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【お酒】690.臥龍梅 純米吟醸 カップ [22.静岡県の酒]

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三和酒造株式会社
静岡県清水区西久保501-10

アルコール分/16度以上17度未満
原材料名/米(国産)・米こうじ(国産米)
精米歩合/55%
180ml詰
(以上、ラベルより転記)




三和酒造さんについて、文献では以下のように紹介されておりました。
元禄年間(一六八八~一七〇四)より続く三つの蔵元(清水酒造㈱、㈱小泉本家、鶯宿梅酒造㈱)が、清酒製造業構造改善計画により、一九七一年(昭和四六年)五月に合同、一九七三年一一月に西久保工場を本社工場と改めた。」(※1)

これまでにいただいたお酒の蔵元さんの中には、戦時統合で複数の会社が合併したところがいくつかありました。
一方で戦後の合併例には、六歌仙さんや一ノ蔵さんなどがありましたが、もしかしたらこれらにも上記の清酒製造業構造改善計画とやらが絡んでいたのでしょうか?

私はこの計画のことを全く知りませんでしたので、これについては今後の研究課題とさせていただきます。


このお酒には、要冷蔵である旨が表示されています。
しかし、生酒である旨の表示はありません。
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生酒である旨の表示はあくまでも任意ですが(※2)、生酒のように「製成後一切加熱処理をしないで製造場から移出する清酒」にであれば、「「要冷蔵」、「冷蔵庫に保管して下さい。」、「冷やしてお早めにお飲みください。」等の「消費者及び流通業者の注意を喚起するための表示」を「保存若しくは飲用上の注意事項」として表示する必要があります(※3)。

ということは、このお酒は生酒であるか、あるいは生酒ではないものの任意で要冷蔵の表示をしているか、いずれかということでしょう。


一方、このお酒のアルコール度数ですが、16-17度とやや高めです。
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このお酒はアル添なしの純米吟醸ですから、16-17度ということは、原酒であるか、あるいは加水量が少ないお酒であるということではないでしょうか?


これらのことを考慮しつつ、そろそろいただいてみたいと思います。
純米吟醸酒ですので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。

お酒の色は、ちょっとはっきりしていました。
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フタを開けて口に含むと、お酒のよい香りを感じました。
フルーティさは少ないものの、新酒のようなよい香りを感じました。
これはやはり生酒なのでしょうか?

うまみは濃くはないものの、しっかりしています。
お米のうまみがしっかり出ています。
吟醸酒らしい苦みがほんのわずかにありましたが、他に雑味はありませんでした。

酸味は少し感じます。
すっぱさはほとんどないものの、さわやかさを感じる酸味です。
刺激やピリピリ感はありません。

甘みはちょっとあるみたいです。
ほんのりと感じる程度で、べとついた感じはまったくありません。


お酒の風味がすがすがしい、爽快旨口のおいしいお酒でした。
これはこの風味を楽しむお酒でしょう。
食事との相性はあまりよくはないかもしれませんが、飲みやすくて気もちのよいお酒でした。


(※1)高橋清隆『新・静岡県の地酒 名酒蔵めぐり』p.92(1996.7 静岡新聞社)
(※2)清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)5(5)
(※3)清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)3(3)、酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達第86条の6 酒類の表示の基準 2(3)ハ

【お酒】589.出世城 本醸造 出世大名家康くんカップ [22.静岡県の酒]

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浜松酒造株式会社
静岡県浜松市中区天神町3-57

原材料名/米(国産)・米麹(国産米)・醸造アルコール
精米歩合/65%
アルコール分/15度以上16度未満
180ml詰
(以上、ラベルより転記)



出世大名家康くんのカップ酒は、かつて花の舞酒造さんの商品をいただいております。
同じ浜松の蔵元さんでも、こちらは浜松市の市街地に位置する蔵元さんのようです。

このお酒の名である“出世城”について、文献では以下のように紹介していました。
徳川家康は、浜松城を拠点とした時期から出世し始めたということで浜松城のことを出世城と称していた。そこから取られた銘であり縁起も良い。」(※1)

誉高いのは酒銘だけではなく、どうやらこのお酒の蔵元さんもまた、「浜松酒造の当主中村家は十五代続く旧家で、旧天神村の村長や浜松市長も務めた家柄。」(※2)と、出世城の酒銘に恥じぬほどの名家なのだとか。


