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【お酒】384.越後 純米吟醸 カップ [15.新潟県の酒]

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市島酒造株式会社
新潟県新発田市諏訪町3-1-17

アルコール分/15度
原材料名/米(国産)・米こうじ(国産米)
精米歩合50%
180ml詰
(以上、ラベルより転記)


仕事から帰ってきて、冷蔵庫の中をのぞいていたら、“表参道・新潟館ネスパス”の中にあるアンテナショップ“新潟食楽園”にて先月に入手したこの純米吟醸酒があることに気づきました。


ところで、「吟醸酒ってナニ?」って聞かれたら、どう答えるのが適切なのでしょうね。

これを考えていたら、文章がとても長くなってしまいました。
お酒の紹介にたどり着くまでに読み飽きてしまうと思い、最後にまとめておきましたので、興味をお持ちの方はどうかお読みください。


今日いただくこのお酒は純米吟醸酒ですので、冷蔵庫で冷やしたものを、吟味して製造した成果を感じとりながらいただいてみたいと思います。


うまみはやや淡めですが、ピンと筋が通っているようです。
お米のうまみだけが出ていて、それが舌の上に乗っかってきます。
それに、雑味もなければ、吟醸酒にありがちな苦みもほとんど感じません。

酸味は弱めですが、これも一筋通った感じがします。
スッキリしたさわやかな酸味が、わずかながらスッと差し込んできます。
すっぱさは感じませんし、刺激やピリピリ感も当然ながらありません。

甘みはほとんど感じません。


淡めのうまみだけを味わうことができる、淡麗辛口のおいしいお酒でした。
うまみに酒臭さや深みはありませんが、お米のこの部分のうまみだけを味わってほしいという蔵元さんの思いが伝わってくるようでした。
とてもきれいな味わいの、新潟淡麗の本流のような味わいでした。
これこそが、蔵元さんが吟味して製造した成果なのでしょう。



☆★“吟醸酒”とはどんなお酒なのか☆★


(1)公式ルール“吟味して製造した清酒”

「吟醸酒ってナニ?」って聞かれたら、どう答えるのが適切なのでしょうか?

公式のルールでは「精米歩合60%以下の白米、米こうじ及び水、又はこれらと醸造アルコールを原料とし、吟味して製造した清酒で、固有の香味及び色沢が良好なもの」となっています(※1)。

ときどき、“吟醸酒=精米歩合60%以下のお酒”とする記述を見かけます。
しかし、精米歩合60%以下というのは吟醸酒を名乗るための条件の一つに過ぎず、これをクリアしたからといって吟醸酒を名乗ることができるわけではありません。

むしろ、吟醸酒が吟醸酒たる所以は、上記公式ルールの後半部分にある、“吟味して製造した清酒”であることだと思います。


では、“吟味して製造した清酒”とは、いったいどういうお酒を指すのでしょうか。

この点について、国税庁はその通達で「精米歩合60%以下に精米した白米を使用し、低温でゆっくり発酵させ、かす歩合を高くしたもの等いわゆる吟醸造りにより製造した清酒」という見解を示しています(※2)。
でもね、“吟味して製造したお酒吟醸造りにより製造したお酒”って、同じ言葉を繰りかえしているだけのように思ってしまいます。


(2)何をすれば、“吟味して製造した”と言えるのか

以前、私は「どういう製造方法を採れば、“吟味して製造”したと言えるのでしょうか。」ということを考えてみたことがありました。
その際、9つのことを満たしていればよいのではないかと、私なりにまとめてみました。

すみません。
今になって考えれば、この見解は、必ずしも正しいとは言えないと思います。
上記の9つのことは、たしかに吟醸造りの現場では広く行われていることかもしれません。
しかし、これらを満たしただけで、吟味して醸造した成果がお酒に必ず現れるとは限らないと思います。
逆に、世の中には、これら9つのことのすべてを満たしてはいないけれど、おいしい吟醸酒は存在します。

一方で、“酒屋万流”という言葉があります。
この言葉の意味を示すものとして、以下の記述を紹介します。
およそ酒の造り方はなかなかに微妙で、工程も単純ではない。例えば気候、原料、製法など多数の条件があり、その組合せは莫大な数になる。(中略)しかも、どんな組合せでも必ず銘酒が生まれるというわけではなく、失敗もまれではないから大変である。
日本各地に存在する銘酒は、それぞれの風土にあわせて、ある組合せが選ばれ、それぞれの土地にふさわしいお酒の姿を具現しているといえよう。」(※3)


(3)結論:やり方ではなくて“成果=味や質”では?

お酒の製法が万流であるならば、吟醸造りにもいろいろなやり方があって、これをやれば必ず吟醸造りになるという方法はないと思います。
むしろ、出来たお酒の味や質に着目して、それらに蔵元さんが吟味して製造した成果が現れていれば、それこそがまさに吟醸酒ではないかと思うのです。
それに、製法が万流であるのと同じく、その成果もまた万流で、お酒ごとにちがうものだと思います。

世の中には吟醸酒を名乗るお酒はたくさんあります。
それらのお酒一つひとつが本当に吟味して製造したものかどうかは、蔵元さんの矜持を信用した上で、私たち消費者の一人ひとりが自分の舌で確認してみるしかないと思います。


ということで、私は、「吟醸酒ってナニ?」って聞かれたら、こう答えることにしたいと思います。
“蔵元さんが吟味して製造し、その成果が現れているお酒”

そして、こう言葉を添えたいと思います。
「吟醸酒を味わうときは、蔵元さんが吟味して製造した成果がそのお酒にどう表現されているのかを感じとってみましょう。」



(※1)清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)1の表
(※2)酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達第86条の6 酒類の表示の基準2(2)イ(ハ)
(※3)蓑田泰治『灘酒-製造方法とその変遷』(『灘の酒博物館』p.68(1983.10 講談社))
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酒くさコメント 4

toshi

お酒の解説、面白いです。
私は、何もわからずに飲んでいました。
コメント、ありがとうございました。
by toshi (2014-11-12 06:20) 

hanamura

 精米歩合が高いほど良い「吟醸酒」みたいな(?)イメージが、出来上がってしまっていますね。また吟醸という曖昧な言葉は使わない、という蔵もありますね。
by hanamura (2014-11-12 07:13) 

skekhtehuacso

toshiさん、コメントありがとうございます。
次にマイケル君の頭の上に何が乗るのか楽しみです。
by skekhtehuacso (2014-11-12 22:49) 

skekhtehuacso

hanamuraさん、たしかに吟醸という言葉は曖昧ですね。
本醸造や純米酒は一定の基準をクリアするだけでよいですが、吟醸酒は基準自体があいまいですからね。
ただ、本醸造を使わない蔵(菊姫)は知っていましたが、吟醸という言葉を使わない蔵があることは知りませんでした。

by skekhtehuacso (2014-11-12 22:52) 

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