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【お酒】2283.山法師(YAMAHOUSHI) 大吟醸 雪女神 300ml [06.山形県の酒]

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製造者 株式会社 六歌仙
山形県東根市温泉町3-17-7

名称 日本酒
原材料名 米(国産)、米麹(国産米)、醸造アルコール
山形県産雪女神100%使用
アルコール分 16度
精米歩合 50%
内容量 300ml
(以上、ラベルより転記)




昨日に引き続き、今日も六歌仙さんのお酒をいただきます。
協業組合であった頃の製品も含めて、昨日までに以下の物をいただいております。
【お酒】226.六歌仙 辛口 300ml
【お酒】248.六歌仙 田舎親父カップ
【お酒】891.六歌仙 大吟醸 手間暇 180ml
【お酒】1506.六歌仙 五段仕込 超旨口 純米にごり酒 300ml
【お酒】2282.六歌仙 辛口 300ml

今日いただくのは、
“山法師(YAMAHOUSHI)”なるアル添大吟醸。
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品質表示はこちら。
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山形県産の“雪女神”なるお米を100%使用しているんだってさ。
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だから銘にも“雪女神”とあるのね。
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この“雪女神”なるお米、
いったいどんなお米なのでしょうか?

はい、そうです。
ここから長い長いウンチク垂れが始まるのでございますですぞ!





雪女神は、「2001年(平成13年:ブログ筆者追記)に山形県立農業試験場庄内支場(現山形県農業総合研究センター水田農業試験場)において,心白の発現がよく,高度搗精が可能な大吟醸酒向け品種の育成を目標に,「庄酒2560」(後の「出羽の里」)を母に,宮城県育成の「蔵の華」を父に人工交配を行い,その後代から選抜・育成した品種」(※1)であって、「2014年平成26年:ブログ筆者追記)に山形県の認定品種に採用され,2017年平成29年:ブログ筆者追記)からは奨励品種となっている.」(※2)酒米(酒造好適米)です。

(※1)(※2)の記述から、雪女神が比較的新しい品種であることがわかります。
でもさ、山形県には、吟醸酒向けとして育成されたお米がすでにありましたよね。


そもそも、雪女神が登場する以前、山形県では吟醸酒向けの酒造好適米として、
“出羽燦々”(でわさんさん)が育成され、1995(平成7)年に奨励品種として採用されておりました。

この出羽燦々、もともとは「美山錦の倒伏しやすさの克服を目的に育種。」(※3)されたとのこと。
その品質は「玄米品質は優り,心白発現率も高く,食糧事務所の検査でも「美山錦」を上回る等級格付けを得ている.良質・大粒・心白発現の多い品質特性を具備している.」(※4)や、
稈が短いため倒れにくい。しかも,心白発現率が安定して高く,精米粗蛋白質含有率が低いなど玄米品質が優れている。」(※5)とあるとおり、
吟醸酒向けの酒造好適米として優秀であって、今日でも広く用いられております。

心白とは、「米粒の中央部に円形あるいは楕円形の白色不透明部分のあるものを心白粒(米)という.(中略)心白部分は澱粉の集積が少なく細胞内に間隙が生じ光線を乱反射するため白く見える.」(※6)。であって、
心白粒は給水時に亀裂を生じ,麹菌のはぜ込み,吸水性,蒸し米の膨張性などに好影響を与え,よい麹が得られるので,酒米の条件として心白の発現は最も重要と考えられる。」(※7)わけです。

なお、調査対象とした米粒のうちで心白を有するものが生じる割合のことを、心白発現率というそです。

つまり、出羽燦々も心白発現率の高さを備えた良質の酒造好適米でなのですよ。


そんな素晴らしい酒造好適米である出羽燦々を有する山形県。
それなのに、なぜさらに雪女神を育成することになったのでしょうか?