そんな名家の蔵元さんが造る誉高い酒銘のお酒を、もう絶対に出世しないことが確定した私がいただいて、はたしてその味を正確に理解することができるのでしょうか。
いささか不安ではございますが、心していただきたいと思います。
本醸造ですので、今日もぬる燗でいただきます。

このお酒ですが、なかなかおいしそうな色をしています。
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うまみはやや濃いめで、しっかりしています。
醸し出された酒臭い(←ほめ言葉です)うまみがします。
それに、香ばしさを少し感じますが、これは熟成によるものでしょうか?
それでいてキレがよく、口の中にパッと広がったあとで、スッと引いていきます。
少し苦みもあるようです。

酸味はややはっきりしています。
すっぱさが主な酸味です。
刺激やピリピリ感はありません。

甘みはひかえめです。
ほとんど感じないくらいです。


しっかりしているもののキレのよいうまみに、酸味がすがすがしい、やや濃醇で旨辛口のおいしいお酒でした。
キレがよく、しかも甘みが少ないので、やや濃いめなのにかなりスッキリしています。
やっぱり、出世するためには、やるときゃしっかりやって、引き際はサッと引く必要があるのかもしれませんな。
私のように、いろいろとやってみてはことごとく失敗し、しかもその失敗をいつまでも引きずっているようでは、そりゃ出世できないはずです罠。


(※1)高橋清隆『新・静岡県の地酒 名酒蔵めぐり』p.220(1996.7 静岡新聞社)
(※2)静岡新聞社編『地酒をもう一杯』p.54(1998.7 静岡新聞社)

【お酒】561.小夜衣 純米清酒 カップ [22.静岡県の酒]

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森本酒造合資会社
静岡県菊川市堀之内1477

アルコール分 15度以上16度未満
原材料名 米・米こうじ
全量国産米使用
精米歩合 65%
180ミリリットル詰
(以上、ラベルより転記)




小夜衣という酒銘について、文献では以下のように紹介していました。
創業は、慶応年間(1865~1868)。銘は『新古今和歌集』から採ったものという。「小夜衣」は夜着のことである。」(※1)

では、なぜ“小夜衣”という名を採用したのでしょうか?
すみません、それはわかりませんでした。


先日いただいた春鶯囀もそうでしたが、このお酒もラベルに名画が印刷されています。
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おそらくこの絵は、東海道五十三次のうちの一枚で“日坂宿(にっさかじゅく)”ではないかと思います。


静岡県酒造組合のWebsiteには、このお酒の蔵元さんを紹介するページがあります。
社長の写真も載っていて、「髭がトレードマークで一見ぶっきらぼう。が、どこかに繊細な感覚を匂わしている。一度会ったら忘れられない、じつに味のある社長」(※2)のお姿を拝見することができます。
そのお方の、「ほとんど一人で仕込んでいる」とか、あるいは「鑑評会には出さない」といった話が紹介されていますので、もし興味がおありでしたら上記リンク先をお読みください。


ネタも尽きたことですし、そろそろいただいてみたいと思います。
純米酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。

このお酒ですが、なかなかおいしそうな色が着いています。
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うまみはそれほど濃くは感じませんが、かなりしっかりしています。
醸し出された酒臭い(←ほめ言葉です)うまみです。
それに、香ばしさも豊かですが、これは熟成によるものでしょうか。
それでいてキレがよく、スッと引いていきます。
しっかりしているのに濃く感じないのは、キレがよいからかもしれません。
苦みや雑味は感じませんでした。

酸味ははっきりしています。
すっぱさがあって、しかもスーッとさわやかです。
でも、刺激やピリピリ感はありません。

甘みはかなりひかえめで、ほんのわずかに感じる程度です。
ですが、ドライな感じはしませんでした。


しっかりしているもののキレのよいうまみに、さわやかな酸味がよく合っている、やや濃醇で旨辛口のおいしいお酒でした。
飲みごたえがあるのに、キレがよくて雑味が無く、きれいな味わいでした。
これはうまい!うますぎる。


(※1)高橋清隆『新・静岡県の地酒 名酒蔵めぐり』p.177(1996.7 静岡新聞社)
(※2)静岡新聞社編『地酒をもう一杯』p.58(1998.7 静岡新聞社)

【お酒】560.花の舞 出世大名家康くんカップ [22.静岡県の酒]

