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《焼酎》5.白霧島 200ml [9945.宮崎県の焼酎]

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霧島酒造株式会社
宮崎県都城市下川東四丁目28番1号

原材料/さつまいも、米こうじ(国産米)、芋こうじ
アルコール分/25%
内容量/200ml
南九州産さつまいも100%使用
(以上、ラベルより転記)




先日いただいた“いいちこ”に引きつづき、今日も焼酎のうち“世間で広く飲まれている銘柄”を選んで飲んでみることにいたします。

今日選んだこの焼酎は、芋焼酎です。
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広く飲まれている芋焼酎ということで、当初は鹿児島の“さつま白波”をいただこうかと思っておりました。
しかし、昨今では宮崎県都城市に蔵を置く霧島酒造さんのこの霧島シリーズが広く普及しつつあるとのことで、こちらを選らんでみましたよ。



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ところで、かつての芋焼酎には、ニオイが強いものがありましたね。
私が子どもの頃に父親が飲んでいた芋焼酎のお湯割りのニオイは、それはとても強烈でしたよ。
「こんなクサイものを飲む奴の気が知れない」と、子ども心に思ったくらいでした。

ですが、昨今の芋焼酎には臭みがなくてマイルドなものがけっして少なくないのだとか。


なぜ、風味がこうも変わったのでしょうか?
理由はいくつか想定し得ると思いますが(醸造技術全体の改良や、ろ過による原因物質除去の精度向上など)、特に注目に値すると思われる記述を、とある文献中に見つけました。

 焼酎の酒質に大きな変化が起きるのは昭和50年代に入ってからのことである。南九州の焼酎が北上するにつれ、品質の向上と酒質の保全への取り組みが始まった。芋焼酎では原料のサツマイモを一個一個手にとって傷のある部分を丹念に切り落とすようになり、芋傷み臭と呼ばれる欠点臭の発生を抑えるようになった。その後、育苗や栽培方法の改良、品種の選抜が行われるよになり、コガネセンガンに代表される優良品種が選定されるようになった。現在ではサツマイモ品種の焼酎の香味に与える影響が明らかになりつつあり、特徴的な香味を持つ芋焼酎の開発につながっている。」(※1)

上記の記述には“芋傷み臭”という言葉が出てきましたが、どうやらこれが芋焼酎のニオイの正体なのだそうです。
この芋痛み臭については、別の文献に以下のような記述がありました。

 このサツマイモで造った焼酎は柔らかな風味と甘味が特徴といえる。しかし病害虫に弱く、貯蔵性が悪いため、畑から掘り出した後一両日中に仕込まなければならない。傷んだ部分は削り取るが、少しでも残ると「芋イタミ臭」といわれる一種独特の臭いが焼酎に付いてしまう。」(※2)

 近年の大きな流れとして焼酎製造を技術的にみるとメーカーは消費者志向に対応してソフトで華やかな香りをもつ製品の開発を進めてきた。先行したのは芋焼酎であったがその後、麦焼酎、そば焼酎、米焼酎が芋焼酎の守ってきた製法を進めて九州外のニーズに答えていった。結果として癖のないソフトで華やかな香りをもつ製品が多くを占めることになる。これは南九州以外の土地での売れ行きの向上という大きな面もあったが、酒質の均一化という現象も生み出した。総じて、それぞれの原料の特徴を残しながら、芋焼酎では原料芋の選別、米焼酎では減圧蒸留の採用、麦焼酎では精製処理をすることで、製品の芋痛み臭の減少、油臭の除去、末ダレ臭の減少により臭いが減少したと考えられる。」(※3)

 本格焼酎の香味の特徴はまず不均一性にあると言える。まず原料がそれぞれ異なると香味が違うのは当然であるが、各原料も実際は均一に見えて実はそうではない。穀類は総じて均一だが、サツマイモは品種間で大きく異なり、また、同品種でも天候、気温、植え付けした畑の土壌、同じ固体でも表面と内部でもそれぞれ微妙に違っている。原料の良し悪しが最終製品の香味、特に香りに影響する。単なる擦り傷、低温傷害でも苦味物質や芋イタミ臭が発生するなど原料の厳選や処理には十分な注意が必要である。」(※4)

きれいに洗浄したサツマイモを、人の手で一個一個丁寧にヤニが多く含まれている両端を切り、また傷んだ箇所があれば、そこを取り除く。特に黒斑病、線虫等の病気や害虫に侵されているサツマイモは、いも焼酎の酒質に影響を及ぼすので、完全に除去しておく必要がある。この工程は機械化できず、人手に頼っている。」(※5)

これらの記述からわかることは、芋痛み臭のない芋焼酎を造るためには、さつまいもの鮮度のみならず、たとえ新鮮なさつまいもでも傷や低温傷害あるいは虫食いで痛んだ部分を人の手で丹念に取り除く必要があるということですね。
逆に言えば、近年になってから、芋傷み臭の発生を防ぐためには原料芋の選別・管理が必要であることがわかり、それを徹底するようになったことから、かつてのようなニオイの強い芋焼酎は姿を消しつつあるのでしょう。

