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【お酒】388.389.月桂冠 上撰キャップエース&純米酒 お酒の中で、あいましょ。 [26.京都府の酒]

いささか唐突ではありますが、カップ酒を発明したのは、灘今津郷の大関さんです。
昭和39(1964)年にはじめて発売されたワンカップ大関は、一升瓶から徳利へ移してそれをお猪口でいただくというお酒の飲み方ではなくて、コップに注いだお酒をコップごと販売し、どこでも手軽に飲めるようにするという発想でした。
言うなれば、従来の飲み方を払拭して、新しいお酒の飲み方を提唱したということでしょう。
その提唱は成功し、いまでは日本中でカップ酒が販売されています。

一方、徳利に入れたお酒をお猪口でいただくという従来の飲み方を継承しつつも、それをどこでも手軽に飲める方法を提唱したのが、京都伏見の月桂冠さんが販売する“上撰キャップエース”です。

それがこれ。

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月桂冠 上撰 キャップエース
月桂冠株式会社F
京都市伏見区南浜町247

内容量:180ml
アルコール分:15度以上16度未満
原材料名:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール
(以上、ラベルより転記)


このキャップエースですが、ガラス瓶の上に、プラスチック製のお猪口をかぶせてあるのです。
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このお猪口をはずすと、中には金属製の中蓋がついています。
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容器はガラスのですので、このままお燗にすることもできます。


これは私の感想ですが、このキャップエースって、カップ酒と同じくらい、いや、それ以上にすごい発明だと思うんです。
だって、それまでの日本のお酒の飲み方をまったく変えることなく、かつ持ち運びに便利で手軽に飲める方法なのですから。
キャップエースこそ、カップ酒のように日本中に広まってもおかしくはないと思うのです。
これは私の予想ですが、カップ酒の部品がガラスカップと金属フタとの2点なのに対して、キャップエースはガラス瓶と金属の中蓋、そしてプラスチック製のお猪口との3点の部品で構成されていることから、カップ酒よりも容器代が高くなってしまうのが問題なのでしょうか。


そんなキャップエースについて、文献では以下のように紹介していました。
昭和「四四年、塩化ビニール容器の「キャップエース」(一八〇ml)を発売した。これは明治の末期に月桂冠が駅売り用として開発した猪口付きの容器のアイデアを現代風によみがえらせたもので、キャップがそのまま猪口替わりになる簡便さがうけ、アウトドア商品として話題を集めた。
翌四五年、大阪で行われた日本万国博覧会会場をはじめ全国に自動販売機を設置したこともあって、一躍ヒット商品となった。
なお、同五〇年からは容器の形態はそのままで、材質もガラスに改めた。」(※1)

最後の「材質もガラスに改めた。」ってのは英断ですね。
だって、塩化ビニールだったら、そのままお燗できないじゃないですか。
瓶ごとお燗して、それをお猪口でちびりちびりといただくってのが、日本のお酒をおいしくいただくための一つの方法ですからね。


それよりも、上記文献引用の前半に「明治の末期に月桂冠が駅売り用として開発した猪口付きの容器のアイデアを…」って書いてありますね。
ということは、月桂冠さんは、すでに明治の頃にキャップエースみたいなすごい商品を世に送り出していたのですね。

これについて、文献では以下のように紹介していました。
明治43年(一九一〇)に、当社はコップ付小壜を新案し、どこでも飲める便利さから主に駅売り用として販路を拡大した。それは、明治三九年に鉄道国有法が公布され、私鉄一七社を買収して全国の総キロ数の九割に達する国有鉄道が成立したころであった。
コップ付小壜は今日の月桂冠キャップエースの原型であり、鉄道内で清酒の販売を可能にさせる日本最初のアイデアであった。」(※2)

大関さんがワンカップ大関を発売する50年以上も前に、月桂冠さんはすでに駅売り用のお酒を販売していたのです。
すなわち、月桂冠さんこそ、列車に乗ってお酒を楽しむ方法を最初に発明してくださった蔵元さんなのですよ。
旅と酒とが切ってもきれない皆様方、これはもう、伏見に足を向けて寝られませんな。
オマエもだろ!


