【お酒】1520.土佐鶴 良等 360ml [39.高知県の酒]
土佐鶴酒造株式会社
高知県安田町安田1586
品目:清酒
内容量:360ml
原材料名:米・米麹・醸造アルコール
アルコール分ん:15度
(以上、瓶の印刷事項より転記)
(米の産地表示なし)
言わずと知れた高知県の銘酒“土佐鶴”。
このブログの草創期に、土佐鶴酔って候純米カップ(2回目はこちら)と、土佐鶴生貯蔵酒〈角〉上等300ml、そして土佐鶴上等ツルカップ赤とをいただいております。
こちらひさびさの土佐鶴ですが、“良等”の小印が付された普通酒でした。
上等があったことから推察するに、これは佳撰クラス(かつての級別制度下における二級酒)のお酒ではないでしょうか。
300ml瓶ってのはよく見ますが、このお酒は360ml(二合)なんだってさ。
二合もあることから、飲み方を変えて試してみたいと思います。
まずは冷や(常温)でいただきます。
お酒の色は、透明でした。
うまみは淡めですが、淡めなりにしっかりしています。
酒臭さはなくて、やわらかいうまみがふんわりと広がります。
苦みや雑味はまったくありません。
キレはよいですが、透明感は感じません。
酸味はひかえめです。
すっぱさはかすかに感じる程度で、鋭さは感じません。
スースー感もわずかです。
刺激やピリピリ感はありません。
甘みはややひかえめです。
ゼロではないが弱めで、かなりさらっとしています。
口当たりのよい、淡麗旨やや辛口のおいしいお酒でした。
きれいで口当たりがよく、キレもよいですね。
それでいてやわらかいうまみがふんわりと広がるので、けっして薄っぺらくはありませんよ。
それに透明感がないということは、アル添量もそれほど多めではないと察します。
またたしかに辛口ではありましたが、わずかな甘味があってコクを添えておりました。
これ、かなりうまいんじゃないの。
次に、燗にしてみましたよ。
おお!
これは引き締まってきたぜよ!
甘みが引いて、酸味は弱めなままに鋭さが少しだけ出てきました。
ややドライではあるものの、うまみがきちんと働いていることから、薄っぺらさは出ておりませんよ。
アルコール香とピリとがかすかに出るものの、それもいい感じに引き締めてくれているようでした。
燗だと、スッキリとして引き締まった淡麗旨辛口のおいしいお酒になりました。
【まとめ】
双方とも口当たりがよくてさっぱりしておりましたが、冷や(常温)だとわずかな甘味がコクを添えており、燗だとキリッと引き締まった味わいでした。
双方ともおいしくいただけると思いますよ。
これは私の感想ですが、むしろ野菜のおひたしやお漬物には冷やが、そして肉や魚には燗が合うのではないでしょうか。
それにしても、二級クラスのお酒でもこんなにおいしいなんて、あたしゃ高知県民の皆さんがうらやましくてしかたがないですわ。
いつか高知県でも酒集めとしてみたいと思う、吉宗であった(←暴れん坊将軍のエンディングより)。
【お酒】958.純米吟醸酒 四万十川 180ml [39.高知県の酒]
菊水酒造株式会社
高知県安芸市本町四丁目6-25
アルコール分 14.0度以上15.0度未満
原材料名 米(国産)・米こうじ(国産米)
精米歩合 60%
内容量180ml
(以上、ラベルより転記)
今日は、小田急線渋沢駅(神奈川県秦野市)に併設されたスーパーで入手した、高知県産の純米吟醸酒をいただきます。
純米吟醸酒ですので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。
お酒の色は、ほぼ無色でした。
吟醸香はちょっとだけありますね。
フルーティーな風味を感じます。
うまみは淡めです。
お米のうまみが口の中でパッと広がって、すぐにスッと引きます。
吟醸酒にありがちな苦みも少しあるみたいです。
酸味はややひかえめです。
すっぱさをわずかに感じる程度です。
刺激やピリピリ感はありません。
甘みはひかえめです。
ほとんど感じないくらいです。
軽い口当たりの、淡麗辛口のお酒でした。
純米で、しかも吟醸造りのお酒ですが、軽いので食事と合わせやすいと思います。
一方で、純米らしさはそれほど感じませんでした。
【お酒】908.司牡丹 美稲(よしね) 純米酒 生貯蔵酒 300ml [39.高知県の酒]
司牡丹酒造株式会社
高知県高岡郡佐川町甲1299番地
アルコール分15度以上16度未満
原材料名:米(国産)、米こうじ(国産米)
精米歩合:70%
内容量 180ml
(以上、ラベルより転記)
申し訳ございません。
封を切ってグラスに注いでから、写真を撮っていなかったことに気づきました。
司牡丹酒造さんのお酒は、かつて金凰司牡丹(おそらく本醸造)のほろよいカップ(2回目はこちら)と、日本名門酒会が企画した純米超辛口の船中八策180mlとをいただいております。
今日いただくこのお酒は、純米酒の生貯蔵酒です。
生貯蔵酒ですので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。
お酒の色は、かすかに着いているのがわかる程度でした。
一口含んでみて、酸味がはっきりしていることがわかりました。
かなりすっぱくて、しかも鋭さを感じます。
でも、刺激やピリピリ感はありません。
フレッシュな風味は少しある見たいです。
それとともに、上等な接着剤のような風味をちょっと感じます。
(上等な接着剤のような風味ってどんなだよ!)
