【お酒】197.若戎 純米吟醸 義左衛門 カップ [24.三重県の酒]
若戎酒造株式会社
三重県伊賀市阿保1317
原材料名/米(国産)・米こうじ(国産米)
精米歩合/60%
アルコール分/15度
内容量/180ml
(以上、缶の印刷事項より転記)
若戎酒造さんのお酒は、おとといに、吟醸酒のわかえびすカップをいただいております。
今日いただくこのお酒は、純米吟醸酒です。
吟醸酒と純米吟醸酒との違いは、お酒を搾る前に、醪タンクの中へ醸造アルコールを添加するかしないかにあります。
醸造アルコールの添加については、この記事の最後にまとめてありますので、ご覧下さい。
純米吟醸酒ですので、冷蔵庫で冷やしてからいただきます。
口に含むと、吟醸香を感じます。
そんなにクドくはなくて、ちょうどよい感じです。
うまみはやや濃いめです。
お米本来の味でしょうか、吟醸酒らしい、やわらかいうまみがします。
そして、わずかに苦味を感じます。
酸味は弱めですが、はっきりしています。
スッキリしたさわやかな酸味です。
刺激やピリピリ感はまったくありません。
甘みはひかえめです。
その分、酸味のスッキリ感が際立っています。
やわらかいうまみと、さわやかな酸味とが特徴の、やや濃醇で辛口のおいしいお酒でした。
☆★醸造アルコールの添加について☆★
(1)醸造アルコールとは
醸造アルコールとは、「でんぷん質を糖化したものや、廃糖蜜(サトウキビやテンサイなどの糖蜜から砂糖を結晶させた後に残る液)を発酵させた後に蒸留して作られる九五%のエチルアルコール」(※1)です。
(ですので、決して石油などから合成したものではありません。)
これは、チューハイなどに使う焼酎甲類と同じものです。
「九五%のエチルアルコール」とありますが、残りの5%は水で、アルコールの質としては純度99.9%の混じりけのないものです。
(2)なぜ、醸造アルコールを添加するのか
その理由については、添加によって「酒質全体から見ると、軽快な風味になり、市場での保存性にも効果が期待できる」といわれています(※2)。
また、特に吟醸酒の場合はこれだけではなく、「もろみの中の芳香物質は、酒を搾ったときに大部分が酒粕に残ってしまうのですが、アルコールはそれを酒のほうに戻してくれる。」という効果を期待して添加されるようです(※3)。
一方で、醸造アルコールの添加は「戦中戦後の緊急避難策(米不足の時代の酒量増加策)としての流れを汲んでいるのは明々白々な事実」であって、また「戦後アル添が続けられてきた目的は、専らコスト削減であった。」として、これに批判的な見解もあるようです(※4)。
(3)どのくらい添加されているのか
今日では、特定名称酒の醸造アルコールの添加量には「当該アルコールの重量(アルコール分95度換算の重量による。)が、白米の重量の10%を超えない」こととする上限があります(※5)。
ある文献では、この量すべてを醪に添加すると、「清酒として約二五%増量する計算になる」と紹介しています(※6)。
しかし、別の文献には「特定名称酒の醸造アルコール添加量の制限は上限であり、実際にはその半分以下であることが多いという。増量ではなく、あくまでも酒質を高めることが目的だからである。」と紹介する記述もあります(※7)。
上限いっぱいの添加で25%の増量に、そしてその半分で12.5%の増量になるわけです。
はたして、これが増量策として有効な結果であると言えるのでしょうか。
これは私の感覚ですが、この程度の増量で、醸造アルコールを購入した費用を差し引いてもあり余るような利益が出るのでしょうか。
なお、普通酒には、上記の上限量は適用されません。
しかし、「米(こうじ米を含む。)の重量の百分の五十」を超えて添加してしまうと、そのお酒はもはや清酒を名乗ることができなくなってしまいます(※8)。
(3)添加する/しない、どっちがいいのか
結論から言うと、私はどちらも認めてよいと思います。
今日では、(糖類添加はともかく、)醸造アルコールの添加は増量策ではなくて、酒造りの一技法として確立していると思います。
その上で、お酒を選ぶ際には、「アルコールを添加しているからダメ/添加していないからよい」という基準で選ぶのではなくて、実際にそのお酒を飲んでみてから、それがおいしいかどうかを判断すべきではないでしょうか。
そういったお酒選びをするためには、カップ酒や一合瓶、そして300ml瓶こそ、最適の試飲手段だと思います。
その際、「アルコールを添加したからこんなに軽快で、香りが豊かなのかな?」とか、「添加していないからこんなに濃厚なのかな?」というように、アルコール添加の有無を情報の一つとして考慮してみるのも、お酒の飲み方として面白いはずです。
(※1)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.112(2000.4 柴田書店)
(※2)秋山裕一『日本酒』p.186-187(1994.4 岩波新書)
(※3)大内弘造『なるほど!吟醸酒造り-杜氏さんと話す』p.38(2000.10 技報堂出版)
(※4)上原浩『純米酒を極める』p.41(2011.1 光文社知恵の森文庫)
(※5)清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)1(5)
(※6)(※2)p.186
(※7)(※1)p.113
(※8)酒税法3条7号ロ
こんにちは!
伊賀=ニンジャ・・・を連想させるカップですが
お味は正統派の美味しいお酒だったんですね♪
by ちゅんちゅんちゅん (2014-04-24 15:09)
ちゅんちゅんちゅんさん、コメントありがとうございます。
このお酒はおいしかったのですが、私としては、同じ若戎でも醸造アルコールを添加した吟醸酒「わかえびす」のほうがおいしいと思いました。
by skekhtehuacso (2014-04-25 00:16)
醸造アルコールの添加についてのまとめ、わかりやすく、また、見解について同意見です。
糖類添加は、醸造中に添加するのか、醗酵停止後に添加するのかで意味合いが全く変わるでしょうね。
実際、ペットボトルの中で、甘酒が一夜にして辛酒に変わったりします。
旨味・芳香の多くが、搾り滓のほうに残ることをご存じない方が多いみたいで、邪道ですが、酒粕を普通酒に混ぜるだけで、吟醸酒もどきになったり。
大吟醸の濾す前のどぶろくがいちばん旨いのだろうなあと夢想しつつ、普通米のどぶろくで糖化や酒精発酵の試行錯誤中です。
by ojioji (2014-11-03 21:48)
ojiojiさん、私が文献を当たって考えていたことを実証なさっているのはすごいと思います。
どうかお気をつけて。
by skekhtehuacso (2014-11-05 00:36)