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《焼酎》22.あなたにひとめぼれ いも 180ml [9945.宮崎県の焼酎]

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株式会社都城酒造
宮崎県都城市乙房町2887番地1

焼酎乙類
●原材料名:さつまいも・麦・米(国産)・コーンスターチ・米こうじ(タイ産・国産)・麦こうじ
●アルコール分:20%
内容量:180ml
(以上、ラベルより転記)




都城酒造さんの焼酎は、これまでに米焼酎のあなたにひとめぼれ こめ 180mlをいただいております。
今日いただくこの焼酎には、“いも”と表示されています。
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ということは芋焼酎なのでしょうけれど、原材料には麦やら米やら麦こうじやらと、芋以外の材料も表示されておりました。
さらにはコーンスターチ(トウモロコシから抽出し精製したでんぷん)まで使用されているのだとか。
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だからでしょうか、お値段はいたって安価でした。
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どちらかはわからないのですが、この焼酎に該当する記載は上か下かのいずれかでしょう。


ところで、芋以外の材料を使用していても、芋焼酎を名乗るのことは可能なのでしょうか?

日本酒造組合中央会が定めた公正競争規約によれば、“芋焼酎”のような冠表示特定の原材料の使用を強調する表示は、その原材料が(1)使用されている原材料の全部又は大部分(50%以上)を占めるときや、(2)使用比率が使用原材料のうち最大であるとき、あるいは(3)原材料の使用比率を施行規則の定めるところにより冠表示に併記して表示するとき、のいずれかに該当する場合には可能なのだそうです。(単式蒸留しようちゆう製造業の表示に関する公正競争規約4条(1)イロハ、同施行規則3条、不当景品類及び不当表示防止法31条1項)

ということは、今日いただくこの芋焼酎は、きっと上記(1)または(2)のいずれかに該当するのでしょうね。


それよりも、今日はぜひとも触れておきたいことがあるのです。

この焼酎には、焼酎乙類と表示されております。
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一方、これまでにいただいた焼酎の多くには、本格焼酎と表示されておりました。
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今日いただくこの焼酎には、なぜ本格焼酎ではなくて、焼酎乙類と表示されているのでしょうか?


結論から言うと、コーンスターチは本格焼酎の原材料として認められていないものの、焼酎乙類、すなわち単式蒸留焼酎の原材料としては認められていることから、この焼酎は焼酎乙類を名乗っているのではないかと、私は判断させていただきます。

本格焼酎と焼酎乙類とは、どのように異なるのでしょうか?
このことを理解するためには、まず“焼酎”という定義にはどのようなものが含まれているのかについて理解する必要があります。

ということで、いつもの如くここから長い長いウンチクたれたれが始まるところなのですが、今日はそれを後回しにして、まずはこのコーンスターチを使った芋焼酎をいただいてみたいと思います。



まずは、生(き)でちょっとだけ。
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華やかな香りが豊かで、口の中でふわっと広がって鼻へと抜けていきます。
芋っぽい風味もありますが、これはややひかえめです。
それに、穀物由来と思われる穏やかでふっくらとした香ばしさが少しあるみたいですね。
酸味や甘みはひかえめです。
アルコール香が少しあって、それにちょいピリでした。


次に、お湯割りで。
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これは香りがかなり華やかですね。
芋っぽい風味やふっくらした香ばしさは少し薄まったようですが、それでもその存在ははっきりしています。
それに、お湯割りにすると酸味、とくにさわやかさが少し出てきたようです。
甘みはひかえめです。
また、軽い苦味もかすかに出てきたようです。


最後に、残ったものをロックで。
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ロックにすると、トロッとした口当たりが出てきましたよ。
香りは全体的に引きますね。
逆に甘味はかすかではあるものの、その存在がわかるようになりました。
また香りが引いたせいか、ふっくらとした香ばしさや苦味がよくわかるようになりましたよ。


お湯割りだと香りが豊かで、ロックだと香ばしさがよくわかる、おいしい焼酎でした。
口あたりが軽めで、味わいの芯というか腰というか、柱になる部分は弱いようです。
でも香りが豊かで、それにじっくりと味わうとふっくらした香ばしさも感じることができて、面白い焼酎だと思いました。
このお値段でここまで楽しませてもらえるのでしたら、満足ではないでしょうか。





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“連続式蒸留焼酎(焼酎甲類)”、“単式蒸留焼酎(焼酎乙類)”、“本格焼酎”について


(1)連続式蒸留焼酎(焼酎甲類)と単式蒸留焼酎(焼酎乙類)

“焼酎”という名称の酒類には、連続式蒸留焼酎(焼酎甲類)と単式蒸留焼酎(焼酎乙類)とがあります。

まず、連続式蒸留焼酎とは、廃糖蜜(さとうきびの搾りかす)などに酵母を添加して発酵させて、それを連続式蒸留機にかけてアルコール度97%~99%の蒸留限界近くにまで精製したのち、加水して度数36%未満(製品化する際には概ね25~20度程度)にまで下げたものです。
それ故、連続式焼酎の成分はほぼアルコールと水とのみで、無味無臭であることが特徴です。
この連続式蒸留焼酎の代表例ともいうべき製品は、酒屋さんで4リットルのデカいペットボトルで販売されている焼酎ではないかと、私は思います。

