【お酒】５６．大七カップ [07.福島県の酒]
大七酒造株式会社
福島県二本松市竹田1-66
原材料名：米（国産）、米こうじ（国産米）、醸造アルコール
アルコール分15度
180ml詰
（以上、フタより転記）
このお酒ですが、カップ酒であるにもかかわらず、箱に入れて売られていました。
この箱には、「光線から中のお酒を守るため」であると書いてありました。
「日本酒は日光、とくに紫外線に当たると変色したり異臭を発生しやすい」(※1)ようですので、これは理にかなったことであると思います。普通酒のカップ酒を一個ずつ箱に入れて丁寧に販売していらっしゃるのは、大七酒造さんぐらいではないでしょうか。
この箱には「麹米（総米の約20%）はすべて酒造好適米の五百万石を用いる贅沢さ。そして、（中略）アルコールも米を原料とする米アルコールのみを用いています。」と記載されています。
普通酒であるにもかかわらず、麹米に酒造好適米を使用することは、これは贅沢なこだわりだと思います。
しかし、醸造用アルコールはいわゆる焼酎甲類に相当するものであって、原料が米であれ廃糖蜜（さとうきびの搾りかす）であれ、連続蒸留でアルコール分99.9%まで精製しているはずですので、生産される製品に差異はないと思います。
私の知識レベルでは、米アルコールを用いることで品質にどのような違いが生じるのか、見当がつきません（もしこの米も全量が国産米使用ということでしたら、消費者に対する原料情報の公開という意味では、有意義なことだと思います）。
また、大七酒造さんは、全量を生酛造りで造っていらっしゃるようです(※2)。
生酛造りについては、ある文献では速醸酛に比べて個性があると評し、その理由として「数種の乳酸菌による乳酸発酵や、酵母による発酵など、複雑な発酵による生産物、とくに香りに複雑さが生まれ、いわゆる重厚な香味、自己主張のある酒質となるからであろう。」と記されています(※3)。
このカップ酒も、もちろん生酛造りです。
そんなこだわりのカップ酒を、今日もぬる燗でいただきます。
アルコールの香りとともに、酸味を感じました。
刺激はありませんが、しっかりした酸味で、辛味を生じさせています。
この酸味は、生酛造りによって生じた乳酸に由来するものでしょうか。
うまみはありますが、それほど深くはないようです。
うまみよりも、酸味のほうが際立っています。
これは私の主観ですが、このうまみは月桂冠上撰カップに似ているような気がします。
甘みはわずかに感じる程度です。
酸味によってキリリと辛口に仕上げられたお酒でした。
私は、生酛造りによるならば、もう少しうまみが深くなるのかと勝手に思っていました。
しかし、上記(※3)の引用によれば、「重厚な香味」になる旨の言及はありますが、うまみについては言及がありません。
生酛造りは、うまみの重厚さとは関係ないのでしょうか。
そういえば、伝統的な造りにこだわる神亀酒造さんは、生酛ではなく速醸酛を採用していました。
その理由を思い出し、それも一理あるような気がしました。
【追記】
その後、ある雑誌を読んでいたところ、「生酛はあくまで酒母造りの手法だから濃い味になる要因とは言い切れない。」との記述に出会うことができました。
こちらにもう少し長く引用してありますので、興味がおありの方はお読みください。
(※1)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.149（2000.4 柴田書店）
(※2)大七酒造Website
(※3)秋山裕一『日本酒』p.102（1994.4 岩波新書）
2020/07/07
また飲んでみました。
アル添のこだわりについて、ご指摘がありました。
おっしゃる通り、工業用アルコールになった以上、
自己満足でしかないと思われます。
ですが、嗜好品ですから、自己満足も立派な「こだわり」になりうると思います。
大七さんの、その部分すら明解にされる意図が何なのか、
さらに掘り下げられると面白いですよね。
大七さんは扁平精米で有名です。
とある酒のイヴェントで、そのことを誉めて、できたら一本提供されたいなと思ったら、
こともあろうにその扁平精米をしてくださったおコメ自体を頂いて、
閉口した思い出があります（爆）
by 式守錦太夫 (2013-10-31 01:40)
式守錦太夫さん、コメントありがとうございます。
超扁平精米されたお米はおいしかったでしょうか。
それとも、でんぷん質ばかりでうまみ成分がなくて、おいしくないのでしょうか。
by skekhtehuacso (2013-10-31 22:32)
東北本線のキオスクで、よく買います！好きです！
by hanamura (2013-11-03 16:00)