SSブログ

【お酒】670.関西 本醸造 ひやおろし カップ【追記あり】 [18.福井県の酒]

2618.JPG2619.JPG
片山酒造株式会社
福井県越前市余田町51-18

原材料名/米(福井県産)・米麹(福井県産米)・醸造アルコール
精米歩合/65%
アルコール分/19%
内容量/180ml
(以上、ラベルより転記)



まずは、“関西”という酒銘が気になるところです。
2620.JPG
これについて文献では、以下のように紹介していました。
明治四二年に、それまでの「愛宕」「男山」から酒銘を「関西」と改める。
当時、灘・伏見といった関西地方が、銘醸地といわれていたことから、越前の銘醸地という意味を込め「関西」と名付けた。」(※1)

要するに、パク・・・・・
それ以上言うな!


このお酒ですが、先週末に銀座にある福井県のアンテナショップ“食の國 福井館”で見つけたものです。

店頭には、ひやおろしのカップ酒が10種類ほど並んでいました。
全部入手してもよかったのですが、私の手元にはまだカップ酒の在庫がいくつかあることですし、それにひやおろしという旬のものを買って家で1、2ヶ月も保存しておくのは無粋ではないかと思いました。
そこで、ブログのネタとして使えそうなものを選び、2個だけ買って帰ってまいりました。


ところで、“ひやおろし”って、いったいどういうお酒なのでしょうか?

恥ずかしながら、実は私もその正確な意味を掴みきれておりません。
そこで、手元にあった文献の記述をいくつかご紹介して、その意味を考えてみたいと思います。

貯蔵桶から外気と同温程度に冷めた清酒そのまま樽詰出荷することをいう。灘では9月以降は冷卸が原則であった。」(※2)

一方、ひと夏の熟成を経て、まろやかになった秋口からの日本酒の味わいも、また格別である。新酒の時点ではまだ若さや硬さがある酒も、半年間、貯蔵することによって、カドが取れ、旨味が増してくる。こうした酒は「秋上がり」、または「秋晴れ」といわれる。とくに気温が低下する秋口に、加熱処理をしないで出荷される生詰めの酒は、昔から「冷やおろし」と呼ばれ、酒通の間で高く評価されてきた。」(※3)

江戸時代、春から夏にかけての酒は火入れして出荷した。秋に向かって出荷するものは、涼しさで品質変化が少なくなるので「冷や」で出荷したことから、秋に向かって市場に出回る酒を冷や卸しと呼ぶようになった。」(※4)

貯蔵タンク内の酒の温度と外気温とが同じになった秋頃に出荷される酒のこと。昔の酒は一般に、春先に火入れを行なって貯蔵し、秋になってから火入れをせずに樽詰で出荷された。つまり、出荷前の火入れをしていないという意味で、この名が付けられたという。ひと夏熟成させることで新酒の荒々しさが消え、丸みのある酒質になる。」(※5)


これらの記述から推察するに、ひやおろしを名乗るお酒は、以下のことを満たしているのだと考えます。
(1)冬に仕込んで春にしぼり(寒造りであること)、ひと夏のあいだ貯蔵していること
(2)秋の、それも貯蔵している酒の温度と外気温とが同じになった頃に出荷すること
(3)生詰(出荷前に火入れをせずに瓶詰めすること)であること
(【追記】その後、(3)についてはあくまでも便宜的理由によるのではないかと考えました。その理由についてはこちらをご覧ください。)


これらのことを踏まえて、このお酒について検討してみたいと思います。

ラベルには、製造年月が平成27年9月と表示されています。
2621.JPG
これは「当該清酒を販売する目的をもって容器に充てんし密封した時期」ですから(※6)、このお酒は9月まではタンク内で貯蔵されていたことになります。
このお酒が寒造りで造られたかということ、また9月は暦の上では秋とはいえまだ暑いので、外気とお酒とが同じ温度になっていたかどうかということはこの表示からはわかりませんが、そういう細かいことを指摘するのはやめておきましょう。
それ故、上記(1)(2)はこれでクリアしていると考えてよいものと思います。