うまみは濃くはないですが、しっかりしています。
やわらかいうまみとともに、香ばしさが少しありますね。
キレはよく、透明感を感じます。
苦みや雑味はありません。
甘みはひかえめで、ほとんど感じません。
酸味が効いた、すっぱ辛口のお酒でした。
この酸味が、魚の臭みや肉の油っぽさなんかをサッと流してくれそうです。
でも、繊細な味わいの食べ物とは合わないような気がします。
【お酒】604.土佐路 上撰 カップ [39.高知県の酒]
高知酒造株式会社
高知県吾川郡いの町勝賀瀬780-2
原材料名 米、米麹、醸造アルコール
アルコール分15.0度以上16.0度未満
180ml詰
高知酒造さんのWebsiteによれば、この蔵元さんの成立について「昭和18年、戦局の様相もだんだん厳しくなったころ、 各産業に対する企業整備法により清酒製造業はその半数が転廃され、高知市・長岡郡・吾川郡・土佐郡の1市3郡の酒造家28社が統合。 昭和19年、高知酒造株式会社設立となりました。」と紹介されておりました。
要するに、戦時統合で成立した蔵元さんということですね。
ところで、このお酒のカップには、カットグラスのようなデザインがあしらわれています。
でも、よく見ると、切子のように後からカットしたものではなさそうです。
きっとこういう模様をつけるための型があるのですね。
しかし、私はこのようなデザインのカップを見たのは初めてでした。
今日はこんなおしゃれなグラスのようなカップ酒をいただきます。
普通酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。
色は少し着いている程度でしょうか。
うまみはけっこうしっかりしています。
醸し出された酒臭い(←ほめ言葉です)うまみがします。
それに、深みを少し感じます。
でも、それらが口の中で広がったあと、すぐにスッと消えていきます。
苦みや雑味は感じませんでした。
酸味はちょっと感じるくらいです。
さわやかさを少し感じる程度ですね。
刺激やピリピリ感はありません。
甘みはそれほど強くはないですが、その存在ははっきりしています。
しっかりしているもののとてもキレのよいうまみと、さわやかな酸味とに、わずかな甘みがコクを添える、旨やや辛口のおいしいお酒でした。
酒臭さ(←あくまでもほめ言葉です)を感じるのに、キレイな味わいに仕上がっています。
これはなかなかおいしいと思います。
【お酒】482.純米 超辛口 船中八策 180ml [39.高知県の酒]
司牡丹酒造株式会社
高知県高岡郡佐川町甲1299
アルコール分:15度以上16度未満
原材料名:米(国産)・米こうじ(国産米)
精米歩合:60%
内容量:180ml
(以上、ラベルより転記)
司牡丹酒造さんのお酒は、かつて金凰司牡丹(おそらく本醸造)のほろよいカップ(2回目はこちら)をいただいております。
今日いただくこのお酒は、“超辛口”と銘打たれた純米酒です。
このお酒の名前に付けられている“船中八策”とは、「1867年(慶応3)坂本竜馬が起草した8ヵ条の国家構想。幕政返上、議会開設など公議政体論に基づく。藩主山内容堂に建白のため上京する船中で書かれたので、この名がある。」とのこと(※1)。
これは完全に私の予想ですが、文献によればこのお酒は「さらりとした後口のキレは抜群」であるそうですので(※2)、この点を船中八策の内容の鋭さにたとえているのではないでしょうか?
