【お酒】443.白老（はくろう） 上撰白老 カップ

澤田酒造株式会社
愛知県常滑市古場町4丁目10番地

アルコール分15度以上16度未満
原材料名 米（国産）・米麹（国産米）・醸造アルコール
180ml詰
（以上、ラベルより転記）



私としては意外だったのですが、このブログを始めて以来、愛知県のお酒をいただくのは今日がはじめてでした。
今日いただくこのカップ酒は、愛知県常滑（とこなめ）市にある蔵元さんのものです。
常滑市は知多半島の真ん中あたりにあって、中部国際空港（セントレア）が位置する市です。


愛知県のお酒と言えば、最近では醸し人九平次や義侠などが人気の銘柄ですね。
ですが、それはごく最近のことです。
それらの銘柄が有名になった時期よりもはるか昔の江戸時代後期には、常滑や半田などを抱える知多半島は灘に次いで第二位の銘醸地だったようです。
そして、ここで造られるお酒は、上方と江戸との中間で造られるお酒という意味で“中国酒”と呼ばれていたそうです。
これについて、文献では以下のように紹介しています。

「江戸と京都、大阪の中間にあるところから、古くからこの地域の酒は「中国酒」と呼ばれ親しまれており、伊丹や灘といった上方の銘醸地に次ぐ江戸への酒の供給地として、明治初期に至るまで全国第2位の酒造量を誇っていました。その中心は知多半島周辺で灘同様沿岸沿いの立地の利点を活かし、海運を利用して盛んに江戸へと送られていったのです。」(※1)

「江戸幕府は寛政二年（一七九〇）に江戸入津酒樽数の規制にのりだしたが、同年の江戸入津酒樽数七二万樽のうち、今津・灘目が二四万樽、尾州は一二万樽であった。尾州分はほとんどが知多酒である。」(※2)


知多半島で造られた“中国酒”は、酒質においては灘の酒に劣るものの、その地の利が灘に比べて輸送面で有利に働いたことが、江戸への輸送量を伸ばした要因の一つであるようです。
この点について文献では、以下のように紹介していました。

「18世紀以降に発達した尾州廻船のなかでも、廻船問屋内田家の名で知られる内海船は、内海（南知多町）を拠点に豊浜や美浜町の小野浦などに90隻以上あった。また大野船・常滑船・野間船・半田船など計約250隻もの千石船があったようだ。」
「上方よりも江戸に近く、市場の動きを察知して出荷ができる地の利を活かし、スピーディーで安全な運搬を手掛ける尾州廻船と共に活気を帯びていた。」(※3)

「伊勢湾は諸産業の発達した広い後背地域を控え、かつ上方と江戸を結ぶ東海航路の要衝にあって、廻船業が発達していた。風波に弱い和船時代には、中国とも呼ばれた伊勢湾沿岸は上方に比べ熊野灘の分だけ江戸への航海に有利であった。」(※4)


今日は、そんな中国酒の流れを汲む愛知県知多半島産のお酒をいただきます。
普通酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。


一口いただくと、濃厚なうまみが口の中にグッと迫ってきます。
醸し出された酒臭い（←ほめ言葉です）うまみです。
少し香ばしさもあるようです。

酸味はひかえめです。
さわやかさを感じる酸味です。
刺激やピリピリ感はありません。

甘みはかなりはっきりしています。
でも、クドさはなくて、自然な甘みです。

さわやかな酸味が、濃くてしっかりしたうまみとはっきりした甘みとをうまくまとめている、濃醇甘口のおいしいお酒でした。
熟成感は感じなかったものの、とてもしっかりした味わいです。
それに、もし酸味のさわやかさがなかったら、きっと、ややクドい味に仕上がっていたことでしょう。
これはとてもおいしいお酒だと思います。
隠れた銘酒を見つけてしまったかもしれません。
いやいや、“中国酒ここにあり”といったところでしょうか。



(※1)松崎晴雄『日本酒のテキスト 2 産地の特徴と造り手たち』p.82（2003.11 同友館）
(※2)篠田壽夫『知多酒造業の盛衰』p.32-33（社会経済史学 第55巻第2号 1989.6 社会経済史学会）
(※3)エディット知多半島 2012年秋号(vol.48) p.12-13（2012.9 山海舎）
(※4)(※2)p.45

酒くさコメント 2

白老は時々の飲みますね。今年の正月のお供えも白老の古酒でした。
まだ飲んでないですが、
どちらかというと今風でない古風なお酒ですよね。当主がそういう考えらしいですが
by スミッチ (2015-01-22 12:25) 

スミッチさん、コメントありがとうございます。
地元では名の通ったお酒なのですね。
私は、知多の酒といえば国盛とねのひぐらいしか知りませんでした。
by skekhtehuacso (2015-01-23 13:22)