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【お酒】115.白鷹 辛口純米 生酛造り [28.兵庫県の酒]

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白鷹株式会社
兵庫県西宮市浜町1番1号

アルコール分/16度以上17度未満
精米歩合/70%
原材料名・米(国産)・米麹(国産米)
山田錦100%使用
300ml詰
(以上、ラベルより転記)

灘五郷の一つ、西宮郷にある蔵元のお酒です。

白鷹さんのお酒は、かつて上撰のお燗瓶をいただいております。


このお酒のラベルには、“生酛造り”であること、そして“山田錦100%使用”であることが書かれています。
生酛造りについては、こちらをご参照ください。
また、山田錦については、こちらをご参照ください。


今日は、上記二点についての記述を省略してでも書きたいことがあるのです。


かつて、白鷹の上撰のお燗瓶をいただいた際に、
“白鷹さんのことを“灘の良心”と称している書き物を読んだことがあります。しかし、そう称されている理由はわかりませんでした。”
と書きました。

私はまだ、この、“灘の良心”の理由を明言している文献には出会っておりません。
しかし、おそらくこれもその理由の一つではないかと思われる文献をみつけました。
ここでは、その文献を部分的に抜粋して引用し、紹介してみたいと思います。
(部分的に太字にしたのは、このブログの筆者の判断です。)

三十七年、酒税法が改正され準一級が廃止、一級に“格上げ”された。高度経済成長とともに一級酒は大衆的人気を獲得、需要が激増する。この一級酒ブームを機に、灘、伏見の大手メーカーは一気に売り上げを伸ばそうとした、しかし、原料米の割り当てが決まっているため需要を満たすことができない。そこで地方の小メーカーの酒を買い取り、品質をチェックしたうえ自社のレッテルで売り出した。いわゆる「桶買い」である。

しかし「桶買い」という業界の潮流に背を向けたメーカーもあった。白鷹の社長・三代目辰馬悦蔵もその一人である。

「目先のことにとらわれていてはいけない。うちは品質本位でやる。」伝統を誇りにする三代目悦蔵は自醸酒100%を貫いた。

辰馬悦蔵商店の酒造量の全国ランクは戦前より下がった。しかし寛男は先代が敷いた「品質重視」のレールをさらに伸ばそう、と肝に銘じている。
(以上、(※1))

要するに、桶買いをしなかったことで酒造量は低下してしまったが、その代わりにお酒の品質を守ったことが、白鷹さんを灘の良心と賞賛する理由の一つに当たるのかもしれません。

なお、“桶買い・桶売り”の意味については、最後にまとめておきましたので、ご覧いただければと思います。


そんな灘の良心、白鷹さんの純米酒を、まずは冷や(常温)でいただきます。


うまみはかなりしっかりしています。
お米の味と、醸し出されたうまみとの双方がよく出ていると思います。
濃厚な味ですが、雑味や角はありません。
丁寧に造らないと、こういう味にはならないと思います。

甘みもほんのりと感じます。
これがうまみをより際立たせているようです。

酸味は、これはきっと天然の乳酸の酸味でしょう。
丁寧な生酛造りの成果だと思います。
刺激やピリピリ感はなく、まろやかな酸味です。


一口いただいただけで、私の好みの味だとわかりました。
濃醇やや辛口の、とてもおいしいお酒でした。


ここで、ちょっとぬる燗にしてみました。
すると、うまみと酸味とがより深くなりました。

冷やでよし、燗にてなおよしの、おいしいお酒でした。
いやぁ、うまかった。



★☆【桶売り・桶買いについて】★☆

小規模の酒蔵が、自分の蔵で造った酒を大手の蔵に売って、大手の蔵が自社の製品として販売するシステムを、小規模の酒蔵(売り手)から見た場合に“桶売り”と、大手蔵(買い手)から見た場合に“桶買い”というようです。

そして「桶売りがさかんになったのは、高度成長期の昭和三十年代からだった。大量生産大量消費の時代となり、生産が追いつかない大手メーカーが、地方の酒蔵に次々と製造を依頼した」そうです(※2)。

この桶売り・桶買いについては、売る側にも買う側にも酒造りへの姿勢を堕落させてしまうとして、否定的な見解があるようです。
また、ある文献では「関東平野で造った酒は大手メーカーが桶買いして集めブレンドして販売する場合は関東地方の市場に返すのが鉄則だった。桶売りをするということは、鉄砲玉を作って敵に届けているようなもので、未来はない。」と評しています(※3)。

しかし一方で、桶売り・桶買いのシステムのおかげで成長することができた蔵元もあるようです。
ある文献では、剣菱と下村酒造店(奥播磨)との関係について、以下のように紹介しています。

奥播磨と剣菱の関係は例外であり、下村は今でも剣菱に感謝していると言う。

剣菱が下村酒造店に出した桶売りの条件はかなり厳しかった。米は山田錦を使い、山廃造り。それを二年寝かす。造りの工程では人為的な管理はなるべく排除して、酒が自ら育つままにまかせる。麹造りは、蓋麹か麹箱を使う昔ながらの伝統的な造りを守ること、酛造り、仕込み、醪管理なども、細かい手造りの基準が決められていた。」(※4)



(※1)神戸新聞社会部編『生一本 灘五郷-人と酒と』p.240-242(1982.11 神戸新聞出版センター)
(※2)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.23(2000.4 柴田書店)
(※3)上野敏彦『闘う純米酒 神亀ひこ孫物語』p.29(2006.12 平凡社)
(※4)古川修『世界一旨い日本酒 熟成と燗で飲る本物の酒』p.117-118(2005.6 光文社新書)
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あ~酒臭かった! 31

酒くさコメント 6

ちゅんちゅんちゅん

おはようございます!
ボトルが黒いって
理由があるんでしょうか?
珍しいですよね☆
by ちゅんちゅんちゅん (2014-01-12 08:48) 

skekhtehuacso

ちゅんちゅんちゅんさん、コメントありがとうございます。
黒いボトルは、遮光のためだと思います。
このような300ml瓶はお店のガラス張りの冷蔵庫で保管して販売されることが多いようですが、その際、つねに蛍光灯の光を浴びることになります。
これはお酒にとっては良くないことですので、このような黒いボトルで遮光することで、光による劣化を少しでも防ぐ狙いがあるのではないかと思います。
by skekhtehuacso (2014-01-12 09:28) 

newton

奥播磨と剣菱の関係は知りませんでしたが、奥播磨の下村酒造店のお酒は大好きです。
by newton (2014-01-13 14:52) 

skekhtehuacso

newtonさん、コメントありがとうございます。
こういう記述を見つけることが、お酒の本を読む楽しみの一つだと思います。
私は奥播磨はまだいただいたことがありませんが、いつかいただく際には、蔵元さんにだけではなく、剣菱にも感謝しながらいただきたいと思います。
by skekhtehuacso (2014-01-13 20:49) 

hanamura

いろんな意味で(抽象的で良くない言葉ですがぁ・・・)震災を境にして、灘の酒蔵は変わったと思います。(何を指すかはぁ・・・抽象的にしておきましょう。)全国的には、良かった(こう言っていいの?)気がします。
by hanamura (2014-01-13 21:38) 

skekhtehuacso

hanamuraさん、コメントありがとうございます。
灘の中小蔵がどんどんと淘汰されていくのは忍びないですが、私は、灘がどのように変わろうとも、灘で造られるお酒が美味しければそれでよいと思います。
by skekhtehuacso (2014-01-13 23:54) 

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