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《焼酎》11.わかむぎ 20度 200ml [9945.宮崎県の焼酎]

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高千穂酒造株式会社
宮崎県西臼杵郡高千穂町押方925

本格焼酎
アルコール分 20度
容量 200ml
原材料 麦・麦こうじ
(以上、ラベルより転記)





今日は、宮崎県は高千穂で造られた麦焼酎をいただきます。
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蔵がある場所は、広い宮崎県の中でも北西部の熊本県に近いところのようですね。




いただく前に、宮崎県の焼酎についてわかったことを2点、披露させていただきます。


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(1)“宮崎県の焼酎”と言えば?

九州では、焼酎が広く飲まれているようですね。
それに、各地域ごとにいろいろな原材料を用いて焼酎が造られているみたいです。

鹿児島県といえば、さつまいもを使った芋焼酎。
熊本県は球磨川流域で造られる、米を100%用いた球磨焼酎。
大分県では、歴史こそ浅いものの、麦100%の大分麦焼酎が造られています。
また離島に目を移せば、米麹に麦を掛けて造られる壱岐焼酎や、奄美の黒糖焼酎なんてのもありますね。
そして沖縄では、タイ米を用いた全麹造りの泡盛が広く飲まれているようです。
(なお、“泡盛はもともとは上流階級向けで、かつて庶民には自家醸造の芋焼酎が広く飲まれていた”旨の記述に出会ったのですが、このネタを掘り下げる楽しみは泡盛をいただく機会が訪れた日までとっておきます。)


では、宮崎県では、いったいどんな焼酎が飲まれているのでしょうか?
先日いただいた白霧島黒霧島は芋焼酎でしたが、それを造ったのは宮崎県都城市に蔵を置く霧島酒造さんでした。
また有名なところでは、“そば焼酎雲海”や“麦焼酎ひむかのくろうま”なんてのも宮崎県産ですね。

宮崎県を代表するような焼酎は、果たして存在するのでしょうか?
このことについて、文献には以下のような記述がありました。

 では、「宮崎の焼酎は何焼酎か?」と聞かれても、薩摩焼酎のように「イモ」とか、球磨焼酎のように「コメ」、あるいは壱岐焼酎のように「ムギ」と断ずることはできない。最近で“黒ブーム”に火を付けた霧島酒造(都城市)の「黒霧島」に代表されるイモが非常に強いが、1970年代の第1次焼酎ブームにおける宮崎県産本格焼酎の興隆は、雲海酒造(宮崎市)の「雲海」(ソバ)や神楽酒造(高千穂町)の「くろうま」(ムギ)などのヒットによってもたらされた。このほか、トウモロコシやクリ、米粉を用いたものもあり、加えて、本格焼酎(乙類焼酎)とは蒸留方法が異なる甲類焼酎の生産も見られた。このバラエティーの豊かさに、“焼酎連邦”とでも呼ぶべき、宮崎の焼酎の最大の特徴がある。宮崎県酒造組合もこれを生かし、「宮崎の本格焼酎」を商標登録、そのブランド化に取り組んでいる。」(※1)

 宮崎県には2007年8月現在、焼酎メーカーが39社ある。大分県に近い県北部では主に麦、米、ソバのほか、トウモロコシ、クリなどの焼酎が、熊本県に近い中西部では主に米焼酎が飲まれている。県南部は昔、薩摩藩の支配下にあったことから、ずっと芋焼酎が飲まれている。もちろん県北や県央、中西部など県南以外でも芋焼酎を造る蔵は多数あり、愛飲されているので、明確に地域を区別することはできないが、多種多様な焼酎がモザイクの装飾画のように混在している宮崎は、よく「本格焼酎のデパート」とか「バラエティに富む焼酎王国」などといった言葉で表現される。」(※2)

宮崎県は鹿児島県とならぶ焼酎王国であり、他県に類のない種類の原料を用いた焼酎が造られています。宮崎は「バラエティーに富む焼酎王国」です。それが宮崎焼酎の一大特徴であり、人々に愛飲されている理由でもあります。」(※3)

