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【お酒】1763.松尾大社 御神酒 [28.兵庫県の酒]

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太田酒造株式会社
神戸市東灘区深江南町二丁目1の7
(箱より転記)

原材料名:米(国産)・米こうじ(国産米)・醸造アルコール
アルコール分:15.0度以上16.0度未満
内容量:180ml
(フタより転記)




今日は、わが国における“三大酒の神様(大神神社・松尾大社・梅宮大社)の一つである松尾大社で入手した御神酒をいただきます。

三大酒の神様の中でも、松尾大社は大陸との関係、それも帰化豪族であった秦氏との関わりが深いようです。
このことについて、手元にあった文献には以下のように記載されておりました。
些か長めですが、うまく略せる自信がございませんでしたので、すべてを引用いたします。

 『松尾神社略記』によると、松尾山頂、月読社、社前あたりに古墳が、また嵯峨には大小多数の朝鮮型式古墳が散在していることから、この地が帰化豪族の墳墓であり、しかも六、七世紀における古代文化の中心地の一つであったことが推定される。この古代文化の担い手が秦氏一族であった。『新撰姓氏録』(右京諸蕃)に、秦氏は応神王朝の時代に大陸から渡ってきた弓月君がその祖であると伝えているが、彼らが新羅と深いつながりをもっており、少なくとも五世紀には来朝していたようである。そして、六世紀中期にはすでに多くの秦人系集団がいたことが、『日本書紀』(「欽明紀」)の「秦人七千五十三戸編籍」の記事から確認される。秦人系グループは、畿内では山城国山背、葛野郡を中心に近江国愛智郡、摂津国豊島郡に定住して豪族化したが、なかでも洛西、洛南、鴨川、桂川の氾濫平野の開拓、養蚕、機織など、農業生産、加工に大きな成果をあげ、この地域が秦氏の一大勢力圏になったのは六世紀後半、おそらく七世紀にはいってからであろう。
 秦氏のこのような豪族的性格と財力的裏付けは、神社信仰、民間呪術との結びつきを強く打ち出した。たとえば、洛南の深草の稲荷神社の神官になったのも、また洛北の賀茂社とのつながりも、秦氏のこうした性格と無関係ではなかった。さらに葛野の秦氏が筑前国宗像三女神の一人、市杵島姫命を松尾社に勧進、配祀したのが天智天皇七年(六六八)、秦都理が松尾社神殿を建立したのが大宝元年(七〇一)であった。なお、「社家秦氏」とあることから、松尾社の祭祀権は葛野の秦氏一族の統率者の手にあったと思われる。このように酒神市杵島姫命の勧請、「社家秦氏」による神酒醸造の管理、さらに秦氏の殖産的、豪族的性格は松尾社を「酒徳・酒福ノ神」として基盤付けたのであろうと推定される。」(※1)


今日いただくこのお酒は、太田酒造さんが造ったものでした。
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太田酒造さんは、滋賀県草津市に本拠地を置く蔵元さん。
なんでも、「江戸城を開いたことで有名な太田道灌ゆかりの蔵元。」(※2)なのだとか。
その太田酒造さんは滋賀県草津市の他に、銘醸地として名高い神戸の灘にも“灘千代田蔵”を設けて酒造りをなさっているのです。

そもそも、昭和後期には、太田酒造さん以外にも、地方の蔵元さんが本拠地とは別に灘にも蔵を置いて酒造りをしていた例が少なからず存在していたようです。
著名な例では、京都伏見に蔵を置く月桂冠(当時の大倉酒造)でさえも灘に支店を置いて酒造りをしていたほどでした。
当時は酒造家にとっても、また消費者にとっても、“酒と言えば灘”、それも“灘の生一本”が魅力ある存在だったのでしょうね。

ですが今となってはそのような例は、どうやらこの太田酒造さんのみとなってしまったみたいです。


箱の中身はこちら。
白磁製の一合徳利に、盃が添えられておりました。
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この“ふたば葵”は、どうやら松尾大社の社紋のようですね。
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中身は本醸造のようですが、精米歩合は表示されておりませんでした。
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それではいただいてみたいと思います。
御神酒は神前にてひや(常温)のままいただくことが一般的かと思いますので、まずはひや(常温)でいただいてみます。

お酒の色は、ほぼ透明でした。
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うまみはやや濃いめです。
酒臭さ(ほめ言葉です)がまず来て、重さもかすかに感じます。
続いて米のうまみがじんわりと広がり、幅を少し感じます。
苦みや雑味はまったくありません。
キレはよく、スッと引きます。

酸味はややはっきりしています。
すっぱさは弱めですが、酸味自体に深みを少し感じます。
スースー感はなく、ピリピリ感もありません。

甘みはややひかえめでしょう。
弱めですが幅を感じます。


やや濃醇でちょい深旨やや辛口のおいしいお酒でした。
しっかりしているのに、雑味がなくてきれいなお酒でした。
どっしり感すらわずかに感じましたよ。
おいしいお酒ですね。



ここで、燗にしてみましたよ。
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燗をつけると、酒臭い(あくまでもほめ言葉です)香りがふんわりと漂ってまいりました。

酸味が立ちますね。
鋭くはないものの、深みが増しました。
それでいてキレがよく、さらに甘みが引いてキリッと引き締まりました。

燗だと、やや濃醇で深旨スッキリ辛口のおいしいお酒になりました。
これは私の好みですが、燗のほうがおいしいわ!
深いのにキレがよく、後味スッキリしておりましたよ。
食事との相性もバッチリでしょう。


飲みやすさを求めるならばひや(常温)で、飲み応えを感じたければ燗で、といったところでしょうか。
いずれにせよ、松尾大社の御神酒は、ひやでも燗でもおいしいお酒でございましたとさ。

(※1)坂口謹一郎監修・加藤辨三郎編『日本の酒の歴史』p.109-111(加藤百一執筆『日本の酒造りの歩み』p.41-315中 1977.8 研成社)
(※2)滋賀の日本酒を愛する酔醸(よいかも)会編『近江の酒蔵-うまい地酒と小さな旅』p.34(2005.9 サンライズ出版)
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あ~酒臭かった! 32

酒くさコメント 2

リュカ

秦氏ふくめ、この当時の氏族たちの歴史、それぞれまとめたいんですよねー。
とってもごちゃごちゃになる(笑)
調べるほどに「????」ってことにもなるんですけどねww
by リュカ (2020-03-10 11:34) 

skekhtehuacso

リュカさん、物部氏や蘇我氏、大伴氏や中臣氏などでしょうか。
それは壮大な計画ですね。
あたしゃ中世の大和国の支配関係すらごちゃごちゃになってしまい、さっぱりわかりませんわ。
by skekhtehuacso (2020-03-10 21:13) 

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