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【お酒】710.豊盃(ほうはい) 特別純米酒 300ml [02.青森県の酒]

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三浦酒造株式会社
青森県弘前市大字石渡五丁目1番地1

アルコール分 15度以上16度未満
原材料名 米(国産)・米麹(国産米)
精米歩合 麹米55% 掛米60%
300ml詰
(以上、ラベルより転記)




このお酒の“豊盃(ほうはい)”という酒銘は、お米の名前から来ているようです。
文献では「銘柄は、青森県が開発した酒造米「豊盃米」から。」(※1)と紹介されておりました。

しかもこの豊盃という酒米は、「短稈で多収の華吹雪の登場によりすたれたが、秋田県(原文ママ)の蔵元、三浦酒造が復活させた。」のだとか(※2)。

またある雑誌では、三浦酒造さんについて「この蔵だけが使う独自の豊盃米で酒を醸す。」(※3)と紹介していました。
それ故、上記の“秋田県”という記述は、おそらく青森県の誤記ではないかと思います。
すなわち、一旦すたれた豊盃米を復活させたのは、他ならぬ今日いただくこのお酒の蔵元である三浦酒造さんであると考えられます。

豊盃米については、調べた限りのことをこの記事の末尾でまとめておきましたので、ご覧ください。


今日いただくこのお酒は、特別純米酒です。
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特別純米酒であれば、普段ならばぬる燗でいただくところです。
しかし、ある雑誌では、このお酒を「りんごの産地だからというわけではないですが、もぎたて完熟りんごの風味や爽やかな酸味が。特別純米酒なのに、瑞々しく清らかというところに、ファンは魅了されるのでは。冷やして飲むのに最適な特別純米酒です。」(※4)と紹介していました。

そういうことでしたら、私も素直に冷やしていただきたいと思います。
オマエは権威に弱いんだな。
お酒の色は、わずかにわかる程度でした。
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一口含んで喉を通すと、フルーティな香りが鼻へ抜けていきます。
たしかにこれは、冷やしてこその香りでしょう。

うまみはやや淡めです。
酒臭さはなくて、お米のうまみそのものだと思います。
吟醸酒のような苦みをほんのわずかに感じます。

酸味はややはっきりしています。
角のないすっぱさを少し感じます。
刺激やピリピリ感は全くありません。

甘みはややはっきりしていますが、前に出て来ない甘みです。


フルーティな香りとお米のうまみとを楽しめる、やや淡麗で爽快やや甘口のお酒でした。
上記で紹介した記述のように、この香りと酸味とを“もぎたて完熟りんご”と形容することは、たしかに当を得た表現でしょう。
味に角やクドさがなく、雑味がなくてきれいな味わいで、しかも甘みがちょっとあります。
そのためか、とても飲みやすくてスイスイと行けてしまいます。
香りは別として、この味わいは麒麟山の特別本醸造ときかぜに似ているように思いました。

ですが、私の好きな味わいとはちょっとちがうな。
オマエは安酒で十分だってことだろ!





★☆豊盃米について★☆

(1)育成の経緯

青森県では、豊盃が育成される前は“古城錦”という酒米を奨励品種としていたそうです。
しかし、古城錦には性質や栽培に問題があり、このことが豊盃の育成へとつながったそうです。
このことについて、文献では以下のように紹介していました。

本県では既に、酒造好適品種として「古城錦」を奨励に移していたが、「もと米」として優れた特性を有してはいるものの、栽培的には稈が伸びやすく、耐倒伏性が弱く、熟期が「レイメイ」より遅く、多肥栽培に不適当である等の問題が残されていた。また機械化の普及に伴ない、「古城錦」に代わる「レイメイ型」の強稈多肥多収な酒造好適品種の育成が強く要望されていた。」(※5)

酒造好適品種「豊盃」は「古城錦」に代る早熟、短稈で、耐肥性の優る、多収性品種の育成を目的として、1967年に「青系62号(古城錦)」と「レイメイ」を交配し以後選抜固定をはかり、場内および現地において試験を継続してきた。1976年に「古城錦」に優る特性を有する品種として青森県の水稲奨励品種に採用された。」(※6)


(2)“豊盃”という名称

豊盃という名前は、津軽地方に伝わる民謡“ホーハイ節”に由来するそうです。

豊盃(ほうはい)はゆたかなさかずきということである。また古くは津軽為信公が北畠氏との戦いで苦戦沈痛の折、民百姓が誰ともなく唄った歌がホーハイ節であり、これに為信公自ら笑い、勇み立って意気大いに上がり勝利への道を切り開いたという、由緒ある津軽民謡にも通じる。ホーハイ節のごときユーモア(笑いと酒)と為信公の勝利(力強さと発展)にあやかり、津軽酒米の切札として命名した。」(※7)


(3)なぜ衰退したのか?