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花の舞酒造株式会社
静岡県浜松市浜北区宮口632

原材料名/米(静岡県産)・米こうじ(静岡県産米)・醸造アルコール
アルコール分/15度以上16度未満
精米歩合/60%
容量/180ml
(以上、ラベルより転記)




花の舞酒造さんのお酒は、かつて本醸造のカップ酒と、静岡で育成された酒造好適米“誉富士”を使用した純米吟醸酒(世界遺産富士山と共にカップ)静岡県産山田錦を使用した純米吟醸酒、そしてアル添吟醸酒カップ(純米吟醸酒との飲み比べ)とをいただいております。
今日いただくこのお酒は、浜松市のゆるキャラをその名にいただくお酒です。


ラベルに描かれているこのゆるキャラは、はままつ福市長「出世大名家康くん」なのだとか。
ラベルには、絵だけではなく、その所以も書かれています。
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ところで、このお酒の品質表示を見ていて、あることに気づきました。
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この表示内容って、かつていただいた本醸造カップと全く同じでした。

ということは、中身の酒は本醸造の基準に該当するものなのでしょうか?
ラベルには、本醸造である旨の表示はどこにもありません。
特定名称を名乗るかどうかは任意ですから、たとえ特定名称酒の基準に該当しても、必ずしも名乗る必要はありません。


では、はたしてこの中身は、本醸造カップと同じお酒なのでしょうか?
それを確かめるべく、今日は慎重にいただいてみたいと思います。
じゃあ、いつもはいいかげんなのかよ!

特定名称酒ではないみたいですので、今日もぬる燗でいただきます。

お酒の色は、ほとんど目立ちませんね。
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ああ、やっぱり。
この味は、覚えがありますよ。

この淡いうまみとはっきりした苦み。
そしてちょいピリの酸味。
甘みは少しはっきり。

こりゃきっとね、本醸造カップと同じお酒ですよ。
これのどこが慎重なんだよ!

【お酒】556.557.花の舞 純米吟醸&吟醸酒 飲み比べ [22.静岡県の酒]

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花の舞酒造株式会社
静岡県浜松市浜北区宮口632



花の舞酒造さんのお酒は、かつて本醸造のカップ酒と、静岡で育成された酒造好適米“誉富士”を使用した純米吟醸酒(世界遺産富士山と共にカップ)、そして静岡県産山田錦を使用した純米吟醸酒とをいただいております。
今日は、純米吟醸酒と、醸造アルコールが添加されている吟醸酒とを飲み比べてみたいと思います。

双方とも、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。



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花の舞 純米吟醸 カップ
原材料名/米(静岡県産誉富士100%)・米こうじ(静岡県産米誉富士100%)
精米歩合/60%
アルコール分/15度以上16度未満
180ml
(以上、ラベルより転記)


このお酒の品質表示は、かつていただいた純米吟醸酒 世界遺産富士山と共にカップと全く同じですね。
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ということは、おそらく中身も同じでしょう。
ですので、味の感想は上記リンク先をご参照ください。
手抜きかよ!

お酒の色は、こんな感じでした。
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うまみだけを抽出したような、やや濃醇でやや辛口のおいしいお酒でした。




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花の舞 吟醸酒 カップ
原材料名/米(静岡県産)・米麹(静岡県産米)・醸造アルコール
アルコール分/15度以上16度未満
精米歩合/55%
180ml
(以上、ラベルより転記)


こちらは、醸造アルコールが添加されている吟醸酒です。
それ以外のちがいは、米の品種が特定されていないこと、そして精米歩合が純米吟醸酒よりも高いことでしょうか。

お酒の色は、純米吟醸酒よりも淡いですね。
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ああ、こっちはちょっとだけ香りがありますよ。
フルーティというか、なんとなく上等な接着剤のような香りです。
上等な接着剤のにおいを嗅いだことがあるのかよ!

