SSブログ

【お酒】202.純米酒 七冠馬 カップ [32.島根県の酒]

489.JPG490.JPG
簸上清酒合名会社
島根県仁多郡奥出雲町横田1222

原材料名 米(国産)・米こうじ(国産米)
100%島根県産酒造好適米使用
精米歩合65%
アルコール分15度以上16度未満
日本酒度+5
内容量180ml詰
(以上、ラベルより転記)


簸上(ひかみ)清酒さんのwebsiteによれば、“七冠馬”というこのお酒の名前は、シンボリルドルフという競走馬からとったようです。
この馬が、シンボリルドルフなのでしょうか。
491.JPG
なんでも、「社長の妹さんがシンボリ牧場に嫁いだご縁で誕生」したのだとか(※1)。
私は競馬のことはよくわかりませんので、この点についての言及はこれだけにとどめておきます。


それよりも、簸上清酒さんは、日本のお酒の醸造史に残る大発見をした蔵元さんだったのです。
それは、簸上清酒さんこそが、“泡なし酵母発祥の蔵”だったのです。

文献によれば、「1962年。発酵が進んでいるのに泡があまり出ない酵母が、この蔵で発見された。泡が少ないとタンクの管理がしやすいという利点があるので、今では全国各地の酒蔵でこの泡無酵母が使われている。」とありました(※2)。
このことは、簸上清酒さんのwebsiteでも紹介されています。

なお、酵母と泡との関係については、この記事の最後にまとめておきましたので、ご参照ください。

そんな泡なし酵母発祥蔵の純米酒を、今日もぬる燗でいただきます。


アルコールの香りとともに、少し強めの酸味を感じます。
ちょっとピリッとしていて、少しすっぱくて、かつスッキリしています。

純米酒としては、うまみはかなり淡いほうだと思います。
酒臭い(←ほめ言葉です。)うまみだと思うのですが、淡いので気にはなりません。

甘みはかなりひかえめです。


スッキリした酸味と、淡めのうまみとが特徴の、やや淡麗で辛口のお酒でした。



☆★酵母と泡との関係について☆★

(1)なぜ泡がでるのか

日本のお酒は、お米のでんぷんを糖に変えるという化学変化と、糖をアルコールに変えるという化学変化とを経て出来上がります。
そして、でんぷんを糖に変える変化を担うのが麹が出す糖化酵素で、糖をアルコールに変える変化を担うのが酵母という微生物です。

このうち、酵母については、「発酵を始めるともろみ中の糖分をアルコールと炭酸ガスに分解し、もろみには多数の炭酸ガスの泡が発生する」そうです(※3)。

そして、ふつうの酵母(これを泡なし酵母と比べて“高泡酵母”というそうです。)は、「表層にはもやもやとした粘質層」があって「疎水性が強いために泡の表面に吸着し、結果として炭酸ガスの泡を保護し、泡が持続することになる」のだそうです(※4)。

つまり、お酒造りの際に醪タンクの中で発生する泡は、酵母が出した炭酸ガスの泡の表面を、ネバネバした無数の酵母自身が包んでいたものだったのです。


(2)泡の役割

この泡は、お酒の発酵が進むにつれて大きさや形を変化させていきます。

この点について、「健全な発酵をしている醪では、この泡の変化は、じつに規則正しく順序よく行われるものであり、杜氏は泡の状態を観察して、発酵の良否を判断する一つの手段としている」そうです(※5)。

実際に、「杜氏たちは、泡の状態で「このもろみは仕込んでから何日目」といった具合に、日数や発酵の進行状態がわかる」のだそうです(※6)。


(3)泡が出て困ること

発酵が進むと、酵母は炭酸ガスをどんどん出します。
それ故、放っておくと、泡がどんどん出来てあふれてしまいます。
そのため「醪の熟成中にタンクからあふれ出るばかりの大きな泡が上がってくるのを一時間交代で泡を消す、泡番と言われる作業」を、徹夜でする必要があるようです(※7)。

また、「高泡はもろみの実容量の倍以上も発生する」ことから、お酒の「仕込み量は発酵タンク容量の半分くらい」として(※8)、醪タンクの残り半分のスペースを泡のために取っておく必要があったようです。


(4)泡なし酵母の利点

泡なし酵母は、「親水性が強いために細胞は水によく分散して泡に吸着しない」ので(※9)、泡が立たないのだそうです。
要するに、酵母の表面がネバネバしていないので、泡が立たないということですね。

以上の点から推察するに、泡なし酵母の利点は以下のようなことだと思います。
1):泡番(泡消し作業)をする必要がない
2):同じ容積のタンクで、仕込量を増量することができる
3):ネバネバしていないので、仕込み終了後のタンクの洗浄が容易になる

このような利点を考慮してのことでしょうか、今日では、きょうかい酵母(その意味についてはこちらをご覧ください。)についても、「「きょうかい701酵母」(7号酵母の変異株)、「きょうかい601酵母」(6号酵母の変異株)、「きょうかい901酵母」(9号酵母の変異株)、「きょうかい1001酵母」(10号酵母の変異株)」というように(※10)、泡なしのものが開発されているようです。



(※1)石原美和『しまね酒楽探訪』p.33(2013.10 今井出版)
(※2)同p.32
(※3)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.141(2000.4 柴田書店)
(※4)秋山裕一『日本酒』p.106(1994.4 岩波新書)
(※5)田口久治『もろみ-その発酵のメカニズム』(『灘の酒博物館』p.113)(1983.10 講談社)
(※6)※4p.70
(※7)小山織『酒蔵の四季 東京・小山酒造の暮らし』p.73(1996.10 東京書籍)
(※8)※4p105
(※9)※4と同一箇所
あ~酒臭かった!(21)  酒くさコメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

あ~酒臭かった! 21

酒くさコメント 6

hanamura

ビールの泡が出過ぎて、フ~フ~息で吹いて、泡を消そうとしたことがあります。酒蔵の醪タンクに、模型扇風機のような、微妙な送風機を発見した時は、その意味が直ぐに分かりました。
by hanamura (2014-04-29 05:54) 

ちゅんちゅんちゅん

おはようございます!
ネバネバがないので
スッキリ感倍増・・・というお酒なんですね。
今回も勉強になりました(^^)
by ちゅんちゅんちゅん (2014-04-29 06:17) 

green_blue_sky

亀戸天神社の藤を見ながら1杯と思いましたが人が多すぎて諦めました^_^;
by green_blue_sky (2014-04-29 08:32) 

skekhtehuacso

hanamuraさん、コメントありがとうございます。
ビールの泡も、酵母の影響なのでしょうか。
扇風機で泡を消す方法があることは知りませんでした。
私が知っているのは、料理で使う泡だて器のデカいやつでつついて消す方法だけでした。
やはり、本を読んでばかりではダメで、hanamuraさんのように現場を見なければいけませんね。
by skekhtehuacso (2014-04-29 22:16) 

skekhtehuacso

ちゅんちゅんちゅんさん、コメントありがとうございます。
泡の有り無しとお酒の味との関係については、私はまだ理解しておりません。
お酒の味はいろいろな要素が関係すると思うので、それを理解するのは難しいと思います。
by skekhtehuacso (2014-04-29 22:18) 

skekhtehuacso

green_blue_skyさん、コメントありがとうございます。
庭園の真ん中の太鼓橋の上で一杯ってのはどうでしょうか。
(↑できるわけねぇだろ!)
by skekhtehuacso (2014-04-29 22:21) 

酒くさコメント、書いちゃう!

お名前:[必須]
URL:
酒くさコメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0