【お酒】2226.しぜんしゅ 純米原酒 300ml [07.福島県の酒]
製造者 有限会社仁井田本家
福島県郡山市田村町金沢字高屋敷139番地
品目 日本酒
酵母無添加(蔵つき酵母)
アルコール分 16度
精米歩合 80%
原材料名 米(国産)、米糀(国産米)
自然栽培米 放射性物質不検出確認済
表示義務のない加工助剤・酵素等も不使用
冷蔵推奨
内容量 300ml
(以上、ラベルより転記)
仁井田本家さんのお酒は、かつて以下の物をいただきました。
【お酒】163.穏(おだやか) 純米 180ml
【お酒】1149.穏(おだやか) 純米吟醸 180ml
【お酒】1948.おだやか 純米吟醸 160ml
「江戸中期の1711(正徳元)年に現在の酒蔵のある郡山市田村町金沢で創業した。旧金沢村と屋号の「寳来屋ほうらいや」から、銘柄を「金寶」と命名する由来となった」(※1)という、仁井田本家さん。
正徳元年(1711年)といえば、儒学者であった新井白石が、江戸幕府六代将軍徳川家宣と、その側用人間部詮房との三人でゴールデントリオを結成して、“正徳の治”をガンガン進めていた時期ですよ。
白石は、
「銅くずも同然の小判なんて、ありがたくもなんともねぇよ!」とか、
「将軍ってのはさ、“大君”じゃなくって、“国王”なんだよ!!」
とか言いながら、江戸城中を肩で風を切って歩いていたことでしょう。
ちなみにワタクシのこのブログ“飲みたくなってシマッタの記”という名は、新井白石が八代将軍徳川吉宗に「オマエもう来なくていいから。」と言われてクビになった後に記した、幼少期から当時までの回顧録『折たく柴の記(おりたくしばのき)』の名をを拝借したものなのです。
ま、そんなこと、どうでもいいんですけれどね。(みつまJAPAN’より)
閑話休題。
今日いただくのは、“しぜんしゅ”。
どうやら蔵元さんの名前を付けて、“にいだしぜんしゅ”と呼ばれているみたいです。
“にいだしぜんしゅ”について、文献には以下の記載がありました。
「「にいだしぜんしゅ」の銘のとおり、仁井田本家は「酒は健康に良い飲み物でなければならない」という信条により、1967年に日本で初めて自然米(農薬、化学肥料を使わないで栽培した米)で酒を醸した蔵だ。「金寶きんぽう自然酒」という銘で販売していたが、昨年(2017年:ブログ筆者追記)、自然酒誕生50年を機に、若い人にも親しみやすい「にいだしぜんしゅ」に変更。ラベルもひらがなで銘を記しただけのシンプルなものにした。」(※2)
その“自然米”ですが、
「現在、酒造りに使うのは、農薬も肥料も使わず自社田で育てる米が1割、9割は県内8グループと新潟、宮城の2軒の契約農家による自然栽培米と有機栽培米」(※3)だけで、しかも「有機肥料さえ使わず、稲藁、籾殻、畔の草など、“田んぼの物を田んぼに返す”循環型の自然栽培を貫く。最も大変な草取りは、中野式除草機や手取りのほか、田に生息しているカブトエビに食べてもらっている。」(※2)という徹底ぶり。
こだわっているのは、お米だけではありません。
「“自然派酒母100%”」(※1)をめざすべく、「「しぜんしゅ」は7年前から醸造用乳酸を使用せず、さまざまな菌が淘汰することで酒母を育てる生酛に変えた。」(※4)のだとか。
なお、仁井田本家さんには“穏(おだやか)”というお酒も造られており、それにはかつては白麹(焼酎製造用の麹:防腐効果のあるクエン酸を出す)を用いていたそうですが、これも2022年からは白麹使用をやめて(黄麹の?)生酛(醸造用乳酸を添加しなくても、自然に発生する乳酸が防腐効果をもたらす)に変えたそうです。
さらに、「29BYからは一部の酒を酵母無添加にすることにも挑戦している。」(※2)のみならず、「十数年後にはすべてを木桶で仕込むことを目指す。麹菌は、自社田の玄米を原料に、種麹メーカーが育成した専用菌を使っているが、将来は菌も自社で育てるつもりだ。とのこと。 「目指すのは原料や道具まですべて地元で自給自足し、100%天然菌で醸す酒です」と意気軒高な仁井田さん。」(※5)とあるとおり、“しぜんしゅ”の自然酒たる意義の追求は、とどまるところを知らないようです。
ラベルには、“酵母無添加(蔵つき酵母)”の表示がありました。
酒造年度が2021BY(2021年酒造年度:2021年7月1日~2022年6月30日)で、製造年月(瓶詰した年月)が2023年8月ということは、少なくとも1年2か月は貯蔵期間を置いていたわけですね。
もしかしたら、その間に生じた熟成感を味わえるのかな?