うまみは淡めですが、ピンと舌を突いてくる感じです。
酒臭さや熟成感はなくて、お米のうまみそのものだと思います。
それが口の中で広がったあと、スッと引いていきます。
苦みや雑味は感じませんでした。

酸味はほとんど感じません。
わずかにさわやかさを感じる程度です。
当然ながら、刺激やピリピリ感はありません。

甘みもほとんど感じません。
ほんのわずかにあるかどうかです。


吟醸香がわずかにあって、淡めながらお米のうまみが舌を突いてくる、淡麗やや辛口のおいしいお酒でした。
純米吟醸酒と比べると、香りがはっきりしています。
それに、うまみが淡いだけでなく、雑味がなくてきれいな味わいでした。
醸造アルコール添加の効果についてはかつてこちらでまとめておりますが、今回の飲み比べではそれを実感することができました。

【お酒】548.初亀 純米 カップ [22.静岡県の酒]

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初亀醸造株式会社
静岡県藤枝市岡部町岡部744番地

原材料名 米(国産)・米麹(国産米)
精米歩合 60%
アルコール分15度以上16度未満
180ml詰
(以上、ラベルより転記)



昨日いただいた普通酒の酒浪漫急冷美酒カップに引き続き、今日も初亀醸造さんのお酒をいただきます。
今日いただくこのお酒は、純米酒です。


昨日の普通酒には“山田錦100%使用”の表示がありましたが、今日いただくこのお酒にはその表示がありません。
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純米酒のような特定名称酒で使用するお米は、農産物検査法上の制度下で3等米以上と格付けされたお米でなければなりません(※1)。
ということは、今日いただくこの純米酒には、山田錦ではないものの3等米以上のお米が使われているはずです(もし山田錦が使われていたら、普通酒と同様に表示するはずですよね)。

一方、普通酒には、この制限は適用されません。
これらのことをふまえると、昨日の記事にコメントをくださった方が指摘されていたとおり(←ありがとうございました)、昨日いただいた普通酒で使用されている山田錦は、3等米以下とされたものか、あるいはあえて検査を受けていないものなのかもしれませんね。
これは私の推測ですが、それ故に、この純米酒ではその山田錦を使用できないのではないでしょうか?


まあでも、そんなこと、どうでもいいことでしょう。
普通酒であろうが特定名称酒であろうが、あるいは使われているお米が山田錦であろうとなかろうと、造られたお酒がおいしければそれでよいのですよ!
だったらどうでもいいことをダラダラと書くなよ!


昨日いただいた普通酒はおいしいお酒でしたが、はたして今日いただくこの純米酒はおいしいお酒なのでしょうか。
おいしいお酒であることを願いつつ、純米酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。

昨日のお酒もそうでしたが、このお酒もおいしそうな色をしています。
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うまみはかなり濃いめです。
醸し出された酒臭い(←ほめ言葉です)うまみと共に、かなり深みのある熟成感を覚えます。
それに、わずかにですが香ばしさを感じました。

酸味はひかえめでしょう。
昨日の普通酒とは異なり、こちらはすっぱさを感じる酸味でした。
刺激やピリピリ感はありません。

甘みはひかえめで、ほんの少し感じる程度です。
お酒の味にコクを添えています。


濃くて深みのあるうまみがガツンと攻めてくる、濃醇やや辛口のおいしいお酒でした。
とても飲み応えのあるお酒でした。
普通酒のほうが飲みやすいお酒でしたので、好みの分かれるところでしょう。
私としては、普通酒のほうが食事と合わせやすいのではないかと思いました。


(※1)清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)1(2)

【お酒】547.初亀 酒浪漫 急冷美酒 カップ [22.静岡県の酒]

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初亀醸造株式会社
静岡県藤枝市岡部町岡部744番地

アルコール分15度以上16度未満
原材料名/米(国産)米こうじ(国産米)醸造アルコール
山田錦100%使用
180ml詰
(以上、ラベルより転記)



面白いお酒だと思います。

このお酒ですが、普通酒なのに、山田錦100%使用なのだとか。
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山田錦と言えば“酒米の王様”と言われるほど優秀なお米で、しかも栽培も難しいことから、酒造業界では高値で取引されているはずですよね。
それを一番安い普通酒にふんだんに使うなんて、ずいぶんと太っ腹な蔵元さんですね。
もっとも、山田錦にもピンからキリまであるでしょうが。


また、このお酒には“急冷美酒”なる名前が付けられています。
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これは一体どういう意味なのでしょうか?
手元の文献や組合のWebsiteでは、この意味について触れていませんでした。
それに、蔵元さんはWebsiteを開設していないみたいですので、正確なところはわかりませんでした。

それでも、Web上にはこのことについて言及している記述がいくつかありました。
それによれば、特殊な機械で火入れするだとか、あるいは火入れ後にお酒を急速で冷やすことで生酒らしさを残しているのだとか…。
出自の不明な情報ですのでなんとも言えませんが、はたしてそんなことが可能なのでしょうか?


