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【お酒】163.穏(おだやか) 純米 180ml [07.福島県の酒]

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有限会社仁井田本家
福島県郡山市田村町金沢字高屋敷139番地

精米歩合85%
原材料名 米・米麹
原料米は国産100%
アルコール分14度
180ml詰
(以上、ラベルより転記)





酒屋さんでこのお酒を見つけてラベルを読んだときに、ちょっとびっくりしてしまい、買ってしまいました。
なぜちょっとびっくりしたのか。
それは、このお酒のラベルに、精米歩合85%と表記されていたからです。
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精米歩合とは「精米された白米が、玄米に対してどれだけ残っているかを示す数値」のことです(※1)。
このお酒は精米歩合85%ですが、これは精米前と比べて”85%残っている=15%を削って捨てている”ということになります。


通常私たちが食べるお米は、「一割程度しか精米しない」そうです(※2)。
一割程度ということは、精米歩合90%ということになります。

しかし、お酒の原料米の場合は、特定名称酒であれば、最低でも以下の精米歩合を満たさなければなりません(※3)。
本醸造:精米歩合70%
純米酒:基準なし(平成18年3月までは精米歩合70%の基準があった)
吟醸酒:精米歩合60%
大吟醸:精米歩合50%


一方、今日いただくこのお酒の精米歩合は85%です。
この数値は、お酒の精米歩合よりも、むしろ食用の白米に近い値です。
これは私の感想ですが、純米酒ですので精米歩合の制限はないものの、それでも精米歩合を85%に設定していることは珍しいと思います。
そして、精米歩合85%でおいしいお酒を造るのは、かなり難しいことではないかと思います。


そもそも、「玄米の外側の部分には各種のミネラルやタンパク質、脂肪分など、さまざまな成分が含まれている。ご飯として食べる場合は、これらが旨みとなり、また栄養にもなっている。」そうです。

しかし、「タンパク質が多いと、酒になった際にアミノ酸が多すぎて、味が重くなってしまう。また脂肪分が含まれていれば、当然、油っぽい香りや味が出てくる」ので、これらの成分が残っているとどうしても酒に雑味が多く残ってしまう。」のです。
そこで、米の表面を削り取ることで、これらの成分を取り除いて、すっきりとした切れのよい、きれいな味わいの酒が出来上がる」と言われています(※4)。

そして、これは推測ですが、上記基準が70%~50%の精米歩合を求めているのは、そのくらい削り取らないければ、特定名称酒の酒質を確保することができないとの判断によるものだと思います。
これについてある文献では、「精米歩合80%の米と、70%、50%のものでは日本酒の酒質に歴然とした差がつく。」と断じてさえいます(※5)。


ところが、一方で、精米歩合を下げてお酒を造る動きもあるようです。

ある雑誌では、秋田の新政酒造さんが精米歩合90%の米を使ってお酒造りをすることを試みていると紹介しています。
その理由として「米は磨くほど洗練されるというが、引き換えに個性を失っていく」とのこと。
そして、精米歩合90%の米であっても、「超低温発酵によって雑味を出さず、米そのものの味を強烈に浮かび上がらせることができる。」のだそうです(※6)。

しかし、別の文献では、(超)低温発酵は微生物の活動が鈍くなる。醪の発酵にも時間がかかってしまう」としています(※7)。
時間がかかるということは、それだけ手間やお金もかかるでしょうし、管理もめんどうになるということでしょう。
精米歩合を下げることで必要となる、酒質の維持向上のために払うべき代償は、けっして少なくはなさそうです。


前置きが長くなってしまいましてすみません。

以上のことを踏まえたうえで、精米歩合85%のこのお酒をいただいてみたいと思います。
今日もぬる燗でいただきます。


予想はしていましたが、酸味が少し強めです。
しかし、刺激やピリピリ感はありません。
スッキリしていて、ちょっとだけ渋みがあって、軽快な酸味です。

うまみは少し濃いめです。
吟醸酒のように洗練されたうまみではないですが、それほど酒臭さはありません。
どちらかというと、角のないまろやかなうまみだと思います。
雑味があるかと心配していましたが、それは感じませんでした。
雑味のなさは、丁寧に造ってあることの証拠でしょう。

甘みはひかえめです。
でも、うまみが濃いめのせいか、物足りなさは感じません。


少し強めで軽快な酸味と、まろやかなうまみの、やや濃醇で辛口のおいしいお酒でした。
精米歩合85%でも、おいしいお酒を造ることができるということがわかりました。


(※1)松崎晴雄『日本酒をまるごと楽しむ!』p.51(2007.1 新風舎)
(※2)※1p.25
(※3)清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)1.2.
(※4)※1p.21
(※5)秋山裕一『日本酒』p.51(1994.4 岩波新書)
(※6)dancyu 2014年3月号 p.23(プレジデント社)
(※7)佐々木ゆみ子+恒文社編集部『八海山 魚沼 雪の中の酒蔵』p.144(2009.7 恒文社)
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あ~酒臭かった! 19

酒くさコメント 4

ちゅんちゅんちゅん

おはようございます!
勉強になりました☆
ラベルを見るクセをつけないと~^^;
by ちゅんちゅんちゅん (2014-03-07 08:51) 

hypo

精米歩合85%のお酒にはまだ出合ったことがありません、飲んでみたい日本酒ですね~。
by hypo (2014-03-08 06:58) 

skekhtehuacso

ちゅんちゅんちゅんさん、ラベルは見たほうがいいですよ。
糖類や酸味料が入っているかどうか確認するためにも。
また、製造年月日も確認して、できるだけ新しいものを買ったほうがいいと思います。
by skekhtehuacso (2014-03-09 23:22) 

skekhtehuacso

hypoさん、コメントありがとうございます。
私も今回が初めてでした。
おもしろい体験でした。
by skekhtehuacso (2014-03-09 23:26) 

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