ところで、このお酒のラベルには、“日本名門酒会”の文字が記載されています。
どうやらこのお酒は、この日本名門酒会の「オリジナル商品」なのだとか(※2)。
日本名門酒会とは、昭和50年に株式会社岡永という問屋さんが中心となって結成された、地方のお酒を流通させるための組織です。
この点、日本名門酒会のWebsiteでは、「「良い酒を 佳い人に」をスローガンに、全国約120社の蔵元が丹精こめて造った良質の日本酒を、全国1,700店あまりの酒販店を通して流通させてきたボランタリー組織」と紹介されています。
日本名門酒会が組織された昭和50年当時は、「業界一般の状勢は、大手メーカーのマスプロ・マスコミ・マスセールスの時代」(※3)で、「アルコールや糖類を添加した甘ったるい味の酒」(※4)が主流だったようです。
その結果、「その頃、“日本酒離れ”という言葉が流行し、消費の面でも、また流通の面でも、顕著にこの傾向が意識されてきた。」とのこと(※3)。
そこで岡永さんは、「味の優れた本物の清酒、本物の清酒の情報、品揃えを根幹に据えた経営にチャレンジしようと決意した。そのような清酒メーカーは大手よりもむしろ地方メーカーの中にあると見て、地方銘酒発掘の行脚に出るのである。それがやがて「日本名門酒会」の組織化として結実」したそうです(※4)。
また、上記の文献には「岡永では、六〇年代半ばから、東北地方の酒どころ、秋田県の新政酒造や、酒豪ぞろいで知られる、四国・高知県の司牡丹酒造と取引を始めていた。いずれも地方のトップブランドで、品質も高く、知る人ぞ知るいい酒だが、東京での知名度はむしろ低い。」との記述がありました(※5)。
これも完全に私の予想ですが、日本名門酒会を主導する岡永さんと司牡丹酒造さんとの古くからの深い関係があったからこそ、今日いただくこのお酒が日本名門酒会のオリジナル商品として製造されたのかもしれませんね。
そんなことばかり考えていても、このお酒の味がわかるわけではありません。
おいしいお酒であることを願いつつ、純米酒ですので今日もぬる燗でいただきます。
その前に、このお酒ですが、色はほとんど着いておりません。
一口含んですぐに、酸味がはっきりしていることがわかりました。
さわやかで、すっぱさを感じる酸味です。
でも、刺激やピリピリ感はありません。
うまみはかなりスッキリしています。
しかし、淡くはないですね。
酒臭さはなくて、やわらかいうまみです。
それが口の中に広がった後で、スッと切れていきます。
甘みはひかえめです。
しかし、まったくないわけではなくて、わずかにその存在を感じます。
スッキリしたキレのよい味わいを、酸味が引き締める、爽快辛口のおいしいお酒でした。
甘みはひかえめで、その名のとおりたしかに“超辛口”でしたが、決して辛くはありません。
それに、コクはちゃんとあって、ドライな感じはしませんでした。
食事にもあわせやすいと思います。
(※1)広辞苑 第五版
(※2)『吉田類の土佐酒note』p.42(2012.3 高知新聞総合印刷)
(※3)飯田博『日本名門酒会』p.554(日本醸造協会誌75巻7号 1980)
(※4)今井亮平『新しい酒文化に挑戦するオンリーワンの蔵』p.103(2000.7 ブレインキャスト)
(※5)(※4)p.104
【お酒】360.酔鯨 特別純米酒 180ml [39.高知県の酒]
酔鯨酒造株式会社
高知市長浜566-1
アルコール分 15度
原材料名 米・米こうじ
原料米はすべて国産
180ml詰
(以上、ラベルより転記)
酔鯨酒造さんのお酒は、かつて酔鯨の普通酒上撰をいただいております。
今日いただくこのお酒は、特別純米酒です。
このお酒は、精米歩合55%であることをもって、特別純米酒の基準をクリアしているのでしょう。
今日もぬる燗でいただきます。
一口含むと、酸味がとてもしっかりしていることがわかります。
けっこうピリッときます。
それとともに、すっぱさが刺激の裏側からじわっと迫ってきます。
うまみはやや濃いめで、しっかりしています。
醸し出された酒臭い(←ほめ言葉です)うまみだと思うのですが、酒臭さはそんなに強くはありません。
でも、雑味がなくてきれいな味わいです。
甘みはひかえめです。
そのせいか、ちょっとコクが少ない感じがします。
しっかりした酸味と、やや濃いめのきれいなうまみとがよく合っている、やや濃醇で辛口のおいしいお酒でした。
甘くないのみならず、ピリッと来る辛口の味わいでした。
この辛口の味わいが、きっとカツオのたたきなんかとよく合うんでしょうね。
と、竹輪をつまみに食べながら思いましたとさ。