山田錦100%だろうが、急速美酒だろうが、おいしいお酒でなければ意味がありません。
それを確かめるべく、そろそろいただいてみたいと思います。
普通酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。

このお酒ですが、とてもおいしそうな色をしています。
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うまみは濃くて、しっかりしています。
醸し出された酒臭い(←ほめ言葉です)うまみと共に、深みを感じます。
この深みは熟成によるものでしょうか?
それなのに、キレがよくてスッと引いていきます。
しかも、苦みや雑味がありません。

酸味はけっこうはっきりしています。
スーッとさわやかな酸味です。
刺激やピリピリ感はありません。

甘みはひかえめですが、その存在ははっきりしています。
お酒の味にコクを添えているようです。


濃くて深みのあるうまみと、さわやかな酸味との、濃醇旨口のおいしいお酒でした。
純米酒かと思うくらい濃くて深い味わいです。
それでいて、キレがよくてさわやかで、しかも雑味を感じません。
これが山田錦100%の成果なのでしょうか?
それとも、急冷美酒たる所以なのでしょうか?
うまい、うますぎる!(←音が出ます)

【お酒】546.花の舞 山田錦純米吟醸 300ml [22.静岡県の酒]

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花の舞酒造株式会社
静岡県浜松市浜北区宮口632

原材料名/米(静岡県産)・米こうじ(静岡県産米)
静岡県産山田錦100%使用
精米歩合/55%
アルコール分/16度以上17度未満
300ml
(以上、ラベルより転記)


花の舞酒造さんのお酒は、かつて花の舞の本醸造と、そして昨日、誉富士を使用した純米吟醸カップとをいただいております。
今日いただくこのお酒は、静岡県産の山田錦を100%使用した純米吟醸酒です。


昨日いただいた純米吟醸酒は、静岡で育成された誉富士を使用したものでした。
その誉富士は、山田錦に放射線照射と系統選抜とを施してその長稈を克服した、静岡県の奨励品種でした。

一方で、このお酒は“静岡県産"の山田錦を使用しているとのこと。
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おいおい、静岡県がせっかく誉富士を奨励品種ににしたのに、蔵元さんはどうしてまだ山田錦を使うのでしょうか?
というか、静岡県では今でも山田錦を作り続けているのかよ!

山田錦は“酒米の王様”と言われ、しかも「「山田錦」で造った酒の味は、濃醇で幅があるとよく言われる。」とか、あるいは「「山田錦」の酒は味、香りに広がりが違い、口の中の広がりがふくよかである。」のだとか(※1)。
一方、誉富士で造ったお酒は「'味にふくらみがある''やわらかい''きれい'など、独自の特徴があり、概ね良好な結果が得られています」とのこと(※2)。

両者ともふくらみがあるとの表現が使用されていますが、山田錦のほうには“濃醇で幅がある”との表現があるのに対して、誉富士のほうには“やわらかい”“きれい”との表現が使われています。
このちがいは、はたして実際に造られたお酒に現れるのでしょうか?


そんなことを考えながら、このお酒をいただいてみたいと思います。
純米吟醸酒ですので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。

お酒の色は、わずかに確認できるくらいです。
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口に含むと、フルーティーな吟醸香をわずかに感じます。
プンプンしておらず、ちょうどよいくらいだと思います。

うまみは濃いめですが、とてもきれいでスッキリしたうまみです。
口の中でフワッと広がって、スーッと消えていきます。
お米のうまみのよいところだけを抽出したようなうまみです。
それに、苦みや雑味は全くありません。

酸味はひかえめです。
ほんのわずかにすっぱさを感じる程度です。

甘みは少し感じます。
しかし、甘いというよりも、むしろコクを添える程度に存在するような感じの甘みだと思います。


お米のうまみが抽出されていて、しかもとてもきれいな味わいの、濃醇旨口のおいしいお酒でした。
山田錦の“濃醇で幅がある”あるいは“ふくよか”という味わいは、このきれいだけれどもコクがある味わいのことなのでしょうか?
こういう味わいって、山田錦しか出せないのでしょうか?
世の中には山田錦を目指して改良された酒米はたくさんありますが、やはりどれも目指すべき目標にはまだ到達していないのでしょうか?
これらのような疑問を抱きながら、それらの解決を目指すべく、今後もお酒を飲み続けていきたいと思います。
酒を飲むための言い訳だな。