宮崎県では藩政時代、延岡、高鍋、佐土原、飫肥、都城(島津)と小藩が分立していた歴史的事情もあり、焼酎文化もそれぞれの地域の伝統や風土を反映して、その原料や飲まれ方も特色を有しています。
 鹿児島県に近い南部の日南や都城地区では、芋焼酎が飲まれますが、これらの地区は県下最大の甘藷の生産地でもあり、焼酎の原料がその地域の農業生産物と深く関わっているよい例です。この二地区は、とくに焼酎が好んで飲まれているところでもあります。」(※4)
 宮崎平野を中心とする中部地方では、芋焼酎も飲まれますが、最近では麦焼酎も多くなっています。これに米焼酎が加わります。小林、えびのでは球磨地方の影響を受けているので米焼酎が好まれています。小林地区で最近まで、白糠焼酎(米の粉で造った焼酎)が多く造られていたのはそのためです。
 北部の西臼杵、東臼杵の二郡では、麦や米製のほか、ソバ、トウモロコシ、ヒエ、アワなどの雑穀焼酎が造られています。ただ、延岡地区では清酒が息づいています。旧藩時代(内藤藩)から関東出身の武士が多く、そのため清酒を好む伝統が続いているのです。また県内随一の工業地帯であり、移入者が多く、地酒としての焼酎愛好者が少なかったのですが、最近は多くなってきています。」(※5)

清酒の製造には時の権力が介入しがちですが、焼酎もきっとそうだったのかもしれませんね。
それ故に、近世において権力が分散していた宮崎県では、それぞれの権力が地域ごとに独自の材料を用いて焼酎を製造させていたのでしょうか。

あるいは察するに、宮崎県は南北に長く広がっており、かつ西には雪降る九州山地を背負いつつも、東は黒潮が流れる太平洋に面していることから、域内の気候風土はきっと多種多様なのでしょう。
それ故に、栽培できる作物にも地域ごとにちがいがあって、それが焼酎の原料のちがいに影響しているのかもしれませんね。

いずれにせよ、宮崎県ではさまざまな原材料を用いた多種多様な焼酎が造られていることがわかりました。




(2)なんで20度なの?

今日いただくこの麦焼酎は、アルコール度数が20度でした。
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これまでにいただいた焼酎はみな25度でしたが、なぜかこれは20度でした。
大手の蔵元では同一銘柄で20度のものと25度のものとの双方を商品化しているところもあるみたいですが、この麦焼酎が販売されていた棚では25度のものを見かけませんでした。


どうやら宮崎県では、焼酎といえばアルコール度数20度のものが一般的なのだとか。
このことについて、文献には以下の記述がありました。
 宮崎の焼酎のもう1つの特徴は、アルコール度数だ。鹿児島など他県では25度が一般的だが、宮崎は珍しい“20度圏”。ロックでも飲みやすいことから「アルコール離れ」が叫ばれる昨今、新たな市場の開拓に優位性があるとする意見も少なくない。」(※6)

渡邉さん「宮崎の人たちが飲むのは昔からほどんどが20度の世界です。25度の鹿児島の芋焼酎と比べると、鹿児島の芋焼酎は雄々しいといった感じだと思うんですが、宮崎の芋焼酎は対照的にやさしい酒質とよく言われます。20度なのでそのまま生やロックで飲む方も多いですし、お湯割りで5対5の半々くらいに割ると10度くらいになって、口当たりも非常に柔らかくなる。5度の違いですが、その分、宮崎の焼酎は前割りがしてあるということでもあり、飲みやすいと思います。全国的に宮崎が鹿児島と肩を並べる消費量を誇っているのは、そんな所にも理由があるのかもしれません」」(※7)

たしかに20度の焼酎のほうが、25度のものよりもアルコールの刺激や風味が抑えられていて飲みやすいかもしれませんね。
でも、ただ飲みやすいという理由だけで、はたして他県産のものと異なった度数を採用して販売し続けられるものでしょうか?
だって、25度のほうが少ない量で酔えますから、買い手にとってはそのほうが経済的であるとも言えるはずです。


ところが、20度の焼酎が飲まれている理由は単に飲みやすさだけではなくて、戦後における“闇焼酎”対策の名残りであって、かつそれが宮崎県だけに残り続けているためでもあるらしいのです。
このことを示す記述が、ここまでに引用した文献中にありました。

