【お酒】1759.はこさけ一代 ほろほろマイルド 180ml [34.広島県の酒]
中国醸造株式会社
広島県廿日市市桜尾一丁目十二番1号
アルコール分13.0度以上14.0度未満
<原材料>米、米麹、醸造アルコール、糖類/酸味料
原料米はすべて国産
180ml詰
(以上、パックの印刷事項より転記)
コンビニや駅売店で売っていそうな紙パック詰めのお酒。
付属のストローを箱に刺して、常温のままチューチューといただくやつですよ。
こういう紙パックのものって、安くて、しかも三増酒が詰められていることが多いように思います。
今日いただくこの紙パック酒も、糖類酸味料フル添加の三増酒でした。
広島の街を徘徊した際に、なかなか新規のお酒に出会わなかったが故につい手を出してしまったこの紙パック酒。
実は、タダモノではなかったのです。
カップ酒の元祖が“ワンカップ大関”ならば、紙パック酒の元祖は、なんとこの中国醸造さんの‟はこさけ一代”だったのですよ。
このことについて、手元にあった文献には以下のような記述がございました。
「 日本で初めての紙容器入り清酒「はこさけ一代」を発売したのは昭和四十二年。先代社長が海外視察で見つけた牛乳パックがヒントになった。「はじめのうちは紙臭い、漏れがあるなどのクレームがあり、相当苦労しました」。しかし内側のコーティングのポリシートの材質を買えるなど工夫を凝らし、問題は解決した。」(※1)
その苦労は、以下の記述にも表れております。
「まず、酒は牛乳とちがって浸透性が強い。そのため、容器をポリエチレン、紙、ポリエチレン、アルミはく、ポリエチレンの五層にした。従来の牛乳容器は三層である。五層にすると今度は、厚さが問題になる。厚くなればそれだけシールが困難になるのだ。また紙も柔らかいほうがシールしやすいが、柔らかすぎると容器の形がくずれやすい・・・・など、問題は山積みしていた。
埼玉県東松山と広島の間で輸送試験を行なったり、落下試験、回転ドラム試験耐圧試験などを繰り返して、完全にメドがついたのは四二年の初夏であった。六月にはツーパック社の自動成型充テン装置を入れて、本格的な生産開始。発売は、七月三日であった。」(※2)
紙容器を開発しようとなさった蔵元さんの意図は、お酒の“味”とも関わりがあったそうです。
「 紙容器に入った酒「はこざけ」開発の話は、八年前の三五年(昭和35年;ブログ筆者追記)にまでさかのぼらねばならない。この年、中国醸造(広島県廿日市町)の社長(当時副社長)白井修一郎氏は、日本生産性本部の視察団の一員としてニューヨークにいた。白井氏は無類の牛乳好きである。ニューヨークでもさかんに牛乳を飲んでいたが、この牛乳の容器が紙であることに強く興味をもった。そして「酒の容器をビンから紙に換えたら・・・・」という考えがふと頭のながをよぎった。「そうなれば、業界の長年の課題であった“味”の問題が解決する」
ビン入りの酒は、明治四二年に大倉酒造の大倉恒吉が「月桂冠」をビンづめで発売したのが最初である。以来、ビンは従来の杉だるを漸次、駆逐してゆき、太平洋戦争後はビンの黄金時代となった。が同時に、一つの問題が発生した。それは、ビンは光を通すために紫外線によって酒の味が変質することである。またビンが溶けて、ビン香・ビン色が酒につくことにもなる。蔵出しの味がそのまま持続するのは四カ月程度とさえ言われているのである。」(※3)
紫外線の影響はともかく、‟瓶が溶ける”ってのはあたしゃ初耳でした。
もしかしたら黎明期の酒瓶ではそういうことがあったのでしょうか?
さらには味のみならず、コストダウンや使い勝手のよさも狙っていたみたいでした。
「 これまでの容器革命は“味”とは無関係にすすめられていた。しかし今回のばあいには“味”そのものにまで革命を起こすのである。さらに、製カン充テン過程を完全自動化することによって、他業界での例とはちがってコストは安くなりしたがって小売価格も安くなる。しかも主婦は一個ずつ小買いができるし、お湯に紙容器を入れるだけで“おかん”ができる。使い捨ての時代にもぴったりである。冷蔵庫に入り、落としても割れない。」(※4)
いただく前に、もう一点。
“満量冷詰”と書いてありましたよ。
この意味を解説した記述には、残念ながら出会うことがかないませんでした。
ですがそれを推測させるような解説には出会ったのでした。
以下の記述(要するに“限外ろ過”ってやつでしょうか?)がこの“満量冷詰”に相当するのかどうかはわかりませんが、参考のために紹介しておきます。
「 平成六年春から、はこさけの「氷囲いなま酒」を発売している。火入れによらず、特殊な濾過によって酵素を除去した酒を、4度で貯蔵。生のままでパックに詰める。安い夜間電力を利用して作った氷を利用しているのがミソだ。」(※5)
それではいただいてみたいと思います。
この手のお酒はストローを指して常温のまま飲むべきかとは思いますが、独り暮らしの中年男性が粗末な食卓でそれを実践すれば虚しさを誘うことは必然でしょう。
それ故、常温ではあるものの、せめてグラスに注いでいただいてみることにいたしましたよ。
お酒の色は、ほぼ透明でした。
生貯っぽい風味がかすかにあるかな。
うまみは淡めです。
三増酒っぽい画一的な風味はほとんどわからない程度で、それどころかやわらかい風味を少しとともに、酒臭さ(ほめ言葉です)をごくかすかではありますが感じます。
それにこれもかすかですが苦みがあって、わずかにざらつきみたいに感じます。
熟成感はありません。
キレはよいですね。
酸味はひかえめです。
すっぱさは弱めで鋭さはありませんが、その存在はゼロではないですね。
スースー感はなく、ピリピリ感もありません。
甘みはやっぱりはっきりです。
でも、べとついた感じはなく、さらりとしておりましたよ。
淡麗スッキリ薄旨甘口のおいしいお酒でした。
薄めて甘いけれど、しつこさを全く感じませんでしたよ。
糖類添加酒だけあって甘めでしたが、それでもべとつきやクドさは感じませんでした。
酸味料添加のお酒にありがちな風味のクドさもありませんでしたよ。
それにたしかに薄めでしたが、薄めながらにもうまみは感じることができました。
かすかな苦みすら、甘めの味わいを引き締めるに役立っているように感じました。
これはグラスでちびちびといただくよりも、やっぱりストローでチューチューとやったほうがのど越しのよさを感じることができていいんじゃないのかな?
今日は簡単ではありますが、料理をしましたよ。
だれにも干渉されることなく自分の好きなものを自分の判断と責任とで作り上げることができることから、料理をしている間だけは自分が人格的自律の存在だと感じることができるのですよ。
キャベツとじゃがいものオムレツ。
具を大きくしたことが祟って見た目が悪くなってしまいましたが、これも想定内。
(ウソだよオマエがヘタクソだからだろ。)
具の触感と卵のふわふわ感とが相俟って、おいしゅうございましたとさ。
(※1)中国新聞社メディア開発局出版部編『広島の酒蔵』p.24(1995.2 中国新聞社)
(※2)『“はこざけ”を開発した中国醸造の苦闘 酒類業界における容器革命の立役者』p.90-91(セールスマネジャー 4巻3号(1968年3月号) p.88-92中 ダイヤモンド社)
(※3)(※2)p.88-89
(※4)(※2)p.91
(※5)(※1)p.25
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