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【お酒】1013.Vセレクト 淡麗辛口 灘の鬼ころし カップ [28.兵庫県の酒]

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販売者:株式会社バロー
岐阜県多治見市大針町661-1
製造者:大関株式会社
兵庫県西宮市今津出在家町4-9

原材料名:米(国産)・米こうじ(国産米)・醸造アルコール
アルコール分13度以上14度未満
200ml
(以上、ラベルより転記)




このお酒ですが、岐阜県多治見市に本店を置くスーパーが企画し、兵庫県は灘五郷のうち今津郷にある大関さんが造ったお酒のようです。
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そういえば以前、広島県福山市に本店を置くスーパーが企画して、灘五郷のうち魚崎郷に蔵を置く櫻正宗さんが造ったカップ酒をいただいたことがありました。

なお、大関さんのお酒は、これまでに以下のものをいただいております。
266.オダキュー 天下の険 上撰 カップ
386.大関 超特撰 大坂屋長兵衛 大吟醸 180ml
695.本醸造 上撰 辛丹波 300ml
1000.ワンカップ大関 上撰


“鬼ころし”という酒銘が付けられております。
その意味については、かつてこちらでまとめておりますので、ご参照下さい。
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またこのカップ酒ですが、フタには“金鹿”という銘が記載されておりました。
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金鹿(きんしか)は、かつて大関さんと同じく灘五郷の今津郷にあった灘酒造さんが使用していた酒銘です。
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〔『灘の酒博物館』巻末折込図より(1983.10 講談社)〕

文献や確定的な情報に当たったわけではないので正確に記述することはできませんが、この灘酒造さんは21世紀に入ってから廃業し、それを大関さんが救済に乗り出して傘下に収めたようです。
きっとその際、大関さんが“金鹿”の酒銘も引き継いだのですね。

これは二年前に撮影した、西宮市にある金鹿さんの宮水井戸を示す看板の写真です。
廃業した後も、井戸は残っていたようですね。
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宮水の意味については、こちらをご参照下さい。


灘酒造さんは、灘での酒造りは昭和三十年代からと比較的新しかったようですが、その由来は戦前に朝鮮半島で酒造りをしていた蔵元さんにあったのだとか。
このことについては、手元の文献に以下のような記述がありました。

 朝鮮北部で「元山酒造」を経営していた植田(植田八郎・当時の灘酒造社長:ブログ筆者注記)にとって、敗戦はまさに青天の霹靂だった。内地の不況とは対照的に順風満帆だった酒造り業が烏有に帰した。工場設備などはすべて接収。財産どころか、家族五人が無事に引き揚げることが精いっぱいだった。
 揖保郡御津町出身の植田の父・伊之助は日露戦争後に朝鮮に渡り、大正五年から酒造業を始めた。業績は順調に伸び、昭和七年には、家督は植田に移った。昭和六年に勃発した満州事変後、清酒の需要が急増。元山酒造の石高は終戦の二十年には一万石近くにまで達した。もっとも軍需をはじめ日本人相手の商売がほとんど。当時朝鮮での清酒醸造会社は百社を超えたが、その多くは軍の力をバックにした日本からの進出企業だった。
 帰り着いた植田は、食うや食わずの生活を続けた。ようやく大阪で海産物の卸の仕事を細々と始めたものの、虚脱感はどうすることもできない。一日中釣り糸を垂れて過ごすこともあったが、酒造りへの熱い思いは断ち切ることができなかった。
  (中略)
 植田らは二十八年「朝鮮引き揚げ清酒製造業者連盟」を結成。全国に散らばっていた約八十人の元業者を探し出し、「われわれにも酒造免許を」と、国税庁酒税課へ連判で訴えた。
  (中略)
 引き揚げ者は、四つの地域に分散して“復活”することになった。岡山、山口、長野、そして兵庫。植田らは二十七人が集まり、苦しいなかから五百万円を捻出し、資本金とした。酒蔵は神戸・西郷にあった「忠勇」(若林酒造)の蔵を借りることができた。仕込みは三十年十二月に始まった。
 「灘酒造」。酒銘は「金鹿」。新しい灘酒の誕生である。
  (中略)
 灘酒造は三十五年、西宮に移り、灘五郷の中堅メーカーとして歩み続ける。初年度の石高はわずか九百九十石だった。植田は灘で初めて造った酒の味が、今も忘れられないという。」(※1)


そんな金鹿の酒銘を今に引き継ぐこのお酒ですが、糖類や酸味料は添加されていないものの、アルコール度数がやや低めに設定されておりました。
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醸造アルコールを添加して造ったお酒ですから、もろみを搾った際の度数は20度を超えていることでしょう。
それ故、おそらくこのお酒は加水を多めにして薄めて量を稼いでいるのだと淡麗さを出しているのだと思います。

たしかにね、お値段も118円と破格の安さでしたよ。
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もしかして大関さんでは、“金鹿”を安酒の銘柄としてお手軽なお値段のお酒の銘柄として使用しているのでしょうか?

でもね、別の文献によれば、在りし日の金鹿はなかなかの良酒だったそうですよ。
 金鹿は、一万石ほどの蔵です。100%灘の酒をキャッチフレーズにして、桶買いをしないで、自製酒のみを出荷しているところに、特色があります。特色のある製品としては、一、二級の辛口銘柄名の金鹿にちなんだ「バンビカップ」など。もちろん、こういう蔵の酒は、デラックスで、その特長を味わいたいものです。」(※2)
(桶買いについては、かつてこちらの末尾で触れております。)


大変お待たせいたしました。
そろそろいただいてみたいと思います。
普通酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。

お酒の色は、ほとんどわからない程度でした。
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うまみはやっぱり淡めです。
でもね、淡いなりに醸し出された酒臭い(←ほめ言葉です)うまみを感じますよ。
それに、熟成感もかすかにあるみたいです。
軽い苦みもちょっとだけあるみたいですが、まったく気にはならない程度です。

酸味はややひかえめです。
すっぱさは弱めですが、鋭さを少し感じます。
刺激やピリピリ感はありません。

甘みはややはっきりしています。
淡いせいかもしれませんが、べとついた感じはなく、さらっとしています。


淡めだが、淡いなりに味と飲み応えとを感じることができる、淡麗旨やや甘口のお酒でした。
度数の表示のみならず味わいの淡さからも、おそらく加水は多めだろうなと感じました。
でも、ワンカップ大関の上撰よりも、こちらのほうが酒臭さ(←あくまでもほめ言葉です)や飲み応えがあって、よりお酒らしい味わいでした。
私はワンカップ大関よりも、こっちのほうが好みですね。
それにこの値段でこの味わいでしたら、御の字だと思います。
もしかしてこれは、在りし日の金鹿の味わいを今に受け継いだ成果なのでしょうか?


(※1)神戸新聞社会部編『生一本 灘五郷-人と酒と』p.221-222(1982.11 神戸新聞出版センター)
(※2)中尾進彦『灘の酒』p.97(1979.7 神戸新聞出版センター)

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あ~酒臭かった! 31

酒くさコメント 2

エクスプロイダー

100円ローソンのカップ酒みたいですな。
by エクスプロイダー (2016-10-26 23:04) 

skekhtehuacso

エクスプロイダーさん、LAWSON100のカップ酒は、お店で陳列されているところを見たことはあるものの、品質表示を確認したことはまだありません。
気が向いたら、買ってみることにします。
by skekhtehuacso (2016-10-27 22:27) 

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