(※1)兵庫酒米研究グループ編著『山田錦物語 人と風土が育てた日本一の酒米』p.27(2010.4 神戸新聞総合出版センター)
(※2)静岡県経済産業部『水稲の新しい奨励品種「誉富士」の特性』p.3(静岡県/あたらしい農業技術 No.535 平成22年度)

【お酒】545.花の舞 純米吟醸 世界遺産 富士山と共に カップ [22.静岡県の酒]

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花の舞酒造株式会社
静岡県浜松市浜北区宮口632

原材料名/米(静岡県産誉富士100%)・米こうじ(静岡県産米誉富士100%)
精米歩合/60%
アルコール分/15度以上16度未満
180ml
(以上、ラベルより転記)



花の舞酒造さんのお酒は、かつて本醸造のカップ酒をいただいております。
今日いただくこのお酒は、富士山をラベルにいただく純米吟醸酒です。


このお酒ですが、“誉富士”なる酒米だけを使用して造られているようです。
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この誉富士は、静岡県の奨励品種となっている酒米とのこと。
手元にあった文献では「山田錦の耐倒伏性の改良を目標として、放射線処理とその後の系統選抜により育成。短稈で耐倒伏性が強く、収量が多い。」と紹介されておりました(※1)。

山田錦が“酒米の王様”と言われるくらい優れた品種であるることは、敢えて触れる必要も無いくらいよく知られていることでしょう。
しかし、その山田錦は長稈(根から穂までの“茎”の部分が長いこと)で倒れやすいのみならず、穂発芽を起こしたり病気にかかりやすく、“農家泣かせの栽培困難品種”と言われるほど栽培方法が難しい品種なのだとか。
このことは、、かつてこちらで紹介しておりますので、ご参照ください。


そして、静岡県の報告書では、「平成10年に「山田錦」の籾へ放射線を照射し、その後、農林技術研究所で突然変異体として選抜」をして“誉富士”を育成し、「平成22年度から本県奨励品種に採用」されたと紹介されていました(※2)。

この誉富士は、「稈長が「山田錦」より27cm程度短く、穂長もわずかに短く、穂数はほぼ同じ偏穂重型」で、「耐倒伏性は極めて優れ」ているとのこと(※3)。
しかもそれでいて、「低い方が上質の酒造が可能とされる玄米タンパク質含量は「山田錦」並からやや低い」とのことですから、酒米としての性質も優れているようです(※3)。


しかし上記の報告書では、誉富士は「「山田錦」の最大の欠点である倒伏を短稈により克服した」ものの、それでも「決して栽培適性の優れた品種ではありません」と紹介されています(※4)。

というのも、「「誉富士」は穂発芽し易く、刈り遅れが品質を低下させる要因となるため、適期刈り取りには細心の注意が必要」なのだとか(※5)。
また、「出穂・成熟期は「山田錦」と同等の晩生熟期です。平坦地では、5月30日前後の田植えで、8月24日頃に出穂期、10月4日頃成熟期に達します。」とあることから(※2)、台風被害も考慮しなければならないことでしょう。
それにやっぱり、「耐病性及び障害抵抗性」については、「「山田錦」と同様に葉いもち、穂いもちともに弱く、穂発芽しやすい」とのこと(※3)。


ということは、結局のところ、誉富士は、単に山田錦を短くしただけの品種ということでしょうか?
たしかに、山田錦の性質をできるだけ残すということは、山田錦の優れた品質をそのまま受け継ぐことにもなるわけですよね。
育成に関する難しさが残っても県の奨励品種としているわけですから、短稈にしたことはきっと画期的なことだったのでしょう。


では、誉富士で造ったお酒はおいしいのでしょうか?
これについて上記の文献では「県内酒造会社7社で精米歩合50~60%で醸造適性試験を行った結果、(中略)精製酒の官能評価は'味にふくらみがある''やわらかい''きれい'など、独自の特徴があり、概ね良好な結果が得られています」と紹介されていました(※6)。

