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【お酒】1055.窓乃梅 上撰 マドカップ [41.佐賀県の酒]

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窓乃梅酒造株式会社
佐賀県佐賀市久保田町大字新田1833・1640

アルコール分15.0度以上16.0度未満
原材料名 米(国産)・米こうじ(国産米)・醸造アルコール・糖類・酸味料
容量180ml詰
(以上、フタより転記)




 「窓乃梅酒造は歴代が醸造の技術屋である」と語るのは13代当主・社長の古賀釀治さん。元禄元年(1688年)、佐賀藩より藩の余剰米の利用法として酒造りを命じられた寒菊酒造(窓乃梅の前身)が創業した県内最古の歴史を誇ります。佐賀藩鍋島家御用達の由緒正しい伝統蔵です。
 「窓乃梅」の由来には、1860年に名君10代藩主直正公が、献上酒の芳醇たる香りに、「年々にさかえさかえて名さえ世に香りみちたる窓乃梅が香」と詠み命名したという有名な逸話があります。」(※1)
という、由緒正しき蔵元さんのお酒を今日はいただきます。


ところで、上記の引用の冒頭には、「窓乃梅酒造は歴代が醸造の技術屋である」という一文があります。
このことについて別の文献を当たってみたところ、どうやら窓乃梅さんは戦前から吟醸造りの研究に熱心だったのだとか。

今でこそ琺瑯タンクが広く普及しておりますが、戦前は木桶でお酒を仕込む蔵元さんが多く存在したようです。
そんな状況下で、窓乃梅酒造さんは木桶での貯蔵に限界を感じ、日本碍子に対して磁器でできた「2000l入りの特注のかめ」(※2)を注文し、それで吟醸酒を貯蔵したそうです。
このことについて紹介している文献の記述を、ところどころ抜粋してご紹介します。

酒の品質は、「造り」もさることながら、貯蔵によっても大いに影響を受ける。それは貯蔵桶の「クセ」や管理、洗浄が原因になるのだった。桶の「クセ」とは、桶の原料である杉材からはじまり、ほとんどは手入れ、つまり洗浄による。ときには使い込まれた年数にも関係がある。
どんなに努力をしても勉強をしてみても、桶の「クセ」を完全に克服することはできない」(※3)

 陶磁器が生活から生まれ、高級なものは美術品にもなっている。一方、工業資材としての陶磁器メーカもあるのだ。日本碍子という会社は、大型耐酸容器も試作するのだろう。」(※4)

 近藤杜氏が名古屋の日本碍子に出掛けてから一年二ヵ月後のことである。名古屋から出荷案内があって貨車番号が知らされた。甕は東海道本線、山陽本線を通り、関門連絡船で瀬戸内海を渡り、鹿児島本線を鳥栖で長崎本線に分かれ、佐賀から唐津線の久保田駅に着くまでに五日か一週間かかるだろう。」(※5)

容器二千リットル、製作番号八十一。甕としかいいようのない古くて新しい酒の容器だった。
 昭和五年第十二回全国清酒品評会の出品酒はガイシの甕から汲んだものである。これも優等賞を射留めた。」(※6)

「窓乃梅」の甕は蔵全体を冷房できなかった当時、酒を低温で安定して貯蔵する役目を果たしたのである。日本碍子製で容量二千リットル製造番号八一番の甕は、いまも「窓乃梅」にある。もちろん現役である。」(※7)


そんな戦前から吟醸造りの研究に熱心に取り組んでいらっしゃった蔵元さんが造ったこのお酒ですが、まことに残念ながら糖類酸味料フル添加の三増酒でした。
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醸造の技術屋を自認なさっている蔵元さんが、なぜ、終戦直後の米不足の折に開発された増量策を今でも採用し続けていらっしゃるのでしょうかね?


では、そんな蔵元さんが造ったこの三増酒をいただきます。
普通酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。

お酒の色は、きれいな金色をしておりましたよ。
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あれ?

うまみは濃くはないものの、しっかりしています。
酸味料に由来すると思われるクドさはちょっと感じるものの、醸し出された酒臭い(←ほめ言葉です)うまみも感じますし、深みもありますね。
苦みや雑味はなく、それにキレもよいみたいです。

酸味ははっきりしています。
すっぱさが強めで、しかも鋭さがありますね。
でも刺激やピリピリ感はありません。

甘みはややひかえめです。
ゼロではないものの、かなり弱めです。
でも、糖添三増酒にありがちなとろみやべとついた感じはないみたいです。


しっかりしたうまみに酸味の効いた、旨すっぱやや辛口のおいしいお酒でした。
添加された味も少しあるみたいですが、それよりも酒臭さ(←あくまでもほめ言葉です)や深みのほうがはっきりしておりました。
また、酸味に鋭さがありましたが、刺激やピリピリ感はありませんでした。
それに、意外にも辛口でした。

ここからは、私の根拠なき想像です。
もしかしたらこのお酒の蔵元さんは、本当は糖類酸味料の添加を止めたいのだけれども、戦後ずっと地元で愛飲されてきた三増酒の味を変えたくないがために、あえて少量の糖類や酸味料を添加してお酒の味を維持しているのではないでしょうか?
そういう理由で三増酒を造り続けている蔵元さんも、ひょっとしたら少なからず存在するのかもしれませんね。
今後、三増酒をいただく際には、そういうことも念頭に置いておきたいと思います。


(※1)平尾茂『佐賀酒ものがたり』p.28(2014.1 西日本新聞社)
(※2)篠田次郎『吟醸酒の来た道』p.155(1999.1 中公文庫)
(※3)(※2)p.140-141
(※4)(※2)p.158
(※5)(※2)p.159
(※6)(※2)p.162
(※7)(※2)p.165
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