 宮崎といえばアルコール度数20度の焼酎がいまも飲み続けられている。これも宮崎のユニークな点だ。メーカーも県内に出荷する焼酎は20度、県外用は25度と分けて造っている所が多いと聞く。でも、なぜ宮崎だけ20度なんだろう。資料によるとその理由にはこんな歴史があった。
 「闇焼酎が全盛期を迎えた昭和20年代後半まで、密造酒対策に追われる税務署と地域住民との小競り合いが続いた。国税庁はとうとう53(同28)年、租税特措法を改正。それまで認められていなかったアルコール度数20度以下の焼酎に対して一段と低い税率を設定し、20度焼酎の製造を許可した。蔵元に低価格の焼酎造りを許可し、密造酒に対抗させるのが目的だった。20度焼酎は、熊本や鹿児島などにも普及。しかし、いつの間にか他県では姿を消し、宮崎にだけ20度が残った」(宮崎日日新聞04年10月18日付朝刊「みやざき焼酎進化論第4部」より抜粋)」(※8)

太平洋戦争前後の数年間は食糧難の時代であり、焼酎党にとっても最もつらい時代でした。酒類不足から、いきおいヤミ焼酎、悪質のカストリ(粕取り)焼酎が出まわるようになりました。」(※9)
 税務署や警察の取り締まりにもかかわらず、密造酒が横行しました。中でも宮崎市の一地域では大々的に密造酒が造られその焼酎は北九州にまでおよびました。宮崎では昭和二十八年から三十年頃が密造酒製造の最盛期でした。ヤミ焼酎とは密造酒のことですが、これは密造酒製造の脱税と無免許販売で厳しく取り締まられたのです。密造酒取り締まりは、庶民に酒税のついた酒を飲ませるための手段であり、一方、これを造る人たちにとっては死活問題であり、密造は生きるための最後の手段でした。ヤミ焼酎とはいえある意味では庶民のアルコール飢餓を救ったのです。当時の密造の論理は敗戦という大きな犠牲の落とし子に帰することができるでしょう。
 宮崎ではこの頃から酒税優遇措置の点からアルコール分二十度の焼酎が多く出荷されるようになります。それは密造酒と大いに関係があったのです。宮崎市の一角で造られた密造酒は九州一円に販売されていました。そのため正規の酒造場の二十五度焼酎の販売量が大幅に低下し、密造酒のみがよく売れました。それは酒税のついた焼酎が高価で、しかも容易に手に入り難いために皆密造酒を求めたからです。困りはてた国税庁は、昭和二十八年頃に酒類特別措置法(本法には二十五度焼酎の規定のみ)をつくり、密造酒に対抗するため特別に税金の安い二十度焼酎の販売を許したのです。これが酒税優遇処置による二十度焼酎誕生の一幕です。したがって、今でも鹿児島、熊本にも一般に二十度焼酎は販売されておらず、宮崎県のみが優先的にこの焼酎を販売しているのです。」(※10)


20度焼酎誕生のいきさつはわかりましたが、ではどうして宮崎県だけ、今日においても20度の焼酎が残ったのでしょうか?
終戦直後と比較して今日においては密造酒対策の必要は低下しているはずですが、それでもなぜ、今でも宮崎県では20度焼酎が主流なのでしょうか?

すみません。
このことについて解説している文献の記述に出会うことはかないませんでした。

ここからは、私の根拠なき予想です。
地域ごとに独自の材料を用いて焼酎が製造されていた宮崎県では、醸造に関して統一的な施策を講じる際にも、きっと地域ごとの事情を考慮する必要があったことでしょう。
それ故に、お上やら組合やらからの県全体を束ねる統制が効きづらく、よって闇焼酎対策の必要がなくなった後にも25度への改醸指導の効果が行き届かなかったのではないでしょうか?
あるいは逆に、県内の実情を考慮した組合が、全蔵元の総意として県を挙げて25度への改醸を拒否したのかもしれませんね。

その影響が今日まで引きずられて、飲みやすさといった後づけの理由が付加されつつ存続しているのではないでしょうか?




