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【お酒】1764.鷹来屋五代目(たかきやごだいめ) 特別純米酒 カップ [44.大分県の酒]

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浜島酒造合資会社
大分県豊後大野市緒方町下自在381番地

原材料名 米(国産)、米麹(国産米)
アルコール分 15度
精米歩合 55%
日本酒度 +5
酸度 1.5
酒質 旨口
杜氏 五代目 浜嶋弘文
内容量 180ml
(以上、ラベルより転記)




大阪にある“山中酒の店”で入手したこのカップ酒。
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“鷹来屋”の文字は、“たかきや”と読むそうです。
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このことについては、「同社は創業明治22年、屋号を「鷹来屋(たかきや)」とする老舗の蔵元」(※1)で、「現在の母屋の棟上げのとき大黒柱に鷹がとまり、その後も鷹が蔵元によく飛来していたことから。地元では「鷹来屋」と呼ばれていた。この呼び名が、後に屋号となる。」(※1)という記述がありました。


そしてこのお酒は、“鷹来屋五代目(たかきやごだいめ)”という銘なのだとか。
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また裏のラベルの“酒歴書”には、杜氏として“五代目 浜嶋弘文”と書かれておりました。
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浜嶋酒造さんは、四代目のときにいったん休造し、桶買いでお酒を販売していたそうです。
それを今の五代目が復活させて酒造りを再開したのだとか。
このことについて、以下のような記述がありました。

昭和54年に訳あって酒造りを停止。平成9年にサラリーマンだった浜嶋弘文氏が、7年間の模索期間を経て自ら五代目の杜氏となり、酒造りを復活させ、“情熱”と“愛情”で丁寧な酒造りを続けている。」(※1)
5代目の浜嶋弘文さんは、蔵元に生まれながら酒造りがかなわず都会で会社勤めをしていたが、子供の頃に経験した蒸米の熱気や搾りたての酒の香りが忘れられず、90年に蔵に戻り酒造再開を試みる、醸造試験所で学び、他の酒蔵で蔵人の経験を積み、7年後に自ら杜氏として酒造りを開始した。」(※2)

上記にある“他の酒蔵”の中には、どうやら“多満自慢”の石川酒造さんが含まれているみたいですね。
また休造の理由ですが、「1970年代後半に弘文さんの母親が病に倒れて以降、1996年まで濱島酒造では酒を造らず近隣の蔵に造りを委託してい」(※3)て、「小さな蔵元で、賄い方の女将が欠けることは大きな痛手であった」(※4)のだそうです。


そんな浜嶋酒造さんですが、今では“完全手造り”にこだわっていらっしゃるのだとか。
このことについて、以下のような記述がありました。

同社の蔵には、酒造りを止めた当時の道具がそのまま残っていた。それを活用できる伝統的な製法である“完全手造り”を特徴とした酒造りで復活することを決めた。」(※4)
酒造りでは、昔ながらの木の甑で米を蒸し、放冷は全て布に打ち上げ自然放冷する。室は籾殻室で麹はすべて箱麹、仕込みは500~1,200キロまでの仕込み量を竹の櫂棒でまぜていく。しぼりは普通酒、本醸造、純米酒にわたる全量を槽で搾っている。この全ての工程で、同社は杜氏をはじめ蔵人の視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、いわゆる人間の持つ五感を活用している。目で見て、鼻で香りを嗅いで、手で触って、耳で音を聞いて、口に入れて味をみる。研ぎ澄まされた全ての感覚によって、手造りならではの地酒が造られている。そして「鷹来屋の酒は心で醸す」そんな蔵元の熱い思いや心意気も込められている」(※5)