前置きが長くなってしまいました。
普通酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。


うまみはかなり淡めです。
酒臭さはまったくないですね。
ですが、香ばしさような味わいを少し感じます。
それに、少し苦みもあるようです。

酸味はひかえめです。
刺激やピリピリ感はまったくありません。
すっぱさは、少し感じます。

甘みは少し感じます。
お酒の味にコクを添えています。


酒臭さがなくて、酸味がひかえめな、やや淡麗で中口のお酒でした。
飲みやすさはあると思いますが、私は酒臭いお酒が好きなので、ちょっと物足りなく感じました。
この味は、きっと融米造りの為せる業かと思います。
(融米造りの意味については、別の機会に紹介したいと思います。)



実は、今日はもう一つ紹介したいお酒があるのです。


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純米酒 お酒の中で、あいましょ。
月桂冠株式会社F
京都市伏見区南浜町247

内容量:180ml
アルコール分:13度以上14度未満
原材料名:米(国産)、米こうじ(国産米)
精米歩合 78%
(以上、ラベルより転記)


先日、仕事で横浜へ行きました。
例のごとくコンビニを物色していたところ、横浜市役所の近くにあったローソンで、このお酒に出会ってしまったのです。
なんだか、キャップエースがかわいくなっちゃったというか、おネェっぽくなっちゃったかと思うようなお酒です。


このお酒のラベルには、金魚が使われています。
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お酒のラベルに金魚を使うと粗悪なお酒をイメージさせるのではないかということは、以前こちらでご紹介していますので、ご覧ください。


このお酒のアルコール度数は“13度以上14度未満”と、若干低めのようです。
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これってもしかして、アルコールの刺激を抑えて口当たりを良くすることを狙っているのでしょうか?
ラベルのデザインをかわいくして、しかも口当たりを良くするなんて、女の子に飲んでもらうことでも狙っているのでしょうか?
でもね、電車の中でカバンからキャップエースを取り出して、お猪口に注いでクイッと飲む女の子って…。

まあ、そんな無粋な想像をしてはいけません。
むしろ、少しでも日本のお酒を飲んでくれる人たちを増やそうと努力なさっている月桂冠さんには、敬意を表さねばなりません。
おいしいお酒であることを願いつつ、純米酒ですので、これもぬる燗でいただきます。


お猪口が茶色だと、お酒の色を楽しむことが出来ませんね。
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まあ、無色透明だから問題ないのかもしれませんが。


こっちのうまみは、淡いですがはっきりしています。
純米酒ですので、お米のうまみでしょうか。
ですが、香ばしさと苦みもはっきりしています。
それに、酸味のすっぱさもはっきりしています。
でも、ふつうのお酒にあるような酒臭さは感じないんですよね。

今までにいただいてきた日本のお酒とはちょっとちがう味だと思います。
それに、酒臭さはないものの、上撰キャップエースのような飲みやすさはないように思いました。
せっかくデザインをかわいくして、しかもアルコール度数も下げているのですから、もう少し飲みやすくしてもよかったのではないかと思いました。


(※1)月桂冠株式会社・社史編纂委員会編『月桂冠三百六十年史』p.291-292(1999.6 月桂冠)
(※2)月桂冠株式会社 社史編集委員会編『月桂冠 三五〇年の歩み』p.107(1987.10 月桂冠)
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あ~酒臭かった! 31

酒くさコメント 4

green_blue_sky

いろいろな種類がありますね。
近所のスーパではあまりいいものがないです(^_^;)
by green_blue_sky (2014-11-15 21:26) 

skekhtehuacso

green_blue_skyさん、うちの近所のスーパーも然りです。
仕方がないので、休みの日には出かけて酒集めをしています。
by skekhtehuacso (2014-11-15 21:38) 

あおのさと

昭和の時代は、駅弁に陶器のお茶はつきものでしたね。あれは車内販売のお姉さんが、揺れが激しい特急の連結部分で魔法瓶からそそいで作っていたのです。その流れを汲むキャップエースは、昭和世代の忘れ形見、ですよね♪ありがとうございました!
by あおのさと (2015-02-14 18:17) 

skekhtehuacso

あおのさとさん、私も昭和世代ですが陶器の入れ物に入ったお茶は見たことがなく、新幹線のホームで売っていたプラスチック製の容器に入ったお茶しか知りません。
最近ではカップ酒が衰退し、駅で一合瓶の販売が増えたように思いますが、お酒のラッパ飲みは味気ないでしょう。
むしろ、キャップエースのような商品が普及してほしいと思います。
by skekhtehuacso (2015-02-15 00:08) 

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