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私の気が済んだところで、そろそろいただいてみたいと思います。

蔵元さんのWebsiteでは、この麦焼酎について「大麦の精白歩合を60%以下にし、雑味のないすっきりした味わいを実現。常圧・減圧蒸留2種類の原酒をバランスよくブレンドし、高い香りとキレをもつ本格むぎ焼酎に仕上げました。」と紹介されておりました。

常圧・減圧のブレンド焼酎をいただくのはこれがはじめてですが、果たして味わいに双方の良さを引き出すことができているのでしょうか?(常圧蒸留・減圧蒸留については、かつてこちらでまとめております。
ラベルには、それらしいことが一応書いてありましたよ。
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このことをたしかめるべく、いただいてみたいと思います・




まずは、生(き)、すなわちストレートで。
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まず最初に、ちょっとピリッと感じますね。
それとともに、ふんわりとした香ばしさを穏やかに感じ、それが鼻へ抜けていきます。
軽い苦味もかすかにあるみたいです。
アルコール香はありますが、それほど気にはならない程度です。




次に、お湯割りで。
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酸味がちょっと出てきましたね。
甘みも弱めながらに感じます。
香ばしさは後退したものの、穀物っぽい風味が前に出てきたようです。
苦味は後退していますね。




最後は、ロックで。
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香ばしさは生(き)と同じ程度に感じます。
苦味は引いているものの、甘みも後退しています。
ややドライで、キリッとした風味を感じますね。



私としては、やはり穀物の風味を感じてまろやかだったお湯割りが好みでした。
常圧蒸留にありがちな焦げ臭さはなかったことから、常圧蒸留で製造された焼酎のブレンド割合はおそらく少ないことでしょう。
でもお湯割りで感じた穀物の風味や、生(き)やロックで感じた香ばしさは、もしかしたらブレンドの成果なのかもしれませんね。
それでも雑味がなくてきれいな味わいで、おいしくいただくことができました。

ラベルに書いてあったとおり、たしかに“麦本来の深い香りを残しながらも、飲みやすさを追求した本格焼酎”でした。

(※1)『焼酎連邦・宮崎―バラエティー豊かな“20度圏”』p.157(財界九州 52巻10号 p.157-160 2011.10 財界九州社)
(※2)西松宏・繁昌良司『芋焼酎を極める』p.008(2007.10 ソフトバンク・クリエイティブ株式会社)
(※3)小川喜八郎・永山久春『本格焼酎・南九州の風土を味わう』p.181(2002.6 鉱脈社)
(※4)(※3)p.182
(※5)(※3)p.183
(※6)(※1)p.157-158
(※7)(※2)p.010-012
(※8)(※2)p.010
(※9)(※3)p.219
(※10)(※3)p.220




2019/08/18
また飲んでみました。
あ~酒臭かった!(32)  酒くさコメント(6) 
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あ~酒臭かった! 32

酒くさコメント 6

johncomeback

拙ブログへのコメントありがとうございます。
サプリなんぞに頼らず、酒を控えれば良いんでしょうが・・・
そんな事できませんよね(*´∇`*)
by johncomeback (2017-10-11 22:37) 

skekhtehuacso

johncomeback様、あー耳がいたい耳がいたい!
酒を控えるなんて、あたしゃ到底できませんわ。
というか、酒は憂いの玉箒、憂いの多き身なればやめられまへんわ。
by skekhtehuacso (2017-10-11 22:56) 

hatumi30331

酒量は増えるばかり・・・トホホ・・・・
ワインやで〜♪へへ:
by hatumi30331 (2017-10-12 00:23) 

タンタン

宮崎県民の特徴として温・冷問わず、割らずに飲む方が多いんで20度焼酎がスタンダードで25度は主に県外販売向け、というのを何かで見た事があります。あの霧島酒造さんにも白、黒霧島共に20度がありますしね。
私のようにロックが主の呑み方なら、20度の方が体に優しいかもしれませんね^^;
by タンタン (2017-10-12 05:59) 

skekhtehuacso

hatumi30331さん、飲みなはれ飲みなはれ、と言いたいところではございますが、一病息災のhatumi30331さんにおかれましては、どうかご自重ご自愛いただきたく存じます。
by skekhtehuacso (2017-10-12 21:08) 

skekhtehuacso

タンタンさん、宮崎の20度焼酎には飲み方も影響しているのですか。
そりゃ生(き)やロックだったら、20度のほうが飲みやすいですね。
そういうことは、一人で酒集めをしていたり文献の記述を読んだりしてばかりの私には到底わからないことですわ。

それに、たしかに県内向けは20度で、県外には25度をという記述は見たことがありました。
霧島シリーズの20度は近所では見たことがありませんでしたが、今回大分で酒集めをしてみたところ、少なからず見かけましたよ。
by skekhtehuacso (2017-10-12 21:13) 

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