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【お酒】673.674.磐乃井 米酒酒 純米酒&大吟醸飲み比べ [03.岩手県の酒]

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磐乃井酒造株式会社
岩手県一関市花泉町涌津字舘72




今日は、岩手県の南部に位置する磐乃井酒造さんのお酒を二種類飲み比べてみたいと思います。
いずれも岩手県のアンテナショップ“いわて銀河プラザ”にて入手したものです。


その前に、磐乃井酒造さんの紹介から。

手元の文献には、磐乃井酒造さんの発足について以下のように記載してありました。
磐乃井酒造は、大正六年、花泉地方の七カ村の百七十五人(現在は二百五人)が株主となり設立された。当時は各地でどぶろくの密造が盛んだったころ。密造の防止を主な目的に、公共性を帯びた地場企業として発足したのである。」(※1)

どぶろくの密造を防止することって、わざわざ酒造会社を設立してまでも成し遂げる必要があるほど重要なことだったのでしょうか?


これは私の推測ですが、当時は国家財政に占める酒税の割合、とりわけいわゆる日本酒に由来する酒税の割合が高かったことから、その徴税を確実にする必要性は今日よりもはるかに高かったのではないかと思います。
また、日露戦争で賠償金を獲得できなかったことも、明治末期から大正期にかけての徴税の強化に拍車を掛けたのかもしれませんね。

推測と言っても、決して何の根拠もないわけではありません。
当時の酒税に関する状況について紹介した記述を読んで推測したわけです。
その記述を、ここで紹介しておきます。

明治二十年の全国の総税収は六千六百万円。このうち二〇%に当たる一千三百万円が酒税だった。五郷(兵庫県の灘五郷のこと;ブログ筆者注記)の酒はこの一割以上を占めている。五郷が納税分割をすると、全国の酒屋が右へならえ・・・・・・。となると二〇%の酒税はさっぱり。政府は予算を組めず、日本国中が上を下への大騒ぎ・・・・・・。こんな予測もなりたつような当時だった。
総税収に対する酒税の比率はそのごさらに高まった。明治三十年は三三%、四十年は二五%。年によって多少の差はあったが、明治期を通じて大体二七、八%といったところだ。酒税以外の財源の大どころは地租(今でいう固定資産税か:ブログ筆者注記)である。明治二十年六四%、三十年四〇%、四十年二七%。この方は年を経るごとに低くなったが、それでも二〇%以上。酒と米(土地)とで日本の財政をささえていたことになる。」(※2)

日本酒の税収は、近代の大正一五年度では、酒税収入全体の八〇%もあったが、現代の二五年度(昭和25年度:ブログ筆者注記)では三八%にすぎず、いっぽうで焼酎とビール、その他の税収が大きく伸びている。」(※3)
日本酒は、平成一五年度には単式焼酎(単式蒸留器で蒸留した焼酎、焼酎乙類あるいは本格焼酎ともいう)、一六年度には連続式焼酎(連続式蒸留器で蒸留した高純度アルコールに水を加えて造る焼酎、焼酎甲類ともういう)、一八年には発泡酒、一九年度にはリキュールと、連続的にほかの酒類にも追い越されてしまい、平成二四年度では第六位の下位に沈み、酒税収入縮小の主要因となっている。」(※4)


今日では国税全体に占める割合は数パーセントに過ぎず、そのうち清酒が占める割合は半分にも満たないようです。
しかし、それでもお酒の醸造は依然として免許制であって、たとえ自家用であっても個人が勝手にどぶろくを造ることは認められておりません。



いかんいかん。
話が完全にそれてしまいました。
それではまずは、純米酒からいただいてみたいと思います。




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米酒酒(まいしゅしゅ) 純米酒
アルコール分 15度以上16度未満
原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)
精米歩合 65%
180ml詰
(以上、ラベルより転記)


純米酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。

お酒の色は、ちょっと着いているのがわかる程度でした。
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杯に注ぐだけで、酒臭い(←ほめ言葉です)香りがフワっとしてきます。
それに、ほんのわずかですが、木香(樽香)のようなものを感じました。

うまみはやや濃いめで、しっかりしています。
醸し出された酒臭い(←あくまでもほめ言葉です)うまみと共に、お米のうまみも感じます。
苦みや雑味はないですね。

酸味はけっこうはっきりしています。
お酒のすっぱさをはっきりと感じました。
刺激やピリピリ感はないみたいです。

甘みはひかえめです。
ほんのわずかに感じる程度でした。


酒臭さ(←くどいようですが、ほめ言葉です)とともにお米のうまみを感じることができる、やや濃醇で旨辛口のおいしいお酒でした。
酸味もあるので、決して飲みやすくはないですが、飲み応えがあっておいしいと思います。
おしゃれなラベルを見て「かわいい~!」なんて思ったら、痛い目にあうことでしょう。
これ以上日本酒離れを加速させないためにも、もっと力強いラベルのほうがよいのではないかと思いました。
蔵元さんにとっては、余計なお世話だろうよ!





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米酒酒(まいしゅしゅ) 大吟醸
アルコール分 15度以上16度未満
原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)・醸造アルコール
精米歩合 50%
180ml詰
(以上、ラベルより転記)


こちらは醸造アルコールが添加されている大吟醸です。
大吟醸ですので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。

お酒の色は、純米酒よりも淡いですね。
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吟香はそれほど強くはありませんでした。
お酒を飲み込んだ後で、フルーティーな香りがかすかに鼻へ抜けていく程度でした。

うまみはやや淡めでした。
こちらは酒臭さがひかえめで、むしろやわらかいうまみを感じました。
ですが、飲んでいるうちに酒臭さをちょっと感じるようになってきました。
苦みや雑味はないみたいです。

酸味は、ややはっきりしていました。
純米酒ほどではないものの、これもお酒のすっぱさが主な酸味でした。
刺激やピリピリ感はないですね。

甘みはこちらのほうがはっきりしています。
でも、それほど強くはなく、表に出で来ないような甘みでした。


お米のうまみに酸味がほどよい、やや淡麗で旨口のおいしいお酒でした。
大吟醸ですが、酸味がほどよく効いていてすがすがしいと思います。



(※1)岩渕公二『岩手の酒蔵』p.36(1998.10 岩手日報社出版部)
(※2)読売新聞阪神支局編『宮水物語-灘五郷の歴史』p.249-250(1966.12 中外書房)
(※3)鈴木芳行『日本酒の近現代史 酒造地の誕生』p.187(2015.5 吉川弘文館)
(※4)(※3)p.189
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あ~酒臭かった! 44

酒くさコメント 4

やなぼー

おっ!岩手!
私の方も、ここのところちょっと岩手ばかりになってます(^_^;)
by やなぼー (2015-09-23 06:24) 

エクスプロイダー

どぶろくの密造ねえ…。そういえば、寿司屋の親方をしてた父の同級生がどぶろくを作ってたなあ。
年末に家族で寿司や鍋を食べに行くと親方が振る舞ってくれました。呑んだのは父だけですが。
その親方も五年前に病気で亡くなって、息子さんが後を継ぎました。寿司屋は震災の津波で流されて今は家の近所に引っ越してやってます。
by エクスプロイダー (2015-09-23 22:13) 

skekhtehuacso

やなぼーさん、私も来月に行く予定です。
by skekhtehuacso (2015-09-23 22:13) 

skekhtehuacso

エクスプロイダーさん、そういう法に触れるようなことは、あまり公言なさらないほうがよろしいのではないでしょうか。
by skekhtehuacso (2015-09-24 23:39) 

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