【お酒】509.本醸造 自然郷 さわやか カップ

合名会社大木代吉本店
福島県西白河郡矢吹町本町9

アルコール分15度以上16度未満
原材料名 米（国産）米こうじ（国産米）醸造アルコール
精米歩合 表示なし
正180ml詰
（以上、フタとカップの印刷事項とより転記）



大木代吉本店さんは、もともと“楽器正宗”というお酒を造っていたそうです。
このことについて、福島県南酒販株式会社のWebsiteでは、以下のように紹介しています。
「西白河郡矢吹町。旧四号国道沿いの商店街に、旧家らしい趣ある外観を呈する大木代吉本店は、慶応元（1865）年の創業である。（中略）今に至るまで「楽器正宗」の銘柄は地元に根付き、「楽器さん」と大木家を呼ぶ馴染み客も少なくないという。 」(※1)

しかし、別の文献によれば「「楽器正宗」は醸造用アルコールやブドウ糖を添加する三倍増醸造だった。品質が悪く、味も画一的で消費者の支持を得られなかった。「三倍増醸酒はもうだめだ」と感じ、一大方針転換で始めたのが純米酒造りだった。高度成長期の昭和四八（一九七三）年ごろのことだ。」とのこと(※2)。


楽器正宗に限界を感じた蔵元さんは、純米酒や本醸造へと方針を転換するそうです。
「その頃、大木氏は偶然「越の寒梅」を飲む機会を得た。「当時は辛口の酒はあまり評価が高くなく、『越の寒梅』もその後の大ブームなど予想もできない、無名の酒でした。しかし、私はこんな酒があるのかと、ショックを受けました。こんな酒を飲みたい。こんな酒を作りたいと強く思いました」そこで、取り組んだのが端麗辛口の無農薬純米酒「自然郷」である。」
「さらに、時代が大木代吉本店に新たな取り組みを促す。平成4年（1992）に行われた日本酒の級別廃止・税制一本化である。さらにその頃からディスカウントストアが登場し、業界全体も大きく変わろうとしていた。そこで、大木氏は「旧2級」に変わる新たな商品の開発を目指す。「素材、つまり米と、製法にこだわることで、ナショナルブランドとの差別化を図らなければ、私共のような蔵は生き残っていけないと思ったのです」誕生したのは本醸造「さわやか」。「自然郷」に次ぐ二本目の柱として定着し、それぞれ季節商品など幅広い商品展開も行われている。 」(※1)


あれ？
今日いただくこのお酒のカップには「本醸造 自然郷 さわやか」と書いてあります。

しかし、上記の記述は、「自然郷」と「さわやか」とを別のお酒として紹介していますね。

このお酒は本醸造ですから、記述の内容を踏まえれば、おそらくこのお酒は「さわやか」に該当するのだと思います。
これは完全に私の推測ですが、「自然郷」は大木代吉本店さんの主力商品ですから、そのことをアピールするために酒名を併記しているのではないでしょうか。

まあ、こんなことは、いちいちきっちりさせる必要はないと思います。
（だったら書くなよ。）


それよりも、もっと重要なことがあります。
このお酒は本醸造を名乗っているにもかかわらず、フタにもカップにも精米歩合の表記がないのです。


本醸造のような「特定名称を表示する清酒については、原材料名の表示の近接する場所に精米歩合を併せて表示すること。」と決められておりますので(※3)、徹底していただきたいものです。


細かいことをいちいち詮索するのはこのくらいにしておいて、そろそろいただいてみたいと思います。
本醸造ですので、今日もぬる燗でいただきます。


一口含むと、酸味がしっかりしていることがわかります。
スーッとした清涼感がかなり強めで、とてもさわやかです。
でも、すっぱさはひかえめです。
それに、刺激やピリピリ燗はありません。

うまみは淡めですが、淡いなりにしっかりしています。
醸し出された酒臭い（←ほめ言葉です）うまみです。
それに、苦みがいささかはっきりしています。

甘みはひかえめです。
しかし、わずかに感じます。


さわやかな酸味と苦みとに、淡いがしっかりしたうまみ、そしてほんのり甘みを感じる、淡麗旨辛口のおいしいお酒でした。
淡くてさわやかな口当たりですが、飲み応えがあると思います。
苦みがいささかはっきりしているのが好き嫌いが分かれるところかもしれませんが、それがかえって味を引き締めているように思います。
私は好きですね。




(※1)酒蔵探訪 29 【2007年9月】（福島県南酒販株式会社Website）
(※2)酒蔵環境研究会編『挑戦する酒蔵-本物の日本酒を求めて』p.85（2007.11 農文協）
(※3)清酒の製法品質表示基準（平成元年国税庁告示第8号）3(1)