【お酒】349.350.南 特別純米カップ&純米吟醸カップ 飲み比べ【追記あり】 [39.高知県の酒]
有限会社南酒造場
高知県安芸郡安田町安田1875
今日は、室戸岬の付け根の西側、高知県安田町にある南酒造場さんのお酒から、特別純米酒と純米吟醸酒とを飲み比べて見たいと思います。
高知県の安田町といえば、土佐鶴さんの酒蔵がある場所です。
土佐鶴さんは、日本全国にその名が知られている大きな蔵元さんですね。
一方、南酒造場さんは「地元高知県を中心に販売する500石規模の蔵」で、「すべて精米歩合60%以下の特定名称酒」なのだそうです(※1)。
500石ということは、一升瓶に換算すると5万本くらいです。
毎日200本ずつ売れたら、一年経たないうちになくなってしまう量ですね。
また、ある雑誌では、南酒造場さんのお酒のことを「高知の地酒のなかではもっとも取引困難とも言われている」と評しています(※2)。
そんな取引困難なお酒なのに、どうして私が今日いただくこれらのカップ酒を入手することができたのでしょうか。
銀座一丁目に、「まるごと高知」という高知県のアンテナショップがあります。
このお店の地下スペースでは高知県のお酒を販売しているのですが、ここがまた、カップ酒やお燗瓶、それに3デシ瓶のとり揃えがとても充実しているのです。
今日いただく南のカップ酒二種も、このお店で購入したものです。
そんなまるごと高知で入手したこのお酒を、さっそくいただいてみたいと思います。
南 特別純米
原材料名/米(国産)・米こうじ(国産米)
精米歩合/60%
アルコール分15.0度以上16.0度未満
180ml詰
(以上、ラベルより転記)
特別純米酒の意味については、かつてこちらでふれておりますのでご参照ください。
特別がついても純米酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。
うまみが濃くて、かなりしっかりしています。
酒臭さも少しあるものの、お米のうまみがガツンと迫ってくる感じです。
それでいて、苦みや雑味を感じません。
酸味は感じますが、それほど強くはありません。
すっぱさははっきりしているものの、刺激やピリピリ感はまったくありません。
甘みはひかえめですが、その存在はわかります。
お酒にコクを添えています。
濃いめのうまみだけがガツンと迫ってくる、濃醇でやや辛口のおいしいお酒でした。
これはひや(常温)でもいけるはずです。
こんなにうまみが濃いのに、刺激や雑味をほとんど感じません。
これは丁寧に造ってある証拠でしょう。
南 純米吟醸
原材料名/米(国産)・米こうじ(国産米)
精米歩合/50%
アルコール分16.0度以上17.0度未満
180ml詰
(以上、ラベルより転記)
ある文献では、このお酒のことを「無濾過生原酒で、米の旨みを十二分にひきだした酒」と紹介していました(※3)。
生酒のような「製成後一切加熱処理をしないで製造場から移出する清酒には、保存若しくは飲用上の注意事項を表示する。」と定められています(※4)。
それ故、生酒
しかし、このお酒にはそれらの表示がありませんでしたので、おそらく生酒ではないのだと思います。
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【2015/09/30追記】
生詰について「製成後一切加熱処理をしないで製造場から移出する清酒」に該当すると書きましたが、これは誤りでした。(これに該当するのは生酒のみでした。)
生詰の場合は、「製成後一切加熱処理をしないで製造場から移出する清酒」に該当せず、よって「要冷蔵」などの「保存若しくは飲用上の注意事項」を表示する必要はないと考えます。
清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)5(6)の生貯蔵酒の定義には、「生貯蔵酒の用語は、製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、製造場から移出する際に加熱処理した清酒である場合に表示できるものとする。」とあります。
これから判断するに、製成後とは完成後(私は勝手にそう思っていました。)ではなくて、上槽後(お酒をしぼった後)という意味であろうと考えられます。
ということは、生詰は製成後に一回火入れをしていますので、この「製成後一切加熱処理をしないで製造場から移出する清酒」には該当しないことになります。
私の認識が誤っていたことをお詫びして、ここで訂正させていただきます。
申し訳ございませんでした。