また、このお酒には“生詰・要冷蔵”と表示されています。
2622.JPG
これはまさに、上記(3)を満たしているということでしょう。
なぜならば、生詰のように「製成後一切加熱処理をしないで製造場から移出する清酒」については、「「要冷蔵」、「冷蔵庫に保管して下さい。」、「冷やしてお早めにお飲みください。」等の消費者及び流通業者の注意を喚起するための表示」を「保存若しくは飲用上の注意事項」として表示する必要があるからです(※7)。


*******************************************
【2015/09/30追記】
生詰について「製成後一切加熱処理をしないで製造場から移出する清酒」に該当すると書きましたが、これは誤りでした。(これに該当するのは生酒のみでした。)
生詰の場合は、「製成後一切加熱処理をしないで製造場から移出する清酒」に該当せず、よって「要冷蔵」などの「保存若しくは飲用上の注意事項」を表示する必要はないと考えます。

清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)5(6)の生貯蔵酒の定義には、「生貯蔵酒の用語は、製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、製造場から移出する際に加熱処理した清酒である場合に表示できるものとする。」とあります。
これから判断するに、製成後とは完成後(私は勝手にそう思っていました。)ではなくて、上槽後(お酒をしぼった後)という意味であろうと考えられます。
ということは、生詰は製成後に一回火入れをしていますので、この「製成後一切加熱処理をしないで製造場から移出する清酒」には該当しないことになります。

私の認識が誤っていたことをお詫びして、ここで訂正させていただきます。
申し訳ございませんでした。
*******************************************



これらのことから推察するに、このお酒は“ひやおろし”を名乗るにふさわしいものなのでしょう。


大変長らくお待たせいたしました。
そろそろいただいてみたいと思います。
本醸造ですが、冷やして販売されていましたので、冷蔵庫で冷やしたものをいただくことにいたします。

お酒の色は、ほとんどわからないくらいです。
2623.JPG


アルコール度数が高めですが、アルコールの香りは目立ってはいませんね。

うまみはやや淡めですが、しっかりしています。
酒臭さはなくて、お米のうまみを感じます。
口にひろがるのではなくて、ピンと筋が通ったようなうまみです。
それにキレがよく、スッと引いていきます。
苦みや雑味はまったくないですね。

酸味はひかえめでした。
ほんのわずかにさわやかさを感じる程度です。
刺激やピリピリ感はありませんでした。

甘みはひかえめです。
ほとんど感じないくらいでした。


シャープなうまみを感じることができる、やや淡麗で辛口のおいしいお酒でした。
苦みや雑味がまったくなく、それに酸味がひかえめですので、吟醸香のない吟醸酒のような味わいでした。
はたしてこれが、ひと夏を越えて丸くなった効果なのでしょうか?
いずれにせよ、おいしいお酒でした。


(※1)北陸電力企画『北陸酒紀行』p.85(2002.3 橋本確文堂)
(※2)灘酒研究会編『改訂 灘の酒 用語集』p.426(1997.10 灘酒研究会)
(※3)松崎晴雄『日本酒をまるごと楽しむ!』p.14(2007.1 新風舎)
(※4)篠田次郎『日本酒ことば入門』p.203(2008.7 無明舎出版)
(※5)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.184(2000.4 柴田書店)
(※6))清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)3(2)
(※7)清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)3(3)、酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達第86条の6 酒類の表示の基準 2(3)ハ
あ~酒臭かった!(45)  酒くさコメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

あ~酒臭かった! 45

酒くさコメント 2

エクスプロイダー

福井県は西日本に入ると言えば入るが・ ・・。

ひやおろしのカップ酒は他にも有るんですね。
ひやおろしのカップ酒だとワンカップ大関の「秋あがり」しか知らないので。
by エクスプロイダー (2015-09-19 21:05) 

skekhtehuacso

エクスプロイダーさん、そういう野暮なことはいいなさんな。

福井の一連のひやおろしカップは、おそらく企画モノでしょう。
by skekhtehuacso (2015-09-20 20:26) 

酒くさコメント、書いちゃう!

お名前:[必須]
URL:
酒くさコメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0