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【お酒】334.瑞冠 純米吟醸 いい風 花 カップ [34.広島県の酒]

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山岡酒造株式会社
広島県三次市甲奴町西野

原材料名 米・米こうじ
精米歩合55%
アルコール分15度以上16度未満
180ml詰
(以上、表ラベルより転記)

*原料米 広島県産雄町米100%
*日本酒度+8
*酸度1.8
*2012醸造年製
*酵母蔵付2号
*アミノ酸度1.6
*杜氏 畑中裕次
(以上、裏ラベルより転記)


このお酒ですが、裏のラベルには酒質に関する情報だけでなく、醸造年度や杜氏の氏名までこまかく表示されております。
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推察するに、蔵元さんはこのお酒にかなりの自信をお持ちなのでしょうね。
ですが、“容量0.3L”というのは誤りでしょう。
おそらく、3デシ瓶のラベルをそのままカップ酒に貼ってしまったのかもしれません。

そんなことよりも、実はこのお酒に関して、どうしても言及しておきたいことがあるのです。


このお酒には、“広島雄町”、あるいは“広島県産雄町米”を100%使用して造ってある旨が表示されています。
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この“広島雄町”あるいは“広島県産雄町米”というお米は、私が手元にあった文献をあたった限りでは、どうやら純系の雄町とはちがうものかもしれないのです。
(追記:蔵元さんが敢えて純系の雄町を選んで使用している可能性はあると思います。)
詳細については、この記事の末尾にまとめておきましたので、ご参照いただければと思います。


ま、酒米が純系のものであろうがなかろうが、肝腎なのは完成したお酒がおいしいかどうかということです。
さぞやおいしいお酒であることを期待しつつ、純米吟醸酒ですので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。


ほんのわずかに吟醸香らしき香りを感じます。
食中酒にするには、この程度で十分です。

純米吟醸酒ですが、うまみはそれほど濃くはなくて、むしろ淡さを感じます。
それに、キレがあって、口の中でスーッと消えていきます。
ほんの少しだけ酒臭さ(←ほめ言葉です)があるものの、はっきりとはしておりません。
それにわずかに苦みを感じるものの、それ以外には雑味を感じません。

酸味ははっきりとはしていますが、かなり弱めです。
ほんの少しだけすっぱさを感じる程度です。
刺激やピリピリ感はまったくありません。

甘みはかなりひかえめです。
ほんのわずかにあって、お酒の味にコクを出している程度です。


淡めでキレの良いうまみが前面に出ている、やや淡麗でやや辛口のおいしいお酒でした。
純米吟醸酒なのにうまみが淡く、酸味の刺激や雑味もないので、とてもきれいな味わいに仕上がっています。
これはかなり丁寧に造ってあることの証拠でしょう。
そのせいか、とても飲みやすくて、スイスイと行けてしまいます。




☆★“広島雄町”・“広島県産雄町米”について☆★


(1)雄町と他の酒造好適米とのちがい

雄町(おまち)は、酒米の中ではかなり古い品種です。
雄町発見の経緯については、簡単にではありますがかつてこちらで触れておりますので、ご参照下さい。

山田錦や五百万石、美山錦といった酒造好適米のほとんどが、異なる品種米どうしの交配や放射線照射による変異などによって育成されたものであるのに対して、雄町は交配をすることなく、単一種の中から優秀なものだけを選抜して育成されたお米なのだそうです。


(2)純系の雄町と改良雄町

雄町という名のつく酒米には、純系の雄町のほかに、改良雄町という品種があるそうです。

この改良雄町の育成について、ある文献では以下のように紹介しています。

第2次世界大戦以後の復興に伴い、酒米の需要が増加したことから、栽培しやすく、品質のよい酒米品種の育成が急務となった。
1960年に(中略)「比婆雄町」と「近畿33号」の交配から「改良雄町」を(中略)育成し、稈長の短縮、耐冷性強化、早熟化、品質向上など優良形質の付与に貢献した。」(※1)

すなわち、改良雄町は、他の酒造好適米と同じように、交配によって“近畿33号”の遺伝子を取り入れて育成されたものということですね。


また、別の文献では、雄町の種類について以下のように紹介しています。

「雄町」グループは、大きく2つに分けることができるのです。
畿内雄町、船木雄町、備前雄町、赤磐雄町、比婆雄町というのは、各地で良い品質の雄町を純系淘汰して、その地の地名を冠したもの。いずれも他の品種の血が入っていないという点で純系の雄町の一部といえるものです。
もう一方は、雄町または雄町の純系淘汰品種に他の品種を掛け合わせて出来た交配品種で、兵庫雄町、改良雄町、こいおまちはこちらに含まれます。」(※2)


(3)“広島雄町”・“広島県産雄町米”とは

上記(※2)と同じ文献は、広島の雄町について以下のように評しています。

もうひとつ注意が必要な品種に「広島雄町」があります。いきさつはわからないのですが、広島県では改良雄町が「雄町」という名の下に栽培されていることが多いのです。
そこで、広島産「雄町」あるいは「広島雄町」と表示されているのは雄町ではなく改良雄町である、というややこしい話になります。」(※3)

広島雄町が改良雄町であるということは、それは純系の雄町とは異なるものなのでしょう。
しかし、改良したことで育てやすくなって、しかもそれが今日まで栽培され続けているわけですから、改良してもなお酒米としての品質はかなり高いのでしょう。
実際に、今日いただいたお酒は広島雄町で造られたものでしたが、おいしいお酒でした。

いつか、同じ蔵元さんのお酒で、純系の雄町で造られたものと改良雄町で造られたものとを飲み比べてみたいものです。


(※1)前重道雅・小林信也編著『最新 日本の酒米と酒造り』p.127(2000.3 養賢堂)
(※2)副島顕子『酒米ハンドブック』p.14-15(2011.7 文一総合出版)
(※3)同p.15
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