さらには「顔の見える酒造り」(※6)の信条の下、米作りもなさっているのだそうです。

酒は太古の昔から人類と関わり続け、その地方の風土や文化と密接に結びついたものであると言われている。同社は「地元で育まれた原料で造られた酒が真の地酒である」というこだわりから、平成18年から米作りにも挑戦している。
(中略)
同社は地元の農家から約2.5haを借り受け、米作りを始めている。米作りをするに当たり、トラクターをはじめとする農機具すべてを買い揃え、育苗、田植え、成育管理、稲刈り、籾摺り、精米など、米作りの全ての工程を同社で担っている。費用も手間も厭わず、良いと思うことは全て試しながら米作りを行っている。」(※6)

トラクターが出てくるということは、お酒は手造りでも米作りはそうではないのね。
イヤミな奴だよオマエは。


そうして造られたお酒の味については、「日本酒を醗酵させるスターターの役目を果たす酒母づくりに、時間をかけることで濃厚な風味を出している。すっきりしているのでもたつかずに飲めるが味に厚みもある。」(※7)とか、「目標の酒質が決まった2003年はまったく違う「旨味ははあるが控えめな食中酒」を目指すことにした。いわく「食べながらだらだら飲んでも、飲み飽きない淡麗旨口の酒」だ。」(※8)といった記述がありました。

果たしてそのような味わいなのでしょうか?
それを確かめるべく、いただいてみたいと思います。


特別純米酒には香りを特徴とするものもございましたので、まずは冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。

お酒の色はかすかに金色がかっておりましたが、透き通ってはおりませんでした。
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香りにフルーティーさはありませんね。
でも、上等な接着剤みたいな香りを少し感じます。
“上等な接着剤”なんてものが存在するのかよ。

うまみはやや淡めですが、淡めなりにしっかりしています。
米のうまみに幅があるものの厚みはなく、口の中でスッと散るようです。
苦みや雑味はまったくなく、熟成感もありません。
純米ですがキレはよいですね。

酸味はややはっきりしています。
すっぱさが弱めですが、鋭さを少し感じます。
スースー感はなく、ピリピリ感もありません。

甘みはひかえめです。
ゼロではないものの、かなり弱めです。

やや淡麗でちょいすっぱスッキリ旨辛口のおいしいお酒でした。
うまみはやや淡めでしたが、けっして薄くはなく、淡めなりにしっかりしていて飲み応えがありました。
酸味がいい感じに効いていて、それが食べ物の臭みや脂っぽさをサッと流してくれました。
食べ物の味を引き立ててくれるものの、けっして脇役に徹することなくお酒自体の味も楽しめる、おいしい食中酒でした。


ここで、あらかじめ取り分けておいたものをぬるめの燗にしてみましたよ。
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これはキリッと引き締まるね!

スッキリ感が際立って、キレのよさが増しました。
酸味はすっぱさは引くものの、鋭さが増してかなりシャープになりました。

燗だと、淡麗スッキリ旨辛口のおいしいお酒になりました。
燗にしたことで、かなり引き締まりましたよ。
それ故か、かえって米のうまみが前に出てくるみたいでした。

感のほうが、よりいっそう食中酒らしくなりましたよ。
あたしゃ燗のほうが好みだな。


鷹来屋五代目は、たしかに“旨味ははあるが控えめな食中酒”(※8)であり、かつ“食べながらだらだら飲んでも、飲み飽きない淡麗旨口の酒”(※8)でした。


(※1)佐藤有香『The Challenger 浜嶋酒造合資会社 屋号 鷹来屋 ~手造りにこだわり、究極の地酒造りに挑戦~』p.12(おおいたの経営と経済 No.223 p.12-15 2009.4 大銀経済経営研究所)
(※2)山本洋子『新日本酒紀行 地域を醸すもの Number 116 醸すのは地域の未来をつなぐ酒 鷹来屋 大分県豊後大野市緒方町』p.105(週刊ダイヤモンド 107巻23号 p.105 2019.06.15 ダイヤモンド社)
(※3)木村克己監修『幻の地酒尽くし きき酒師が選ぶ蔵元の美酒』p.119(2003.8 青春出版社)
(※4)(※1)p.13
(※5)(※1)p.14
(※6)(※1)p.15
(※7)(※3)p.112
(※8)(※3)p.119