一方、単式蒸留焼酎は、芋、米、麦、そばなどの様々な原材料を用いて発酵させたもろみを単式蒸留器で一度だけ蒸留し、それを加水して度数45%未満(これも製品化する際には概ね25~20度程度)に下げたものです。
単式蒸留焼酎の場合には一度しか蒸留しないことから、原材料に由来する風味が蒸留後の製品中に残存し、独特の味わいを作り出しているのです。
それ故、単式蒸留焼酎の場合は、“芋焼酎”、“米焼酎”、“麦焼酎”などのように、焼酎という名称の直前に原材料を明示していることが多いのではないでしょうか。


ところで、平成18年の法改正以前は、連続式蒸留焼酎は“焼酎甲類”と、そして単式蒸留焼酎は“焼酎乙類”としてそれぞれ規定されておりました。
ですが、そもそもなぜ、連続式蒸留焼酎が“甲類”で、単式蒸留焼酎が“乙類”なのでしょうか?

これについては、連続式蒸留焼酎のほうが大量生産が可能で税収額が多かったことによるのだとか。
このことについて、文献では以下のように触れられておりました。
明治の後半34年ですが、ドイツから導入された連続式蒸留器による原料用アルコールを希釈した焼酎が戦後焼酎甲類に分類されました。伝統的な日本の蒸留酒である焼酎がなんと焼酎乙類に分類されたわけです。世の中一般に成績評価が甲・乙・丙・丁という時代に、甲と乙に分類された。これは大変なハンディキャップです。伝統性文化性という面からではなくて、税収がどちらが大きいかということで甲と乙に決められたようです。さすが酒税法だなということを改めて認識せざるを得ないと思います。」(※1)

なお、連続式蒸留焼酎は平成18年改正以前の名称である“焼酎甲類”を、単式蒸留焼酎は同じく従前の名称である“焼酎乙類”を、それぞれ「一般に慣熟した呼称」として名乗ってよいことになっております(酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律86条の5、同施行令8条の3第4項、同施行規則11条の5)。
それ故、連続式蒸留焼酎は焼酎甲類を、単式蒸留焼酎は焼酎乙類を、今でもそれぞれ名乗ることができるのです。


(2)焼酎乙類と本格焼酎

単式蒸留焼酎(焼酎乙類)の中には、“本格焼酎”を名乗るものも少なからず存在します。
なぜ、単式蒸留焼酎(焼酎乙類)ではなくて、本格焼酎なる名称を名乗るのでしょうか?
これを理解するためには、単式蒸留焼酎(焼酎乙類)の規定の仕方に着目する必要があるのです。

単式蒸留焼酎(焼酎乙類)は、その原料に関して他の酒類と区別する上で必要となる制約に抵触しないかぎり、どのような材料を用いて製造してもよいことになっているようです(酒税法3条10号へ、同10号柱書、同9号イ~二)。
(たとえば、麦芽(ウィスキーと区別)や果実(ブランデーと区別)、糖分を含む物質(ラムと区別;ただし黒糖焼酎はOK)などはダメ。)
このことは、酒税法3条10号イ~ホで穀類、芋、麹、焼酎粕、黒糖などを列挙したあとで、同号へで「イからホまでに掲げる酒類以外の酒類でアルコール含有物を単式蒸留機により蒸留したもの」という包括的規定があることからわかります。

この制度については、文献に以下のような記述がありました。
 現在の焼酎乙類の定義ですけれども、これはアルコール含有物を蒸留したものを、連続式蒸留器以外の蒸留機で蒸留したものの中から、ウィスキーだブランデーだ、ウォッカだジンだという固有の製法基準を持ったものを除いたものということになっています。
 かつて日本には蒸留酒というと焼酎しかなかったわけですから、当然のことと言えば当然のことかもしれませんが、ウィスキーが入ってくる、ブランデーが入ってくる、ウォッカが入ってくる、その都度それぞれの固有の製法が規定されていきました。それ以外のものは全部焼酎だという非常に消極的規定のあり方です
 焼酎甲類のほうが、逆に連続式蒸留器で蒸留したものという明確な規定がある分、こういう言い方をすると失礼かもしれませんが、まだました。乙類については連続式蒸留器以外の蒸留器という規定になっている。まさに蒸留酒の中の残り物の中の残り物が焼酎乙類だというような規定になっているわけです。」(※2)


