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【お酒】455.上撰 白鹿 アルミカン [28.兵庫県の酒]

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辰馬本家酒造株式会社
兵庫県西宮市建石町2番10号

原材料名 米(国産)・米こうじ(国産米)・醸造アルコール
アルコール分 15度以上16度未満
180ml詰
(以上、缶の印刷事項より転記)



辰馬本家酒造さんのお酒は、かつて以下のものをいただいております。
139.特撰 黒松白鹿 黒松 純米 もち四段仕込 300ml
145.上撰 黒松白鹿 クラシックス 本醸造生酒 300ml
174.超特撰 黒松白鹿 特別純米 山田錦 180ml
いずれも長い名前のお酒ばかりでしたが、今日いただくこのお酒は、短い名前の普通酒です。


このお酒は、アルミ缶に詰められています。
これまでにも、アルミ缶に詰められたお酒はいくつかいただいたことがありました。
しかし、それらはみな、ふつうの缶詰のようにパカッと開くものばかりでした。

ところが、今日いただくこのお酒は、プルタブになっています。
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これだったら、缶に口をつけて飲んでも、唇を切る心配はないですね。
それに、この缶の大きさや色でしたら、飲みながら街中を歩いていても、リアルゴールドか缶コーヒーでも飲んでいるようにしか見えませんね。
もしかして、仕事中に飲んでも酒だってバレないかも♪
バカじゃないの!


いかんいかん。
そんな不謹慎なことを考えていては、蔵元さんに対して失礼です。
だってね、この白鹿を造っていらっしゃる辰馬本家酒造さんは、西宮の発展に貢献した名家中の名家なんですから。


辰馬本家酒造の社長は、辰馬(たつうま)家の方が代々継承なさっています。
寛文二年(1662)の創業。初代辰屋吉左衛門が“神託”によって邸内に井戸を掘ったところ、清冽な水がわき出、清酒の醸造を始めた、と伝えられている。」そうですが(※1)、明治以降、辰馬家のご当主は灘の酒造業界のためのみならず、西宮市全体の発展のために貢献なさったそうです。

文献では、その貢献ぶりを以下のように紹介しています。
本家の辰馬吉左衛門は明治元年五月五日の生まれ。四十年には貴族院議員に選ばれるなど醸造界切っての名望家だ。この人の口ぐせは「イヌの棒ダラになるな」―。イヌがせっかくのごちそうである棒ダラをくわえてきたのはよかったが、惜しむあまりにマツの木の根っこへ。そのうち腐ってしまって食べることができなくなったということわざだ。
辰馬本家は西宮一の大金持ち。だが吉左衛門は守銭奴ではなかった。くわえ込んだものは一切放さず、世の中のためになることもやらない―、一部の金持ちに見られたこういう精神的堕落を極端にきらっていた。(中略)“棒ダラ”を腐らせるというバカげたことはやらない。
世の中へのお返しとして、公共事業へ惜しむことなく金をつぎ込んだ。おもなところを拾い上げてみると……。甲陽学院の創設、市上水道工事費、市庁舎、図書館、公会堂、市民病院の建設費など。西宮の主要公共建築物は辰馬家がみんな関与していたといっていいくらいだ。」(※2)


これらの公共事業のうち、特に西宮の上水道の整備は、辰馬家の寄付がなければ不可能だったそうです。
これについて、文献では以下のように紹介しています。
酒の醸造期を迎えると、決まって西宮の宮水地帯に隣接した地区から深刻な水不足の声が出る。大正の中ごろのことだ。
当時武庫郡西宮町は市への昇格条件を整えつつあった。人口は約三万人に増え、国鉄東海道本線をはじめ阪神・阪急電車など交通網が整備された。公共施設もつくられたが、市民が飲料水に困るような状況は、市制施行の大きな障害となった。「上水道を設置しなければ……」。町議会の音頭で水源探しが始まり、大正八年には、武庫川の伏流水が最適との結論が出た。水道敷設委員会も発足するが、問題は建設費。町当局は莫大な財源の捻出に頭を痛めた。
そこへ、ぽんと八十万円もの大口寄付の申し出があった。百万長者と言われた「白鹿」の辰馬家から五十万円、新興の八馬家(かつての“多聞”の蔵元;ブログ筆者追記)から三十万円。工事を始めるには十分な額だ。水不足の”元凶”からの巨額の寄付に、町民は唖然とした。」(※3)

もっとも、辰馬家にとってこの寄付は、酒造りに必要不可欠な宮水を守るという目的もあったことでしょう。
しかし、大正時代中期の50万円が今ではいくらに相当するのかはわかりませんが、水道工事を開始できるほどの寄付をする篤志家企業が、現代のこの世の中に存在するでしょうか?
【追記】その後、別の文献に「創設水道施設は、寄附金を主財源に起債と合せ119万円の工事で完成、大正12年7月一部給水を始め、同13年6月完工している。」との記述を見つけました(※4)。
ということは、辰馬・八馬両家の寄付で、水道工事費用の約68%を賄ったことになりますね。


また私の悪いクセが出てしまいました。
文献の紹介はこのくらいにしておいて、そろそろ名家辰馬さんが造ったこの缶入り普通酒をいただきたいと思います。
普通酒ですので、他の容器に移し替えた上で、今日もぬる燗でいただきます。


うまみは濃くはないですが、しっかりしています。
酒臭さはなくて、むしろやわらかいうまみです。
苦みや雑味は感じませんでした。

酸味は少しはっきりしています。
さわやかで、少しピリッと感じます。
すっぱさはそれほど感じませんでした。

甘みはけっこうはっきりしています。
でも、クドさのない自然な甘みです。


やわらかいうまみに、さわやかな酸味と自然な甘みとがよく合っている、やや甘口のおいしいお酒でした。
酒臭さは感じませんが、味全体のバランスがよいと思います。
このうまみと甘みとは、たしかこれまでにいただいた白鹿ブランドの特定名称酒にも似たようなものがあったと思いました。
ですが、私としては、この普通酒がもっとも好みの味でした。
さすが辰馬さん、たとえ普通酒であっても、決して手を抜かないようですな。



(※1)神戸新聞社会部編『生一本 灘五郷-人と酒と』p.115(1982.11 神戸新聞出版センター)
(※2)読売新聞阪神支局編『宮水物語-灘五郷の歴史』p.257-258(1966.12 中外書房)
(※3)(※1)p.170
(※4)鎌田勉『にしのみやの水と宮水』p.94(水道協会雑誌 第563号 1981.8 日本水道協会)


☆★☆★☆★☆★☆★
2018/01/26
また飲んでみました。
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あ~酒臭かった! 35

酒くさコメント 2

hanamura

EOEのアルミ缶は便利で、美味しくて好きです。
(フルオープンでなくて、ステイオンは珍しいですね。)
渋谷のんべえ横丁の「鳥福」は、白鹿だけしか置いてなかった。
by hanamura (2015-01-29 06:24) 

skekhtehuacso

hanamuraさん、私は横文字は苦手ですが、缶が便利なのはわかりました。
ただ、プルタブだと、お酒の香りを楽しむことはできませんな。
白鹿は、お店でも時々出会いますね。
by skekhtehuacso (2015-01-29 23:25) 

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