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《焼酎》100.小鶴黄麹前割り 200ml [9946.鹿児島県の焼酎]

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小正醸造(株)MK
鹿児島県日置市日吉町日置3309

本格焼酎
アルコール分12度以上13度未満
容量:200ml
原材料:さつまいも 米こうじ(国産米)
(以上、ラベルより転記)




2017年の6月に白岳に手を出して以来、このブログで紹介してきた焼酎の数が今日でようやく100個目となりました。
その記念すべき100個目の焼酎は、黄麹(きこうじ)を用いて造られている芋焼酎でした。
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なお、小正醸造さんの芋焼酎は、これまでにさつま小鶴 白麹 100mlと、小鶴くろマイルド 16度 200mlとをいただいております。


黄麹/黄麹菌(アスペルギルス・オリゼー)はおそらくもっとも一般的な麹菌で、清酒や味噌、醤油の製造などに広く用いられております。
一方で、焼酎の製造で用いられる麹は今でこそ白麹菌や黒麹菌が主流ですが、明治末期までは清酒と同じ黄麹菌が使われていたのだとか。

しかし、白麹菌や黒麹菌は増殖の過程でクエン酸を出すものの、黄麹菌にはその性質がなかったのです。
清酒や焼酎を造る際には麹(麹が出す糖化酵素がでんぷんを糖に変える。)とともに酵母という微生物(糖を食べてアルコールに変える。)の力を借りる必要がありますが、その酵母が増殖するためには酸性の環境が必要であって(酵母は酸に強いものの、雑菌は酸に弱いことから、酸性下では酵母だけが育つのです。)、クエン酸を出さない黄麹菌を用いる際には酒母(酵母の培養液)造りの過程で発生する乳酸菌が出す乳酸の力を別途借りる必要があったのです(それを自然下でやっていたのが清酒の“生酛造り”です)。
しかも黄麹菌を用いた酒母造りは腐造防止のために低温下でなされる必要があることから(清酒の醸造では“寒造り”が広く普及していたのはこのためです)、温暖な南九州の気候には合わなかったそうです。

そこで明治の末期に沖縄の泡盛製造で用いられていた黒麹菌(クエン酸を出すことから低温下でなくても雑菌の繁殖を抑制して酵母の増殖を促すことができる。)が焼酎に導入され、また黒麹菌の中からその変異株である白麹菌が発見されて戦後なってから広く普及したのだそうです。

このことについて、手元にあった文献には以下のような記述がありました。

 わが国の醸造産業で使用される麴カビには七種類があるが、黄麴カビ、黒麴カビ、白麴カビの三つに大別される。日本酒造りに用いるのは胞子の色が黄緑色の黄麴カビ(アスペルギルス・オリゼー)で、麴カビの中でも代表的な菌種である。黒麴カビは胞子の色が黒褐色のカビで、沖縄の焼酎「泡盛」の製造に用いられている。このカビはクエン酸を大量に生成し、もろみを酸性に保つことができるため、腐敗菌が生育しにくく、暖かい気候でももろみを安全に発酵させることができる。白麴カビは胞子が白いカビ(黒麴カビの突然変異種)で、九州などの焼酎造りで使用されている。」(※1)

 明治四十年以前の本格焼酎製造は、琉球・奄美を含む南西諸島を除き、すべて清酒と同じ黄麴が使用されていた。泡盛黒麹菌が薩摩焼酎の製造に導入されたのは、明治四十年から四十三年にかけてであり、当時これで製造した焼酎を「ハイカラ焼酎」と呼んだ。山下は泡盛もろみが腐造し難い原因の一つが、泡盛麴の生酸性にあることを指摘し、善田は鹿児島で製造された泡盛種麴から純粋分離した黒麴菌の生酸性、蒸米糖化力を調べて仕込試験を行ない、その有用性を確認した。善田は黒麴菌胞子の色が、醗酵液に溶出しないことを認め、清酒酒母麴への応用を考えた。黒麴菌、あるいは河内が黒種麴から分離、開発した白麴菌と黄麴菌との混用による甘藷焼酎の試験が鹿児島において野崎により行なわれ、以後甘藷焼酎用種麴は全面的に黒麴菌系へ移行し、純粋種麴使用の普及とともにもろみの乳酸菌汚染の防止に貢献し、焼酎収量は一・二倍から一・三倍に向上した。」(※2)

なお、このことはかつてこちらでも紹介しておりますので、適宜ご参照下さい。

また、「 現在の焼酎には、白麹・黒麹を使う銘柄が多いが、製造設備の進化により、黄麹による焼酎も復活した。」(※3)という記述を見つけました。
これはおそらく、クエン酸を出さない黄麹菌を用いた焼酎の醸造には、酵母の増殖を促すために低温下や雑菌が繁殖しにくい環境を人工的に整える必要があって、今日ではこれを技術的に克服することが可能となったという意味でしょう。
それ故に、今日いただくこの焼酎が誕生(復活)したのでしょうね。


肝腎の味わいですが、「黄麹タイプは白麹、黒麹に比べて圧倒的に優しい口当たりでフルーティーな香りが特徴。」(※4)であるとの一般的な記述や、あるいは今日いただくこの焼酎に関する「お湯割りにすると、黄麹ならではの華やかでフルーティーな香りと、やさしい芋の甘さが立ち上がる。」(※5)という記述を見つけましたよ。

果たして本当にフルーティーな風味なのでしょうか?。
それを確かめるべく、そろそろいただいてみたいと思います。


ラベルには、12~13度の前割りだからストレートで飲めと書いてありました。
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それにしても、あたしゃ“天然水”とか“天然地下水”という表現に出くわすたびに思うことがあるのです。
そもそも、天然じゃない人造の水なんてものが、人の飲用に供し得る量でこの世に存在するのでしょうかね。
もっともこれらの表現はおそらく水道水を使っていないという意味なのかもしれませんけれど、水道水だって元を辿れば天然の水なんですけれどね。
イヤミを言うな。


いかんいかん。
まずは半分だけ、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。
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ありゃ!
これはかなりさっぱりした口当たりですよ。

芋のふっくら感とともに、華やかな風味とをかなり穏やかに感じます。
軽い苦みと香ばしさともごくかすかにありますね。
甘みはそれほどでもないものの、その存在はかすかにわかります。



次に、残りの半分を燗にしてみました。
写真を撮影することを忘れてしまいました。

これはとてもさっぱりしておりますよ。
風味の基本は冷やしたものと同じですが、こっちのほうがさらにさっぱりしておりました。
苦みや香ばしさは消えて角がまったくなくなりましたが、それとともに風味も引いてしまいました。


かなりさっぱりした口当たりの前割り芋焼酎でした。
残念ながら、フルーティーな風味を確認することは、私にはかないませんでした。
でも、重さがなくてかなり穏やかな口当たりでした。
ただ私としては、いささか物足りなさを感じてしまいましたとさ。

(※1)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.100-101(2000.4 柴田書店)
(※2)坂口謹一郎監修・加藤辨三郎編『日本の酒の歴史』p.514(菅間誠之助執筆『本格焼酎』p.501-562中 1977.8 研成社)〔引用文献の紹介(“山下”、“善田”、“河内”、“野崎”の各苗字の部分に付記)は省略しました。〕
(※3)鮫島吉廣監修 メディアファクトリー編集『ゼロから始める焼酎入門』p.88(2014.4 株式会社KADOKAWA)
(※4)『焼酎一個人 vol.1 今、最高においしい焼酎(BEST MOOK SERIES 47)』p.52(2017.7 KKベストセラーズ)
(※5)(※3)p.16
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