精米歩合は80%!
満たすべき精米歩合の基準がない純米酒ではあるものの、どちらかというと低精白ですね。
なんでもこれは、「「自然栽培米は米そのものがピュアで高品質なので磨く必要がなく、高精白では出せない力強い味わいの酒になる」」(※6)のだとか。
そして低精白でも「掛米は十分に水を吸わせて蒸し、低温発酵を維持してしっかり米を溶かすので、粕歩合も25%と少なめ。」(※6)となるとのこと。
最後に一点だけ。
このお酒は“汲み出し四段仕込み”という、四段仕込の範疇でも特殊な方法を用いて製造されているのだとか。
「 仕込みで特徴的なのは、「にいだしぜんしゅ」を汲み出し四段仕込みにしていることだ。三段まで発酵を進めた後、醪の1割程度をポンプで小さなタンクに汲み出し、そこに蒸米を熱掛けし、4~5日置いてから元のタンクへ戻すという。
「もち米四段(通常の四段仕込法:ブログ筆者追記)はきれいな甘味が出ますが、汲み出し四段は甘味以外のいろんな味も出てきます。最近はきれいな味わいが求められているので、教科書では推奨されていない方法ですが、うちでは無農薬の米を使った生酛で、汲み出し四段仕込みという昔ながらのやり方を貫いています。手間はかかりますが、幅や奥行きが出て複雑な味わいになる。これがうちのオリジナリティになるんです。」
“自然米を使用した生酛”というベースがあってこそ、汲み出し四段仕込みが力を発揮し、雑味ではなく、“複雑な味わい”を生み出すのかもしれない。これこそどの酒にも似ていない、仁井田本家だけの味だ。」(※7)
手元にあった文献で四段仕込について解説しているものには、「甘口清酒を望む場合,三段に仕込んだ留仕込の後,第2留とも称される四段に仕込む方法があり,これを総称して四段仕込という、発酵末期のもろみに総白米量の7~15%程度の物料を用いアルコール添加など次の操作に移る.四段にはうるち・もち・酵素・甘酒・酒母・かす・汲出し・水の各方法があるが,酵素四段が広く普及している.」(※8)と、複数の方法があるものの、その名称が紹介されているだけでした。
今回はそのうち汲み出し四段についてその方法を詳しく解説している文献に出くわすことができたことから、この点もこの“しぜんしゅ”を選んだ成果であったと考えております。
あー、気が済んだ気が済んだ!
それではそろそろ、いただいてみましょう。
16度なのに、純米の原酒ですし、
かつ“冷蔵推奨”の文字がありましたので、
まずは冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。
お酒の色は、少し確認できました。
香りはなし。
うまみは濃いめ!
