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【お酒】203.キンシ正宗 銀閣 辛口 荒武者 300ml [26.京都府の酒]

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キンシ正宗株式会社
京都市伏見区新町11丁目337-1

アルコール分15度以上16度未満
原材料名 米(国産)・米麹(国産米)・醸造アルコール
300ml詰
(以上、ラベルより転記)


京都伏見の蔵元さんのお酒です。

キンシ正宗さんは、“液化仕込み”を導入していることを公言なさっているようです。
ある文献によれば、「同社はこの最新の酒造り一貫システムを平成7年に導入し、質のよい酒を年間通じて造り続けている。」と紹介しています(※1)。

液化仕込みとは、お米を蒸さずに、「白米を、あらかじめ液化酵素によって液体(融米)化してから発酵タンクに仕込み、そこに麹と酵母とを加えて通常通りに発酵させる方法」とのことです(※2)。
液化してから仕込むことで、「もろみの初期から物料の流動性が高いため、もろみ管理が容易であり、酒化率(出来た酒の使用原料に対する割合)が高いなどのメリットがあるため、比較的廉価な日本酒製造で普及し始めている。」そうです(※3)。

このような近代的なシステムで仕込んでいることを公言するということは、逆に、伝統的な酒造りを放棄していると思われて、消費者に対してマイナスイメージを抱かせてしまう可能性もあると思います。
実際に、大手蔵のほとんどが液化仕込みのような近代的なシステムを導入しているはずなのに、それを宣伝文句に使っているところはありません(かつてはいくつかありました)。
それでも公言するということは、キンシ正宗さんは、自社のシステムとその成果であるお酒の味とに自信をお持ちなのでしょう。


前置きが長くなってしまいました。
今日いただくこのお酒は普通酒ですので、きっと液化仕込みで造ってあるのだと思います。
そんなキンシ正宗さんの酒造り一貫システムで造られた(と思われる)このお酒を、今日もぬる燗でいただきます。


辛口を称するだけあって、酸味が強めです。
ややピリッとしますが、気にはなりません。
すっぱさはひかえめで、スッキリした酸味です。

うまみは淡めです。
酒臭さ(←ほめ言葉です。)は感じますが、淡いのでひかえめです。
一方で、雑味がまったくありません。
これは液化仕込みのなせる業でしょうか。
この点については、後で触れておきます。

甘みはほとんどありません。
そのせいでしょうか、コクのない味に仕上がっています。
ですが、その反面、酸味が目立ってキリッとしています。


強めの酸味と、淡いうまみとが特徴の、淡麗辛口のお酒でした。
甘みがないので、コクがなくてキリッとした感じになっています。
しかし、雑味がないので、澄んだ感じがします。

このお酒は、お酒の味を楽しむというよりも、むしろ食中酒でしょう。
油っぽい料理にはよく合うと思います。



☆★液化仕込みで造ったお酒の味について☆★
    (これは私の推測です。)

ところで、液化仕込みで造ったと思われるこのお酒の味は、雑みのない澄んだ味わいでした。

液化仕込みについて書かれたある文献には、「液化仕込法では、仕込みに使用される掛米は事前に液化が終了しているので、(中略)麹歩合を減少させても適正量のグルコアミラーゼ(糖化酵素のこと:ブログ主注記)が存在すれば、バランスのよい発酵が可能である」「麹歩合を10%と少なくしても、(中略)アルコール生成は順調であり、十分に発酵が進む」とありました(※4)。

すなわち、液化仕込みは、従来の酒造りと比べて、麹米の割合を下げることができるということでしょう。


一方で、別の文献には「総破精麹の問題点としては、(中略)タンパク質も核酸もビタミンも各種の代謝産物も皆多くなるということですね。ですから、総破精麹では酸の出方が多くなるし、酒の味が濃く、くどくなりがちだ、ということです。」という記述がありました(※5)。

一般に、吟醸酒を造るときに使う麹は、突き破精型の麹(お米の内部へ突き進んでいく麹)がよく、総破精型の麹(お米の表面にびっしりと生える麹)ではダメだと言われているようです。
理由はいくつかあるようですが、その一つに、上記文献で示されているとおり「酸の出方が多くなるし、酒の味が濃く、くどくなりがち」ということがあるようです。

もっとも、総破精型の麹は「糖化力が強い」ので、「普通酒には総破精型の麹が使われる」ようです(※6)。


上記のことから、以下のⅠⅡのことがわかります。
Ⅰ:液化仕込みでは、麹の使用量が少なくてすむ
Ⅱ:普通酒で使う総破精型の麹は、酸の出方が多くなるし、酒の味が濃く、くどくなりがち


ということは、これは私の推測ですが、もしかしたら、液化仕込みで作ったお酒は、雑味の原因となる麹の使用割合が少ないことから、お酒の味に雑味が少ない=比較的澄んだ味わいになりやすいということが言えるのではないでしょうか。


事実、このキンシ正宗さんのお酒は、普通酒でありながら、雑味のない澄んだ味わいでした。
一方で、今までいただいたお酒の中には、伝統的な手法で造られているものの、酸味の刺激が強かったり、味がくどかったりしたものがありました。

どちらがよいのか、それは一概には言えないと思います。
世の中には、いろいろな造り方のお酒があって、それぞれがちがった味を醸しだしています。
それらのちがいを自分の舌で感じて楽しむことが、日本のお酒の楽しみ方の一つだと思います。
そのためにも、蔵元さんには、ぜひとも、酒造りに関する情報公開を進めていただきたいと思います。

キンシ正宗さんが液化仕込みを採用していることを公開してくださったおかげで、私は今晩もお酒を楽しませていただくことができました。


(※1)らくたび文庫No.046『京都の地酒蔵』p.28(2011.11 株式会社コトコト)
(※2)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.152(2000.4 柴田書店)
(※3)※2p.153
(※4)深谷伊和男『清酒の液化仕込みについて』p。219-210(日本醸造協会誌第83巻第4号 1988)
(※5)大内弘造『なるほど!吟醸酒造り-杜氏さんと話す』p.25(2000.10 技報堂出版)
(※6)※2p.127
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