SSブログ

【お酒】446.白鷹 神宮御料酒 カップ [28.兵庫県の酒]

1266.JPG1267.JPG
白鷹株式会社
兵庫県西宮市浜町1番1号

アルコール分/15度以上16度未満
原材料名/米(国産)・米麹(国産米)・醸造アルコール
180ml詰
(以上、ラベルより転記)


白鷹さんのお酒は、かつて上撰のお燗瓶と、生酛造りの辛口純米酒タイガースカップ、そして吟醸生貯蔵酒のハクタカグラスをいただいております。
今日いただくこのお酒は、“神宮御料酒”と銘打たれた普通酒です。


白鷹さんは、伊勢神宮の御料酒を造る唯一の蔵元さんなのだそうです。
1269.JPG
1268.JPG


ラベルの品質表示を見るかぎり、このお酒は普通酒です。
(精米歩合の表示がありませんので。)
1270.JPG
しかし、白鷹さんのWebsiteで神宮御料酒を検索すると、御料酒として販売されているものは特別純米酒だけのようなのです。
一方、このカップ酒のことは、白鷹さんのWebsite上では紹介されておりませんでした。

と言っても、ラベルには“白鷹”の“神宮御料酒”と明記されていますから、この普通酒もきっと御料酒なのでしょう。


ところで、“御料酒”って、いったいどんなお酒なのでしょうか。
いわゆるお神酒とはちがうのでしょうか。

この点について、ある文献では以下のように紹介していました。
神饌とともに供えられる(中略)「御料酒」は、伊勢神宮でも一般から献上・奉納される「御神酒」とはちがう。神宮の側で、神饌のために選びぬかれた酒なのである。
いざつくるとなるとこれはなかなかに大変であった。
一、御料酒ハ酒倉内ニ一区ヲ画シテ保存ヲナシ不浄ヲ避ケル装置ヲナスモノトス
一、容器ハ八立入ハ無印陶器製壺詰トナシ他ハ吉野杉製樽詰トナスモノトス
一、運搬荷造ハ途中ニテ破損セザル様念入ニ堅固ニナスモノトス
等、造りについても、容器についても、運搬についても神宮側からの要請で特別の心構えで当らねばならない。杜氏も蔵人も身を潔めて御料酒用の特別の琺瑯タンクで仕込む。醪づくりの心労もさることながら、定められた日割に従って外宮斎館に納入するまで、緊張のし通しである。」(※1)

御料酒は、単なる献上品というわけではなくて、神宮の関与と制約との下で造られるお酒なのですね。


では、なぜ白鷹さんだけが、御料酒を造る唯一の蔵元さんなのでしょうか?

このことについて、上記と同じ文献では、以下のように紹介されていました。
大正初めの御大典の折、全国数千の酒の中から品質、格式とも最上とされる酒が五銘柄選ばれ、大嘗会に供された。灘の「白鷹」もその一つであったが、やがて伊勢神宮から、「白鷹」をとくに指名して神宮の御料酒としたい旨の沙汰があった。全国の酒蔵でただ一銘柄だけという栄光の役割を、醸造元の辰馬家では謹んで受けることにした」(※1)

しかし、この記述からは、白鷹だけが選ばれた理由がわかりません。
私は、ネット上ではそれらしい記述を見つけることができましたが、この理由を明記した文献を探すことができませんでした。

一方、上記と同じ文献では、白鷹さんの酒造りについて以下のように紹介していました。
もともと「白鷹」は、酒そのものの品質、味わいが、名だたる灘の酒の中でも群を抜いていただけでなく、酒の原料の米、酒を詰める樽の杉の材質等も第一級の一流品を使い、蔵元辰馬家の格式、見識にも比類ないものがあるので知られた。
こうして一流品の格式をも築いた「白鷹」は、御大典の御用酒に選ばれ、創業以来の帝国ホテルの宴会酒として人気を博した。東京山の手の家庭でもファンを増やす一方、全国の神宮と神社の最高位にあった伊勢神宮唯一の御料酒に指定されたのである。」(※2)

この記述は、白鷹の社是とも言える、いわゆる“品質第一主義”、“超一流主義”という考え方を紹介したものだと思います。
これは私の推測ですが、“品質第一主義・超一流主義を貫く白鷹さんこそ御料酒造りを担うにふさわしい”と伊勢神宮が判断して選んだのではないでしょうか。


最後に、白鷹さんの超一流主義について記述している文献を紹介しておきます。

辰馬悦蔵商店(白鷹株式会社の前身:ブログ筆者注記)は、「品質第一主義」を現在も看板としている。樽材は吉野スギ、原料米は山田錦、仕込みはもちろん宮水である。桶買いを全くしない数少ないメーカーで、自醸酒100%を誇る。初代悦蔵の酒造りの精神が受け継がれているのだという。」(※3)
(なお、白鷹さんが桶買いをしなかったことについては、かつてこちらで紹介しています。

「(創業者辰馬悦蔵について:ブログ筆者注記)彼は“一流主義者”だった。分家(白鷹は白鹿から分家した蔵元さんです。:ブログ筆者注記)を立てたとき、魚崎の古い酒造家、雀部家の蔵を買い取って酒屋を始めたが、その酒は最初から超一流を目ざしていた。増石量にはあんまりとん着せず、もっぱら品質本位。はじめに出した「鱗印」が好評をうると、つづいて第二弾を撃った。「白鷹」である。原料の米はもちろん、燃料からタルのスギ、コモ包みのワラにいたるまですべてが一流品ずくめ。たちまち東京の上流社会の人気をさらってしまった。「白鷹」銘が短期日のうちに古くからの有名銘柄にご(伍)した秘密は、この一流主義にある。だが一流とするにはそれなりの苦労もいる。たとえば原料米。まさか直接栽培するわけではないが、契約を結んでいる農家にはどんどん改良を奨励した。品種から苗床、耕作の方法まで改良できる点すべてに意を用い、資金援助を惜しまなかった。」(※4)


大変申し訳ございません。
調子に乗って、長々と書いてしまいました。
そろそろ、この御料酒をいただきたいと思います。
普通酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。


うまみはとてもクリアです。
酒臭さはひかえめで、澄んだ味わいです。
それに、雑味や苦みは全くありません。

酸味はややはっきりしています。
とてもさわやかな酸味です。
すっぱさは少し感じます。
ですが、刺激やピリピリ感はありません。

甘みはひかえめですが、ほんのわずかに感じます。


とてもきれいなうまみと、さわやかな酸味との、旨辛口のおいしいお酒でした。
雑味がないのは、丁寧に造ってある証拠でしょう。
以前、生酛の味わいについて記述した雑誌記事を紹介しました。
白鷹さんも生酛造りにこだわっているようですから、もしかしてこのきれいな味わいは、生酛造りのなせる業なのでしょうか?


(※1)稲垣眞美『神宮御料酒の郷』p.40-41(芸術新潮 44巻11号 1993.11 新潮社)
(※2)(※1)p.41-42
(※3)神戸新聞社会部編『生一本 灘五郷-人と酒と』p.108(1982.11 神戸新聞出版センター)
(※4)読売新聞阪神支局編『宮水物語-灘五郷の歴史』p.260(1966.12 中外書房)
あ~酒臭かった!(34)  酒くさコメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

あ~酒臭かった! 34

酒くさコメント 0

酒くさコメント、書いちゃう!

お名前:[必須]
URL:
酒くさコメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0