この点を端的に示した文献の記述を見つけることはできませんでした。
しかし、出羽燦々の特性として、以下の記述が気になりました。

まず第一に、出羽燦々は60%程度の精米歩合を想定して育成されていること。
一方,各県では,精白度60%程度の大量用途向きの安定栽培品種の育種が盛んである.「美山錦」対照については,長野県の「ひとごこち」,山形県の「出羽燦々」,前述の秋田県の「吟の精」と宮城県の「蔵の華」,岩手県の「吟ぎんが」がある.」(※8)

次に、高精白では心白率(1つの米粒に占める心白部分の割合)の高さが阻害要因となること。
 心白が大きすぎる場合には、精米時に砕米が生じて無効精米歩合が高くなる恐れがあり,特に高度に精白される吟醸酒、大吟醸酒の原料米では,心白はさらに小さいほうがよいと考えられるようになってきている.
 また,40%まで精米した場合,心白粒は無心白粒に比べ割れやすく,心白率が高い品種は高度精米適性が劣ることが示されている.」(※9)

要するに出羽燦々は心白率が高く、精米歩合60%程度の精白には耐えられるものの、それ以上の精米歩合(50~40%)にすることは難しいという意味を、(※8)(※9)の記述から読み取ることが可能なわけです。

そこで「大吟醸酒醸造には,低タンパクであり玄米千粒重が大きく心白発現率(心白の多少)が高く,かつ心白率(心白の大小)が高過ぎず,高度搗精耐性があるといった高い原料米品質が重要である。」(※1)という要請を受けて、
心白の発現がよく,高度搗精が可能な大吟醸酒向けの品種」(※1)
として育成されたのが、雪女神であると考えられます。






ここで、自己満足のためのまとめ。

山形県で育成された酒造好適米については、このブログではこれまでに以下の物を紹介してまいりました。

出羽きらり
→普通酒および掛米向け(安価で多収)

出羽の里
→純米酒向け(心白が大きい故に高精白には向かない)

出羽燦々
→吟醸酒向け(特に酛米としての適性が高い)

雪女神
→大吟醸酒向け(低タンパク、心白発現率高、心白率は出羽燦々より小さい)

長い間ブログを書き続けていると、様々な“己の無知”に気づかされます。
でもこうして一つ一つ解明していけば、いつかはその無知の解明が体系的に繋がるようになるわけですね。

めでたし、めでたし!





え?
なんだって?

だったら本醸造“系”は?
純米大吟醸は?

(´Д`)ハァ…

そういう国定教科書でガリ勉させられた連中のなれの果てみたいな野暮なことを言いなさんな。
巷でよく見る、特定名称を“本醸造系(アル添あり)と”純米系”とに分けて、精米歩合でそれぞれ上に積み上げていくあの分類法なんて、一つひとつの規格が成立した意味や歴史的背景をいっさい無視した(というか、作者がそのことを知らないだけ?)、ただの暗記のための弁法なんだからさ。





ところで、

たとえ雪女神が優秀な酒米であったとしても、
肝腎なのは“お酒の味”
雪女神で造ったお酒の味については、以下のような記述がありました。

 ソムリエの資格を持つ山形県酒造組合・小関敏彦特別顧問は、「雪女神」について次のように語る。
(中略)
実際『雪女神』は山田錦の大吟醸酒と比較しても、味わいがシャープで、簡潔に言えば『濃醇にしてキレがある飲み口』といったところでしょうか。
(中略)
この『濃醇にしてキレがある』という飲み口は世界の白ワイン市場で戦える味だということです。現在はあまりにフルーティーなタイプが多くなったため、『雪女神』の味は高級白ワインの愛飲者への訴求度が高いと考えています。」(※10)

果たして今日いただくこの山法師も、そのような味わいなのでしょうか?
それを確かめるべく、いただいてみたいと思います。
大吟醸ですから、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。

お酒の色は、無色透明でした。
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あれ?
アル添大吟醸なのに、香りがない!
含んでも、フレッシュな風味を少し感じるだけ。