ウィスキーのような風味がしっかりで、酒臭さ(ほめ言葉。以下同じ)満載。
でも、苦みや雑味はゼロですよ。
キレはよく、スッと引きました。
酸味ははっきり。
すっぱさはやや強めで鋭いね。
酸味自体に深みをしっかりと感じます。
スーはなく、ピリもなし。
甘みはややはっきり。
存在はわかるものの、酸味に覆われているみたい。
濃醇ちょいすっぱ深スッキリ旨口のおいしいお酒でした。
うまみが重厚で、酸味の深みを伴ってかなりどっしりとした味わいでした。
それでいて雑味はなく、かつキレもよいので重たくは感じませんでした。。
この味わいこそが、自然米を使用し、かつ汲み出し四段掛けで造った成果なのでしょうか?
っていうか、これはさ。
まちがいなく、燗でしょうよ!
燗にすると、酒臭い香りが立ちました。
うまみは濃いめ。
枯れた感じが出ましたが、ウィスキーのような風味は消えました。
酒臭さとともに、米のうまみも感じることができるようになりました。
でもキレはよく、後味はスッキリでした。
酸味の深みもよくわかる。
ただ、ちょいスーが出てまいりました。
甘みはちょっと引くかな。
燗にすると、濃醇枯ちょいすっぱ深ちょいスースッキリ旨やや辛口のおいしいお酒になりました。
米のうまみは冷やしたものでは感じなかったものの、燗にすることで出てまいりました。
酸味のちょいすっぱと深みとは同じ。
キレはよく、むしろちょいスーが出てスッキリ感が増しました。
これはまちがいなく燗がおいしいね!
うまみ(酒臭さ+米のうまみ)しっかりで、酸味の深みもしっかり感じることができました。
それでいて雑味がゼロで、かつウィスキーみたいな風味が消え、さらにスッキリしているので、燗のほうが飲みやすい。
“しぜんしゅ”は、燗にしてこそおいしいさをしっかりと味わえる、おいしいお酒でございました。
その“しぜんしゅ”と合わせた今日のエサはこちら。
冷蔵庫に残っていた油揚げ。
油抜きして刻んだもの。
きゅうりとネギ。
わさび。
そろそろ使い切りたいところ。
すべて絞り出しました。
オリーブオイルに、煮切った酢とみりん、塩、昆布だし、コショウで、
わさびドレッシングを作って。
油揚げときゅうりとネギとのわさび和え。
オリーブオイルと合わせたことで、わさびの辛みは飛んでしまってゼロ!
爽やかさだけが残って、おいしゅうございました。
にら。
山形県産(達者de菜)を探していたのですが、なかったので高知産。
卵。
小さかったので、3個使用。
にら玉。
おいしい!
これは予想どおり。
ごちそうさまでした。
(※1)福島民友新聞社編『ふくしま美酒探訪』p.41(2017.8 福島民友新聞社)
(※2)山王かおり『“自然派”蔵の300年目の決意 「日本の田んぼを守る酒蔵になる」』p.03(酒蔵萬流 2018年秋号 第19号 p.02-05 新中野工業)
(※3)山同敦子『にいだしぜんしゅ 自然栽培米で生酛純米酒のみを醸す、気骨のエシカル酒蔵』p.032(dancyu 2023年3月号 p.028-035 プレジデント社)
(※4)(※3)p.33
(※5)(※3)p.34
(※6)佐々木香織『「磨かない酒」新世紀』p.069(dancyu 2020年3月号 p.064-070 プレジデント社)
(※7)(※2)p.04
(※8)灘酒研究会編『改訂 灘の酒 用語集』p.141-142(1997.10 灘酒研究会)
頼んでいた頒布会のお酒が今日届きました。
例の玉柏の酒蔵です。今月は特別純米としぼりたて原酒です。
12月は純米吟醸、1月は純米です。
by 川鮎くん (2023-11-23 19:55)
川鮎くん様、八百津の玉柏、いいですね。
八百津はかつては名鉄八百津線が通っていたので行きやすかったのですが、廃線になってしまい、なかなか難しくなってしまいました。
でもいつか、這ってでも行ってやろうかな。
by skekhtehuacso (2023-11-23 19:59)