さらに、「芋焼酎では減圧蒸留法はほとんど導入されていない。その理由として、酒質が常圧蒸留した焼酎と全く異なることと、もろみ粘度が麦焼酎と比べて30倍以上高いため熱伝導性が悪くもろみが焦げ付く可能性が高いためである。(中略)もろみのアルコール濃度が低下すると蒸留機の形状などにもよるが、一般的に蒸留歩合や原酒アルコール濃度は低下する。(中略)もろみに水を加えることで粘性は低下し減圧蒸留が可能となるが、上述の問題が生じることとなる。」(※6)という記述にあるとおり、芋焼酎では減圧蒸留によって香味成分の生成を防止することが難しいそうですから、(ろ過による香味物質の除去はともかく)原料芋の選別と管理とは穀類を原料とする場合よりもよりいっそう重要視されるのでしょうね。


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では、いただいてみたいと思います。




まずは、生(き)、すなわちストレートで。
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上記で紹介した文献にあったとおり、全然臭くないですね!

口当たりはかなり淡いですね。
うまみをほとんど感じないくらいです。

でも、香りが豊かで、しかも華やかな香りがフワッとしますね。
といっても、お酒(いわゆる日本酒)の吟醸香とはちがって、クドさがなくて落ち着いた香りです。

苦味や雑味はまったくなく、ピリピリ感もありません。
それに、甘味も感じませんね。
ただ、25度だけあってスーッとしたアルコールの香りが少し目立ちます。




ここで、お湯割りにしてみましたよ。
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アルコールのスーッとした感じは少し残るものの、それでも和らいでまろやかになりました。
香りは華やかさが最初に来て、芋っぽさのような香ばしさが下の付け根から鼻腔の入口辺りにかけて残り香のようにごくかすかに残るようです。
また、軽い苦味がちょっとだけ出てきたみたいです。




最後は、残ったものをロックで。
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生(き)と同様に、香りはやはり華やかです。
一方で、軽い苦味がお湯割りよりもちょっとはっきりしてきたようです。
ですが、甘みはこのロックが一番はっきりしているようです。



香りが豊かでおいしい焼酎でした。
清酒(いわゆる日本酒)みたいな舌の上に乗っかるようなうまみはありません。
でもね、芋焼酎には華やかではあるもののクドさのないよい香りがありましたよ。
また、これまでにいただいた米焼酎や麦焼酎では(程度の差こそあれ)香ばしさを感じることができましたが、この芋焼酎にはそれがありませんでした。

芋焼酎、はじめていただきましたが、なかなかいけるじゃありませんか!
中でも私としては、口当りがまろやかで、かつ香りに華やかさとともに芋っぽさを感じたお湯割りが好みでした。
淡いけれど香り高い、そんな焼酎でしたよ。

こりゃぜひともね、いつか宮崎や鹿児島へ行って地の焼酎を集めてみたくなってきましたよ。



(※1)鮫島吉廣『本格焼酎の世界 その歴史、技術、文化』p.1-2(Foods & Food Ingredients Journal of Japan 214巻1号 p.1-3 2009 FFIジャーナル編集委員会)
(※2)髙峯和則・鮫島吉廣『芋焼酎の風味に寄与する因子について』p.602(日本醸造協会誌 103巻8号 p.601-606 2008.8)
(※3)米元俊一『本格焼酎の香味成分と美味しさ』p.100(日本醸造協会誌 112巻2号 p.96-107 2017.2)
(※4)(※3)p.101
(※5)鹿児島県本格焼酎技術研究会『かごしま文庫(62) 鹿児島の本格焼酎』p.96(2000.6 春苑堂出版)
(※6)髙峯和則『本格焼酎製造技術』p.10(Foods & food ingredients journal of Japan 214巻1号 p.4-13〔『特集:本格焼酎 その歴史、技術、文化』(p.1-27)内〕2009 FFIジャーナル編集委員会)
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川鮎くん

私は焼酎を飲まないのですが、赤霧島を3本ほど備蓄しています。
子供たちが飲む予定です~!!
by 川鮎くん (2017-09-23 22:13) 

タンタン

私が芋焼酎に行き着いたのは正におっしゃる通りの理由からです。数ある焼酎の中でも香りと甘みが強く出るので、味気無さをそれほど感じず呑んだ気にさせてくれるし、ある程度味が濃い食べ物にも負ける事があまり無いので、食中酒として呑むのにピッタリなんですよ。
それにしても初めての芋焼酎やのに、臭いと感じなかったのは意外でした^^
by タンタン (2017-09-24 18:14) 

skekhtehuacso

川鮎くん様、赤霧島もいつかいただいてみたいと思っております。
このブログは、酒(焼酎)の味を正確に理解するための修行ですから。
おそらく、世の中でもっとも楽な修行だと思います。
by skekhtehuacso (2017-09-24 19:59) 

skekhtehuacso

タンタンさん、子どものころから芋焼酎はクサイと刷り込まれておりましたのでこれまで敬遠しておりましたが、実際にいただいてみるとそのようなニオイがなくて、美味しくいただくことができました。
でも、もしかしたら、宮崎や鹿児島には今でも昔ながらのにおいが強い芋焼酎が残っているかもしれませんね。
それを探すのも、また面白いかもしれません。
by skekhtehuacso (2017-09-24 20:02) 

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