一方、本格焼酎は、単式蒸留焼酎(焼酎乙類)のうち、米焼酎(全麹造りを含む)、麦焼酎(同)、芋焼酎、粕取(酒粕)焼酎、奄美の黒糖焼酎のほか、穀類又はいも類、これらのこうじ、水及び国税庁長官が定めた49品目の原料を用いて発酵させたもろみを単式蒸留器にて蒸留した焼酎に限定されております。(酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行規則11条の5、酒税法3条10号イ~ホ、同施行令4条の2第2項、同施行規則3条の2、種類の表示を本格しようちゆうの呼称によることができるしようちゆう乙類の原料を定める件(平成14年10月28日国税庁告示第7号)

要するに、単式蒸留焼酎(焼酎乙類)のうち、特定の原料のみを用いて造られたものだけが本格焼酎を名乗るのことができるのであって、すべての単式蒸留焼酎(焼酎乙類)が本格焼酎を名乗ることができるわけではないのです。
(焼酎乙類>本格焼酎)


これらのことをふまえて、今日いただいたこの焼酎を検討します。
この焼酎の原材料には、コーンスターチが含まれております。
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しかしコーンスターチ、すなわちトウモロコシから抽出し精製したでんぷんは、本格焼酎の原料として規定されておりません。
それ故、包括的規定を有する焼酎乙類には含まれるものの、本格焼酎には該当しないことから、本格焼酎を名乗ることができないのではないかと、私は考えます。


(3)なぜ、こんな制度になっているのか?

単式蒸留焼酎(焼酎乙類)という定義の中に、なぜ本格焼酎という定義が含まれているのでしょうか?

それはどうやら、上記(1)で紹介した甲類に対する“乙類”という名称を焼酎業界が“劣っているもの”と評価して、これを払拭しようとして、あるいは上記(2)で紹介した焼酎乙類の消極的規定のあり方を嫌って独自性を確立するために、あらたに本格焼酎という定義を定めることを国に対して求めた結果なのだとか。
このことについて、文献では以下のように紹介されておりました。

 不幸なことに昭和二十年ごろまでの学業成績簿が、甲・乙・丙・丁・戊の五段階評価であったため、乙類焼酎は、甲類焼酎より低級なものと一般概念を形成する結果になった。この不当な評価を払拭するため、昭和四十六年から、乙類焼酎を本格焼酎と表示するようにはなったのだが、酒税法上は今も甲類・乙類に分類されたままである。」(※3)

 どういう原料を使おうと、どういう造り方をしようと、他の蒸留酒の領域を侵さなければ、すべて焼酎乙類であるわけです。ただ、焼酎乙類とは何かという法的根拠が全くない。将来にわたって他の酒類と対等に競争していくうえには、このような消極的定義ではなくて、自らの姿をきちんと説明できる、積極的定義が必要であるという考え方が業界の中に広がってまいりました。長期にわたって国民的信頼を得続けていく、そしてさらに国際的な評価を得ていくためには、しっかりとしたカテゴリーを確立して、本格焼酎とは何かということを消費者に明確に訴える法令の根拠をもたなければならないという方向に、業界の考え方が向かったわけです。」(※2)


(※1)森永和男(株式会社杜の蔵代表取締役)『焼酎乙類から本格焼酎へのイメージ転換』(第43回日本醸友会シンポジウム.4)p.52(醸造論文集 59巻 p.51-59 2004 日本醸友会)
(※2)(※1)p.54
(※3)鹿児島県本格焼酎技術研究会『かごしま文庫(62) 鹿児島の本格焼酎』p.28(2000.6 春苑堂出版)
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あ~酒臭かった! 33

酒くさコメント 6

タンタン

おはようございます。
焼酎乙類=本格焼酎かと思ってましたけど、細かい規定で分かれてて微妙に違うんですね。
by タンタン (2017-11-07 05:40) 

エクスプロイダー

コーンスターチが入ってるって、ビールみたい。

都城酒造のサイトを見たらコーンスターチが入っている焼酎がちらほら見かけたから都城酒造なりの作り方何でしょうね。
by エクスプロイダー (2017-11-07 20:49) 

skekhtehuacso

タンタンさん、私も調べるまで知りませんでした。
大事なことは、みな酒(焼酎)が教えてくれるようです。
by skekhtehuacso (2017-11-07 22:21) 

skekhtehuacso

エクスプロイダーさん、安く造りつつ、かつ風味をしっかりと残すためではないでしょうか。
今後、甲乙混和をいただいてみて、どちらの手法が好ましいのか判断したいと思います。
by skekhtehuacso (2017-11-07 22:23) 

美美

いままであまり気にしませんでしたが
焼酎乙類と本格焼酎に違いがあるとは(^^;
ちょっと飲み比べてみたくなりました。
by 美美 (2017-11-07 22:45) 

skekhtehuacso

美美さん、私もこの焼酎に出会うまで気にしたことがありませんでした。
詳しく調べてみて、初めてわかったわけです。
コーンスターチを併用すると、香りは残るものの軽快な味わいに仕上がるようでした。
by skekhtehuacso (2017-11-08 21:16) 

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