はたして本当にそうでしょうか?
それを確かめるべく、このお酒をいただいてみたいと思います。
純米吟醸酒ですので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。

色は、少し着いているのがわかります。
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吟醸香はほとんど感じませんでした。

うまみはやや濃いめで、しっかりしています。
お米のうまみとともに、熟成感を少し感じました。
それでいて、キレがよくて後味がすっきりしています。
わずかに苦みがあるようですが、それ以外に雑味はないみたいです。

酸味はひかえめです。
すっぱさをわずかに感じる程度です。

甘みもひかえめです。
わずかに感じる程度です。


うまみだけを抽出したような、やや濃醇でやや辛口のおいしいお酒でした。
酸味や甘みを抑えてあるのが、吟味して造られた成果でしょう。
うまみがしっかりしているので、飲みごたえがあります。
それでいて、キレがよくてスッキリしていて、クドさを感じません。
上記の'味にふくらみがある''やわらかい''きれい'という評価は、頷けるものだと思います。


(※1)副島顕子『酒米ハンドブック』p.66(2011.7 文一総合出版)
(※2)静岡県経済産業部『水稲の新しい奨励品種「誉富士」の特性』p.1(静岡県/あたらしい農業技術 No.535 平成22年度)
(※3)(※2)p.2
(※4)(※2)p.8
(※5)(※2)p.4
(※6)(※2)p.3

【お酒】541.花の舞 本醸造 カップ [22.静岡県の酒]

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花の舞酒造株式会社
静岡県浜松市浜北区宮口632

原材料名/米(静岡県産)・米こうじ(静岡県産米)・醸造アルコール
アルコール分/15度以上16度未満
精米歩合/60%
180ml
(以上、ラベルより転記)




花の舞酒造さんについて、文献では以下のように紹介していました。
一八六四年(元治元年)創業。銘は、天竜川の上流、佐久間町川合の八坂神社に伝わる五穀豊穣を願う奉納踊りに由来するという。「伊勢の国天岩戸を押し開き花や神祭を舞いや遊ぶやら」という部分から取ったものだが、これは天照大神の岩戸隠れの神話に由来するものともいう。」(※1)


また、このお酒について「花の舞は地元静岡で一番親しまれている地酒だろう」(※2)と評したり、「「花の舞」の地盤は、地元の県西部のみならず、以前より静岡市の酒店や飲食店にも広がっていった。」(※3)との記述もありました。

実際にこのお酒は、新蒲原のスーパーで見つけました。
新蒲原は静岡県の東部に位置し、蔵元さんがある浜北からは直線距離で80km以上も離れています。
それに、先日、静岡で酒集めをした際には、静岡県内の多くのスーパーでこの蔵元さんのお酒を見かけましたので、上で紹介した記述は正しいようです。


また、花の舞酒造さんは「一九九二年からは三増酒を打ち切」ったり(※4)、「普通酒をやめて全量特定名称酒に切り換え」たりと(※5)、酒質改良に熱心に取り組んでこられたようです。
ということは、今日いただくこの本醸造酒は、花の舞シリーズの中でも最も標準的なお酒ではないかと推測し得ると思います。


ということで、その本醸造酒をいただきたいと思います。
本醸造ですので、今日もぬる燗でいただきます。

色はあまり濃くはないですね。
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うまみは、私はかなり淡いと感じました。
かもし出された酒臭さ(←ほめ言葉です)をかすかに感じるようにも思いましたが、気のせいかもしれません。
それよりも、苦みがけっこう目立つようです。

酸味はけっこうはっきりしています。
さわやかさもあるのですが、それ以上にかなりピリッと感じました。

あまみはややはっきりしているように思います。
しかし、これはベトつかないさらっとした感じの甘みでした。


酸味と苦みとがはっきりしている、淡麗ややピリ辛口のお酒でした。
“辛口”と言っても、“甘くない”という意味ではなくて、ピリピリ感が気になる味でした。
もしかしたら、燗にしてしまったことで酸味と苦みとが際立ってしまったのかもしれません。
でもねぇ、本醸造ですから…。


(※1)高橋清隆『新・静岡県の地酒 名酒蔵めぐり』p.212(1996.7 静岡新聞社)
(※2)静岡新聞社編『地酒をもう一杯』p.56(1998.7 静岡新聞社)
(※3)(※1)p.214
(※4)(※1)p.213
(※5)(※2)p.57
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