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【お酒】183.雪の茅舎 山廃純米 180ml [05.秋田県の酒]

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株式会社齋彌酒造店
秋田県由利本荘市石脇あざ石脇53

アルコール分16度
原材料名 米(国産)・米麹(国産米)
精米歩合65%
180ml詰
(以上、ラベルより転記)


ある文献では、齋彌酒造店の酒造りに対する基本的な考え方を、以下のように紹介しています。

酒造りは、自然にできてくるのを待っているのが基本。自分で造ろうとは考えていないんです。だから我々の酒造りは、菌に関与しない。酵母が造ってくれるのを黙って見ている、お任せコースです。タンクの中は、微生物の世界。人間がしゃしゃり出ていくような世界ではありません」(※1)

すなわち、たとえそれが酒造りの常識であっても、微生物の活動を阻害するようなことはやらない方針なのだそうです。
その例の一部として、齋彌酒造店さんでは、以下の3つのことをしないそうです。

(1)醪タンクに櫂入れをしない。
麹と酒母、そして蒸米を醪タンクの中へ仕込んだら、櫂という長い棒でタンクの中をかき回す作業を、仕込み期間を通じて定期的に実施するのが、通常の酒造りのやり方です。
この“櫂入れ”は、タンクの中の醪を均一化させることや、新鮮な空気を送ることなどを目的としているようです。
また、ある蔵では「朝晩二回の櫂入れの時、ただ均一になるように櫂を入れるのではない。櫂を入れたときの櫂を通して伝わってくる醪の音や感触で発酵の進み具合を判断する。」のだそうです。(※2)。

しかし、齋彌酒造店さんでは、「人間が無理にかき混ぜたりしなくても、自然の対流だけで十分」(※3)で、「酵母による醗酵が終われば自然に固形物は下に沈殿して、上澄みができる」(※4)という考え方に立脚し、櫂入れはしないそうです。

(2)割り水(加水)をしない。
市販のお酒の多くでは、仕込みを終わって「もろみから搾っただけの状態の日本酒のアルコール分は、20度前後にもなる」のですが、「瓶詰めして出荷する前」に、アルコール分が15%前後になるように、水を加えて「加水調整を行っている」のです(※5)。
この加水のことを“割り水”とも言います。

しかし、齋彌酒造店さんでは、「割り水は、そのままの生水をいきなり加えるわけですから、酒と水とが喧嘩して、せっかくの香りがさーっと抜け出てしまうんです。(中略)だったら、初めから割り水の必要のない度数の酒に醸せばいいんです。」という考え方の下で、最初からアルコール度数16度前後になることを目指して仕込んでいるようです(※6)。

(3)ろ過をしない。
市販のお酒の多くは、醪を搾った後で、フィルターや活性炭でろ過をしています。
ろ過をすることで、「においの元となる不純物を取り除き、色を透明に近づける。」ことができるそうです(※7)。

しかし、齋彌酒造店さんでは、「精米、洗米の段階から徹底した原料処理を行い、微生物たちには十分な醗酵期間を与えている」ので、「濾過をしなくても、そもそもがきれいな酒質の酒、なおかつ米の旨味を生かした酒を醸す」ことができるのだそうです(※8)。


こういったことは、単にそれらをしないということだけで成り立つものではないようです。

酒造りでは「蔵を清潔に保って菌のバランスをとることが人間の仕事」であるとして、「常に掃除を心がける」ことを大事にされているようです(※9)。
すなわち、冒頭で書いたように、酒造りを酵母や菌の「お任せコース」にするためには、その前提として、人間が酵母や菌が育ちやすい環境を作りだすことが必要になるということだと思います。

また、この文献では、酒造りは、「蔵入りして造りだしたら、一斉に同時進行で進んでいきますから、(中略)基本的な米の知識というのは、事前に全部頭に入っていなければ間に合いません」との考えの下で、「米をわかるためには、米を作ることが一番の早道。だからうちの蔵では、蔵人たちみんなで米を作っています」と紹介しています(※10)。
「お任せコース」の過程で酵母や菌が米をどう変えてくれるかを見極めるためには、米についての知識を持つことが必須条件となるのですね。



前置きがかなり長くなってしまいました。
こんなにこだわって造られたこのお酒を、そろそろいただいてみたいと思います。
いやぁ、こりゃたとえマズくても、マズいって言えねぇな…。
今日もぬる燗でいただきます。


吟醸香のような香りがほんのわずかにします。
加水をしないと、こういう香りが残るのでしょうか。

一口いただくと、うまみと酸味とがグッと迫ってきます。
いやぁ、これは濃いわ。

うまみはとても濃厚です。
それでいて、酒臭さはひかえめで、むしろ吟醸酒のような米のうまみを感じることができます。
それに、こんなに濃厚なのに、雑味やしつこさを感じません。
お酒が喉を通ると、うまみも一緒にスーッと消えていくようです。

酸味も強めです。
しかし、こんなに強いのに、刺激やピリピリ感はまったくありません。
ちょっとすっぱくて、さわやかな酸味です。
こういう力強いが刺激のない酸味は、よほど丁寧に造らないと出ないのではないでしょうか。

甘みはひかえめです。
わずかに感じますが、目立ちません。


濃厚ながらも上品なうまみと、力強くてさわやかな酸味とが特徴の、濃醇やや辛口のおいしいお酒でした。
軽快さはないものの、雑味やしつこさがなく、それに刺激もないので、飲みやすいと思います。
造り手のこだわりの成果を堪能することができるお酒でした。


(※1)藤田千恵子『美酒の設計 極上の純米酒を醸す杜氏・高橋藤一の仕事』p.35(2009.11 マガジンハウス)
(※2)佐々木ゆみ子+恒文社編集部『八海山 魚沼 雪の中の酒蔵』p.132(2009.7 恒文社)
(※3)※1p.37
(※4)※1p.38
(※5)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.174(2000.4 柴田書店)
(※6)※1p.134
(※7)dancyu 2014年3月号 p.56(プレジデント社)
(※8)※1p.133
(※9)※1p.27・p.31
(※10)※1p.19-20
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あ~酒臭かった! 23

酒くさコメント 4

やまびこ3

茅舎という字が読めなくて以前立ち往生しましたが、この酒好きです。
by やまびこ3 (2014-04-10 19:43) 

skekhtehuacso

やまびこ3さん、コメントありがとうございます。
ラベルにかな書きがあるからよいももの、茅舎はなかなか読めませんね。
でも、おいしいお酒でした。
by skekhtehuacso (2014-04-10 22:25) 

ちゅんちゅんちゅん

おはようございます!
なるほど~☆
一度 いただいてみたいです(^^)
by ちゅんちゅんちゅん (2014-04-18 07:12) 

skekhtehuacso

ちゅんちゅんちゅんさん、コメントありがとうございます。
雪の茅舎は有名なお酒ですので、ちょっと気の利いた酒屋へ行けば置いてあるはずです。
by skekhtehuacso (2014-04-18 22:47) 

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