うまみはやや淡め。
米のうまみに厚みや広がりはないものの、舌の上を突くような感じ。
吟醸酒らしい苦みがあって、強くはないものの鋭さを感じます。
酒臭さゼロ、熟成感もなし。
キレはよく、スッと引きます。

酸味はひかえめ。
すっぱさは全く感じません。
スー少しあるものの、ピリはなし。

甘みはややはっきりでしょう。
口を付けたときにはわからないものの、喉を通ったあとで後味として残り、幅を感じます。


ちょい爽快のやや淡麗でちょい苦ちょいスースッキリ旨やや甘口のおいしいお酒でした。

アル添大吟醸なのに、香りがないのは意外でした。
でもそのほうが食事とは合わせやすいと思います。
米のうまみはどっしりとはしていませんでしたが、淡めなりにしっかりと感じて飲み応えがありました。
ちょいスーでキレがよく、後味がスッキリしておりました。
甘みが後味として残ったものの、しつこくはなく、むしろちょい苦と拮抗しているように感じました。

(※10)にあったような濃醇な味わいではなかったものの、味わいがシャープでキレがありました。
これはうまいんじゃないかな!
アル添大吟醸なのに香りを捨てて味で勝負といったところでしょうか。

食事と合う、おいしい大吟醸でした。
スイスイと行けてしまい、あっちゅう間でございましたとさ。
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雪女神を使用した大吟醸クラスのお酒は、きっと山形県に蔵を置く他の蔵元さんからも発売されていることでしょう。
その中には、今日いただいたお酒とは正反対の、(※10)の記述の如き濃醇なものもあるかもしれません。
今日いただいた山法師が下馬評に反してやや淡麗だったのは、

それらを探すべくもっと山形へ行け!

という、酒の神様からのお告げだったのかもしれません。

やれやれ・・・、

今後も山形通いは、けっしてやめられそうにはありません罠。
行きたいがための無理矢理の口実だな。






その山法師大吟醸雪女神と合わせた今日のエサはこちら。

今日もキタアカリ(じゃがいも)を食べたかったので、
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冷蔵庫に残っていたマヨネーズ(カップ焼きそばの付属品)をすべて使用して、
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ポテトサラダ。
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キタアカリの甘みとねっとり感とが最高でした。
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卵4個。
最近の安い卵は、どれもみな小さいね。
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こんぶと鰹節とで出汁をとって、
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ねぎの青いところを刻んで、
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出汁巻き卵。
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今日もジューシーに仕上がりました。
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ごちそうさまでした。
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(※1)本間猛俊『大吟醸酒向け水稲品種「雪女神」の育成とその特性』p.370(日本醸造協会誌 112巻6号 p.370-377 2017.6 日本醸造協会)
(※2)鈴木隆由輝・後藤元・中場勝・本間猛俊・阿部洋平・渡部貴美子・工藤晋平『大吟醸酒醸造に適した「雪女神」の栽培法の確立』p.2(山形県農業研究報告 第12号 p.1-18 2020.3 山形県農業総合研究センター)
(※3)副島顕子『酒米ハンドブック 改訂版』p.53(2017.7 文一総合出版)
(※4)前重道雅・小林信也編著『最新 日本の酒米と酒造り』p.77(2000.3 養賢堂)
(※5)長谷川正俊・加藤賢一・武田正宏『酒米新品種「出羽燦々」における高品質米生産のための栽培技術の確立』p.2(山形県立農業試験場研究報告 第31号 p.1-11 1997.3 山形県立農業試験場)
(※6)灘酒研究会編『改訂 灘の酒 用語集』p.47-48(1997.10 灘酒研究会)
(※7)(※1)p.373
(※8)(※4)p.141
(※9)(※1)p.374(ただし(※4)p.52の記述を根拠としている)
(※10)『コシヒカリを超えるコメ 第214回 山形県が挑む「山田錦を超えるコメ」の育成 大吟醸酒用新品種「雪女神」』p.51(月刊「食糧ジャーナル」41巻5号 p.44-51 2016.6 株式会社食糧問題研究所)