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その一方で、このお酒のアルコール度数は16.0度以上17.0度未満と若干高めですので、原酒の可能性はあると思います。
屁理屈をこねるのはこのくらいにして、純米吟醸酒ですので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。
これもうまみが濃いめです。
特別純米酒から酒臭さを抜いて、お米のうまみを前面に出した感じです。
吟醸酒らしい苦みは少し感じますが、それ以外に雑味はまったく感じません。
酸味はほとんど感じません。
わずかにすっぱさを感じますが、刺激やピリピリ感はありません。
きっとこれが吟味して造った成果なのでしょう。
甘みはかなりひかえめです。
お米のうまみを直接に感じ取ることができる、やや濃醇で辛口のおいしいお酒でした。
特別純米酒ほどではありませんが、うまみが濃くてきれいなお酒でした。
このうまみから推察するに、原酒と紹介されていることにも頷けます。
(※1)山同敦子『愛と情熱の日本酒―魂をゆさぶる造り酒屋たち』p.320(2011.3 ちくま文庫)
(※2)pen 2013年12月1日号 p.63(阪急コミュニケーションズ)
(※3)『吉田類の土佐酒note』p.55(2012.3 高知新聞総合印刷)
(※4)清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)3(3)
(※5)酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達第86条の6 酒類の表示の基準2(3)ハ
【お酒】339.酔鯨 竹寿 上撰 お燗瓶 [39.高知県の酒]
酔鯨酒造株式会社
高知市長浜566-1
アルコール分 15度
原材料名 米・米こうじ・醸造アルコール
原料米はすべて国産
180ml詰
(以上、瓶の印刷事項より転記)
高知県には多くの蔵元さんがありますが、高知市内に蔵を構えているのは、今ではこの酔鯨酒造さんだけなのだそうです。
消費地に蔵を構えることは、流通の面では便利かもしれません。
しかし一方で、ご苦労もあるようです。
ある文献では、そのご苦労を以下のように紹介しています。
「午後3時頃、貯水タンクを背負ったトラックが蔵に入っていく。」
「タンクの中味は2トンの仕込み水。この水は旧土佐山村から運ばれてくる。」
「もともと蔵内にあった湧水が、都市化の影響で枯渇し始めたは十数年前。それ以来、酒造りにふさわしい水を捜し求め続けた。」(※1)
よい水を探し出すことは、たしかに難しいことだと思います。
それに、使用する水を変えれば、造るお酒の味にも変化が生じてしまうでしょう。
水を変えつつ、なおお酒の味を守り続けることは、もっと大変なことだったのではないでしょうか。
また、同じ文献では、酔鯨酒造さんの杜氏さんの言葉を用いて、お酒の味を紹介しています。
「「香りよりも飲んだときの味や切れの良さを重視したい」」
「目指すのは料理の味を引き立て、料理と酒が両方美味しく楽しめる食中酒。特に最近では濃い味や油物の料理が多いため、それに負けない辛味や酸味が立つ酒を造る。それでいて後を引かない切れの良さ、これが酔鯨の味だ。」(※2)
料理を引き立てる食中酒、大賛成です。
今日いただくこのお酒はもっとも安価な普通酒ですが、果たして酔鯨酒造さんのお酒に対する考え方はこの普通酒からも実感することができるでしょうか。
普通酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。
やっぱり酸味がしっかりしています。
すっぱさがあって、さわやかな酸味です。
ほんの少しだけピリッと感じますが、まったく気にはなりません。
うまみは濃くはないですが、これもしっかりしています。
酒臭さはひかえめで、わずかにお米の味を感じます。
それに雑味がなく、キレもよいようです。
甘みはひかえめですが、ほんのわずかに存在するのがわかります。
そのせいでしょうか、お酒の味にコクを感じます。
しっかりしてさわやかな酸味を、うまみが支えているような、やや辛口のおいしいお酒でした。
酸味が効いたこの味は、魚介類や濃い味の料理に合うと思います。
「料理の味を引き立て、料理と酒が両方美味しく楽しめる食中酒」という考え方は、この普通酒にも貫かれておりました。
(※1)『吉田類の土佐酒note』p.27(2012.3 高知新聞総合印刷)
(※2)同p.28
【お酒】283.金凰司牡丹 ほろよいカップ [39.高知県の酒]