本文で紹介したとおり、豊盃はその後栽培されなくなり、それを三浦酒造さんが復活させたそうです。
この点、私は、この衰退と復活とについて触れている文献を見つけることができませんでした。
それ故、今回は、衰退の理由を正確に紹介することができません。

一方で、上記と同じ文献では、豊盃を栽培する上での制約がいくつか紹介されておりました。
これは私の推測ですが、こういった制約が栽培上の足かせになってしまったのではないでしょうか?
しかし、私には農業の知識がまったくないため、これらの制約が実際に栽培上の足かせになるのかどうか、正確なところはわかりません。

栽培適地は品質優先の見地から、津軽中央地帯の山間部を除いた地帯、および南部平野地帯の一部に限定される。」(※6)

6. 適地並びに栽培上の注意点
1. 適 地
津軽中央地帯の山間地を除いた地域、および南部平野地帯の一部
2. 栽培上の注意
(1) 酒米の特性である心白と大粒性を維持するため、種子は毎年更新する。
(2) 耐冷性はあまり強くないので、水口への栽培は避け、気温の寒暖に応じた周到な水管理をする。
(3) いもち病抵抗性はレイメイよりやや弱いので、適期防除を行なう。
(4) 強稈で倒伏抵抗性は古城錦よりかなり強いが、極多肥栽培は米質を抵下(原文ママ)させるので、施肥量はレイメイより少なくする。」(※8)

また、本文で紹介したとおり「短稈で多収の華吹雪の登場によりすたれた」(※2)とのことでしたが、この「昭和61年に登場した「華吹雪」は酒造好適米の中でも最大級の大粒品種といわれ」ているそうです(※9)。
この短稈で多収、かつ大粒の華吹雪は、もしかしたら豊盃のように栽培上の制約が厳しくはないのでしょうか?


(※1)山同敦子『愛と情熱の日本酒―魂をゆさぶる造り酒屋たち』p.316(2011.3 ちくま文庫)
(※2)副島顕子『酒米ハンドブック』p.65(2011.7 文一総合出版)
(※3)dancyu 2014年3月号 p.17(プレジデント社)
(※4)pen 2013年12月1日号(No.349)p.56(友田晶子監修『おいしい日本酒。』記事内 阪急コミュニケーションズ)
(※5)工藤哲夫『酒米新品種「豊盃」の解説』p.551(農業技術 31巻12号 1976.12 農業技術協会)
(※6)小野清治ほか8名『水稲新品種「豊盃」について』p.21要約部分(青森県農業試験場研究報告 通号22 1977.3 青森県農業試験場)
(※7)(※5)p.553
(※8)(※6)p.33
(※9)松崎晴雄『日本酒のテキスト 2 産地の特徴と造り手たち』p.32(2003.11 同友館)
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あ~酒臭かった! 46

酒くさコメント 4

toshi

熱燗もいいですが、冷やして飲む酒の方が好きです。
コメント、ありがとうございました。
by toshi (2015-11-04 02:42) 

エクスプロイダー

豊盃は三度程呑んだ事が有りますが「ん」と言う普通酒と「弘前のさくら」と言う春限定の酒ですが両方とも豊盃米は使って無いのでいつか豊盃米を使った酒を呑みたいですね。
by エクスプロイダー (2015-11-04 21:14) 

skekhtehuacso

toshiさん、アツアツのお鍋をいただきながら冷酒をキュッといただくのもいいですね。
このお酒は香りがあって、たしかに冷酒でいただくのに向いていると思いました。
by skekhtehuacso (2015-11-04 22:57) 

skekhtehuacso

エクスプロイダーさん、私は豊盃のことは名前以外はほとんど知らず、蔵元さんのWebsiteで種類を確認することぐらいしかできませんでした。
確認した結果、豊盃にもいろいろと種類があって、必ずしも豊盃米を使用したものだけではないことがわかりました。

私は、んと上撰を、弘前の居酒屋でいただきました。
いずれもおいしいお酒でしたが、どちらかというと、んのほうが好みかも知れません。
by skekhtehuacso (2015-11-04 23:00) 

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