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カップ酒は熟成するのか?:(2)秋鹿千秋の場合 [やってみた]

“秋鹿 純米酒 千秋 カップ”

製造者 大阪府豊能郡能勢町倉垣1007
秋鹿酒造有限会社

日本酒
純米酒
アルコール分 14度
原材料名 米・米こうじ
国産米100%使用
精米歩合70%
内容量180ml
(以上、フタより転記)




2013(平成25)年8月から書き始めたこのブログ。
性懲りもなく、毎回毎回飲んだくれたり、面白くもない酒気帯び徘徊記事を公開したりで、気づけばすでに書き始めから10年以上経過しておりました。

その草創期に、【お酒】34.秋鹿 純米酒 千秋 300mlをいただいておりますが、
今日はそのカップ酒である“秋鹿 純米酒 千秋 カップ”をいただきます。
正式名称かどうかはわかりませんが、“バンビカップ”と称されてもおりますね。
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品質表示は、フタに記載されておりました。
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製造年月は、2024年1月
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ところで、【お酒】34.秋鹿 純米酒 千秋 300mlの記事で掲載した写真には、
300ml瓶とともに、カップ酒が写っております。
その写真がコレ。
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このカップ酒、
実は今でも手元にあるのです。
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製造年月は“25.7”と書かれております。
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この記事は2024年3月20日に書いておりますので、この製造年月の表示が2025年7月を意味するはずはございません。
そう、これは“平成25(2013)年7月”に製造されたものなのです。
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この平成25(2013)年7月製造分の秋鹿千秋カップは、2013年に入手した時から、
このブログが終焉する頃まで冷蔵庫で保管し、新しいものと飲み比べて熟成の具合を試してみよう!
と思い、
10年以上のあいだ冷蔵庫の中でお眠りいただいていたものなのでした。
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要するに、今日は、
カップ酒でも冷蔵庫で熟成させればおいしくなるのか否かを確認してみよう!
という、このブログの草創期から考えていた企画を、ついに実現する運びとなった日なのでした。


外見からは、
お酒の色にちがいが生じていることがわかります。
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それではいただきましょう。
まずはひや(常温)で試します。
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2024年1月製造分から。
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香りはなし。

米のうまみが最初に来て、厚みを少し感じます。
軽い苦みを伴うようです。
熟成感はなく、酒臭さはかすかです。
キレは、純米酒にしてはよいほうだと思います。

酸味はややひかえめ。
すっぱさはわかるもののかなり弱め。
ちょいスーですが、ピリはなし。

甘みはっきり。
けっこう幅を感じます。

やや濃醇でちょい苦ちょいスー旨甘口のおいしいお酒でした。
米の風味がしっかりで飲み応えがありましたが、純米酒にしてはキレがよく、かつちょいスーで軽さも感じました。
軽い苦みがありましたが、それがお酒の味わいをいい感じに引き締めているようでした。
甘みはしっかりでしたが、クドさやべとつきはありませんでした。

おいしいね!

次に、2013年7月製造分を。
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たしかに枯れています。
熟成感をしっかりと感じるものの、角や荒さは感じません。
ただ、軽い渋みをちょっとだけ伴うかな。
軽い苦みは、2024年1月製造分と同じ。
キレはこっちのほうがよいかな。

酸味はひかえめ。
すっぱさは消えたみたいです。
でもちょいスーは同じ。

甘みはややはっきり。
少し引いたみたいでした。

やや濃醇でちょい枯ちょい渋ちょい苦ちょいスー旨やや甘口のおいしいお酒でした。
熟成感が角や荒さを伴うことなく、いい感じに枯れておりました。
それでいて、ひねたりムレたりといったようなことはありませんでした。


次に、燗で比較してみました。
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2024年1月製造分から。
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米のうまみに、厚みと共に鋭さを感じるようになりました。
苦みも少し鋭くなるみたいです。
キレは同じ。

酸味は、すっぱさは同じ。
ちょいスーも同じ。
でも、酸味自体の深みを少し感じるようになりました。

甘味は少し引いて、軽くなったようでした。

やや濃醇でちょい苦ちょい深ちょいスー旨やや甘口のおいしいお酒になりました。
燗のほうがうまみに厚みだけでなく鋭さも出て、より一層はっきりしてまいりました。
それに酸味の深みも少しですが加わって、ひやよりも飲み応えがありました。
でも依然としてキレよくちょいスーなせいか、濃くは感じませんでした。

次に、2013年7月製造分を燗で。
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熟成感が映えますね。
でも、米のうまみもしっかりで、負けてはおりません。
もちろん、角や荒さ、クセは一切なし。
渋みや苦みはそのまま。

酸味や甘みも同じかな。

燗にすると、やや濃醇で枯ちょい渋ちょい苦ちょいスー旨やや甘口のおいしいお酒になりました。
熟成感=枯れ具合を、ひやよりもはっきりと感じました。
でも決して角や荒さはなく、かつ米のうまみも伴って決してスカスカではありませんでした。


★☆結論★☆

2013年7月製造分は、理想的なほどよい具合に枯れていて、熟成感を楽しむことができました。
それでいて角や荒さは出ておらず、腐ったりムレたりした様子もございませんでした。

あたしゃ当初は、カップ酒は瓶(先端がくびれている)よりも空気と触れる面積が広いことから、酸化や劣化、腐敗を心配しておりました。
また蒸留酒(焼酎、ウィスキーなど)と異なり清酒は醸造酒ですから、有機成分を含んでいますしね。

しかしその心配は杞憂で、むしろ上品な熟成酒としてとてもおいしくいただくことができました。

なぜ、そうなったのか?
秋鹿が良質なお酒だったからでしょうか?
それとも、パスツールが1865年に発見したと言われている“低温殺菌法”に先駆けること300年前の室町時代から連綿として続いている“火入れ”清酒製造における腐敗防止の方法:65℃前後で加熱して有害な微生物を殺すとともに、酒の中に残存して活性を保っている麴などの酵素類を破壊して香味を調整し、保存性を高める」(※1))の技術のおかげなのでしょうか?


これにて一件落着。

(※1)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.144(2000.4 柴田書店)