司牡丹酒造株式会社
高知県高岡郡佐川町甲1299番地
(以上、カップの印刷事項より転記)
原材料名:米(国産)・米こうじ(国産米)・醸造アルコール
精米歩合70%
アルコール分15度以上16度未満
180ml詰
(以上、フタより転記)
司牡丹さんでは、“金凰-”という名称を、本醸造のお酒に付けているようです。
蔵元さんのWebsiteを拝見すると、この“金凰”に該当するお酒のうち、一升瓶詰のものと紙パックのものとについては、本醸造の表示がなされています。
しかし、このカップ酒には、どこを探しても本醸造の表示が見あたりません。
同じ“金凰-”なのに、カップ酒だけランクを落とした普通酒を詰めることは、普通はしないのではないでしょうか。
それに、一升瓶や紙パックの出荷量と比べてカップ酒のそれは少ないでしょうから、出荷量の少ないものにだけ別のお酒を詰めることは、かえってコストがかかってしまうと思います。
お酒に本醸造の表示をつけることは蔵元さんの任意です(※1)。
これは私の推測ですが、たとえ本醸造の表示がなくても、きっと他の“金凰-”と同じお酒が入っているものと考えてよいのかもしれません。
かつて、ある雑誌が、各界の著名人数人に対して「無人島に持って行きたい日本酒は、なんですか?」と問いかける企画を載せていました。
そのトップバッターとして、“酒場放浪記”でおなじみの高知県出身のあのお方が、この“金凰司牡丹”を選んでいらっしゃいました。
そうそう、このお方ですよ。
(左の酔っぱらいは私です。)
その記事によれば、
「“司牡丹で産湯を使った”といってもいいくらい、僕にとって日本酒と言えば、このお酒をおいて他にない。」
「仕事を終えて帰ってきた父が、背広を脱いで着流し姿で囲炉裏端にあぐらをかいて、司牡丹の一升瓶を傍らにクジラの脂身をつまむ……その膝の上が、僕にとっては何より安心できる空間だった。今でもこの酒を飲むたびに、父の膝のぬくもりを思い出すんだよね。」
「ここの蔵は本醸造も高級酒と同じ醸造設備を使って、丁寧な原料処理をしているんです。だからこんなに品のいい酒になるんだろうね。味はしっかり出しつつも、キレが良くてすっきりした、いかにも高知らしい酒に仕上がってる。」
とのこと(※2)。
はたして、このお方がおっしゃるとおり、本当に味はしっかり出しつつもキレが良くてすっきりした味わいなのでしょうか。
それを確かめるべく、今日もぬる燗でいただきます。
一口いただくと、うまみと酸味とを感じます。
うまみは濃厚ではないものの、しっかりしています。
酒臭さはひかえめで、むしろやわらかいうまみに感じます。
それに、苦味や雑味をまったく感じません。
酸味もしっかりしています。
かなりスッキリしていて、さわやかな酸味です。
刺激やピリピリ感はありません。
それに、すっぱさもほとんど感じません。
甘みはひかえめですが、わずかにあってコクを出しているようです。
雑味のないきれいなうまみと、スッキリした酸味とがちょうどよく合っている、やや辛口のおいしいお酒でした。
確かにこれは、味はしっかり出しつつもキレが良くてすっきりした味わいでした。
(※1)清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)1の本文
(※2)dancyu 2012年4月号 p.12(プレジデント社)
2020/04/23
また飲んでみました。
【お酒】124.土佐鶴 上等 ツルカップ赤 [39.高知県の酒]
土佐鶴酒造株式会社
高知県安田町1586
原材料名 米・米麹・醸造アルコール
全て国産米使用
アルコール分 15度以上16度未満
180ml
(以上、フタとラベルとより転記)
土佐鶴は、かつて純米酒カップ(2回目はこちら)と生貯蔵酒とをいただいております。
今日は普通酒です。
今日もぬる燗でいただきます。
アルコールの香りとともに、強い酸味が迫ってきます。
ちょっと刺激を感じる、ピリッとした酸味です。
この酸味が、お酒の味を辛口にしているようです。
うまみはかなりスッキリしています。
ですが、けっして味が薄いわけではありませんね。
スッキリしたうまみですが、けっこうしっかりしているので、物足りなさはありません。
甘みはひかえめですね。
ですが、これもまったく甘くないわけではないようです。
ひかえめな甘みが酸味とうまみとの裏に隠れて支えているようです。
ピリッとした酸味と、スッキリしたうまみとの、やや淡麗でかなり辛口のお酒でした。
かなり辛いですが、スッキリしたうまみをはっきりと感じ取れます。
“辛いけれど、うまい酒”だと思います。