおりませんでした。
フレッシュな風味があって、けっこうさわやかでした。
ただし、目立ったのは苦み。ちょっと強すぎかも。
それでも甘みがしっかりしていたせいか、苦みを和らげてくれはしておりました。


香りがないことがわかったので、燗でも試してみることにいたしました。
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甘みは引くね!かなり引いたよ。
米のうまみは厚みが引いて鋭くなり、舌を滑るように過ぎて喉へと消えていく感じ。
苦みはほぼ消えて、とげとげしさがなくなりました。

逆に酸味はややはっきりで、すっぱさが少し出るととともに、酸味自体の深み(乳酸由来か?)を少し感じるようになりましたよ。
しかもキレがよく、後味スッキリ。


燗にすると、やや濃醇でちょいすっぱちょい深スッキリ旨やや辛口のおいしいお酒になりました。

燗のほうがやや辛口でスッキリしているものの、酸味の深みが少し出ておりました。
そのせいか、冷やしたものとは異なった飲み応えがありました。
甘みだけでなく、苦みも引いたのには驚きました。


冷やすとどっしり苦甘口で、燗にするとちょい深スッキリやや辛口。
これほどまでに味わいが異なるとは、かなり面白い体験でした。
どちらもおいしくいただけましたけれど、オイラの好みは燗だね。
受賞歴については敢えて触れませんでしたが、こりゃワイングラスで飲んでいる場合じゃないぞ!



え?
なんだって?

百田は山田錦に匹敵する味わいだったのかってか?



もういいじゃないですか!(日景忠男より)

山田錦には山田錦の良さがあり、各県で育成されたお米にはそれぞれ独自の良さがあるのです。
その双方、いや、いろいろな種類のお米で造られた数多くのお酒の味を楽しめるだなんて、日本は贅沢な国じゃありませんか!
もちろんこれまでどおり、兵庫県から山田錦を買ってお酒を造ってもよし。
そして山田錦を使ったお酒と各県の育成米を使用したお酒とで味わいを比較することも、お酒の楽しみの一つといたしましょうや!

もう山田錦に追いつくことを目標とせず、独自の特長をアピールできるお米の育成へと、各県で方針を転換すべき時が来たのではないかと思う、吉宗であった。(暴れん坊将軍より)


(※1)相沢陽子『本県独自の酒造好適米、新品種開発』p.14(あきた経済 507号 p.13-14 2021.8 一般社団法人秋田経済研究所)
(※2)(※1)p.13
(※3)髙橋竜一・柴田智『酒造好適米新品種「百田」の収量および生育目標値の策定』p,11(東北農業研究 76号 p.11-12 2023.12 東北農業試験研究協議会)
(※4)兵庫酒米研究グループ編著『山田錦物語 人と風土が育てた日本一の酒米』p.2(2010.4 神戸新聞総合出版センター)
(※5)高橋竜一・川本朋彦他7名『[普及事項]新技術名:酒造好適米新品種「百田(ひゃくでん)」の育成(平成30年)』(2018.2 美の国あきたネット(秋田県公式サイト(https://www.pref.akita.lg.jp/)内))
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あ~酒臭かった! 36

酒くさコメント 4

Boss365

こんにちは。
秋田銘醸さんの「美酒爛漫」いい響きですね。また、どこかで聞いた事ある文字列、親父が秋田銘醸さんのお酒を好んで?飲んでいた可能性ありです。ところで「萌稲」は「百田」を使用みたいですが、優秀な酒米?「山田錦」との関係性、多少理解しました。ところで「味わい」ですが「もういいじゃないですか!(日景忠男より)」その通りですね(爆)。地産のモノを使い、個性を際立たせる方が良いですね!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2024-06-13 23:21) 

八犬伝

美酒爛漫
懐かしいですね
CMをよく流していましたよね吉永小百合の。
by 八犬伝 (2024-06-14 21:42) 

skekhtehuacso

Boss365さん、美酒爛漫は思い出のお酒かもしれないのですね。聞き覚えがあるということは、おそらく間違いないでしょうね。
山田錦に代わる酒米は各県で育成されておりますが、いつまで経っても「これこそが山田錦を超えるお米だ!」と胸を張って宣言できるものは出て来ないみたいです。
いろいろとあって味の違いを楽しめたほうが面白いと思いますよあたしゃ。

by skekhtehuacso (2024-06-14 21:44) 

skekhtehuacso

八犬伝さん、そういえば清酒のCM、見なくなりましたね。
最後に見たのは、「まる」かな。
by skekhtehuacso (2024-06-14 22:02) 

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